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モノづくりの最も重要なところ

"0から1"を生み出す

新たな価値を生み出す段階をこのような言い方で表現することがあります。

ここに憧れを抱いている人は非常に多いですよね。

モノづくりに関わる人なら誰しもが一度は興味を持つところではないでしょうか。

かくいう私も両親の影響を受け、「自分が生み出したモノで多くの人が喜ぶ姿を見たい」と感じたのをキッカケに、「"0から1"を生み出すことを一生の仕事にしてみよう!」と思うようになりました。

ここで言う"0から1"を生み出すとは、見たこともない全く新しいモノを生み出すことだけではなく、何かと何かを組み合わせたり、新たな解釈や視点を持つことで新しい価値を生み出すことも当てはまります。

私がいるファッションの世界は特に、人間の身体に合わせた製品を作ることが基本となるため構造から根本的に違うような新しいモノを生み出すことは困難を極めます。

衣食住の1つを司るファッションの歴史は長く、先人たちが作っていない構造のモノは無いに等しいです。(Vtuberにしか使えないデザインのファッションを考えるとかは出来るし、楽しそう。)

だからといってファッションブランドが同じことを繰り返してきたのかと言えば当然そのようなことは無く、解釈の仕方や視点の変え方によってありふれたTシャツでさえも人を惹きつける新しい価値を生み出しています。

多くの人が喜ぶ新しい価値を生み出す行為。
これが"0から1"を生み出すことだと私は思っています。

“0から1”を生み出す。

この段階において最も重要なところって一体どこなのでしょうか?

立場や視点によって意見は様々かと思います。ここでは私がファッションの世界に入ってから今まで辿ってきた道のりで感じた、"0から1"を生み出す段階において最も重要だと感じているところを整理してみようかと思います。

私が10代の頃、新しい価値を生み出す上で最も重要なスキルは”頭の中のイメージをデザインスケッチにする感性とモノを作る技術”だと思っていました。

自分のブランドの製品を自分で作って販売するつもりでいたので、自分でデザインを描いて製品を具現化するスキルが無いと話にならない!と感じていたのでしょう。

しかし

モノづくりの経験を積んでいくうちに別の思いが芽生えてきました。

デザインスケッチや技術はとても重要です。
ですが、モノを”0から”生み出す段階において最も重要なところではありません。

むしろその部分のことしか考えていないのだとしたら多くの人が喜ぶモノを生み出す人になど到底なれない、と感じています。

その思いが芽生えたのは前職の土屋鞄製造所にいた頃のこと。

当時は生産業務のみならず、製品開発、生産管理、品質管理まで一貫して担当させて頂いていました。

自分がプロトタイプを作った物を自分で生産し、品質に責任を持ってお客様の元に届けるという非常にやりがいのある役割を担わせて頂き、大変貴重な経験をさせて頂きました。

今でも感謝しています。

そんな経験をしていたのですが...”0から"モノを生み出す感覚はまったく感じられませんでした。

「自分以外の誰かが生み出したモノである」という感覚がモヤモヤと漂っていたのです。

「これだけモノづくりにコミットした仕事をしているのに自分が一番感じたいと思っている感覚が得られないのはなぜだろう?」

「モノづくりにおいて大切な何かに関われていないのではないか? 」

「モノづくりの最も重要なところはどこだ?」

こんなことを考えるようになりました。

自分自身を分析してみたり、今までの経験を整理したり、ドキュメンタリー番組を観たり。

悩める時期に色んな情報に触れ、考え続けることで少しずつ気付き始めました。

そもそも"0から1”の段階は2つに分かれていて、職人がプロトタイプを作り始める部分はおろか、デザイナーがデザインを考える部分さえも、モノづくりの後半"0.5から1"に過ぎないことに気付きました。

モノづくりのスタート地点はもっと前。

ブランドヴィジョンを軸に「なぜその製品が存在するべきなのか」「誰に何を感じてもらいたいのか」「なぜそんなに情熱を注ぐのか」、その製品に対する強い思い、願望を言語化し、ストーリーに仕上げ、製品の核となる部分を構築していく。

この部分こそがモノづくりの前半であり、"0から1"を生み出す段階において最も重要なところだと気付きました。

この段階に関わらない限り、本当の意味で”0から”モノを生み出すことに関わったとは言えません。

この段階の重要性を理解していなければ多くの人が喜ぶモノなど作れません。

運よく作れたとしても再現性はないでしょう。

なぜそう思うのか。
製品の核はデザイナーや職人にとって最初のレシピとも言える存在だからです。

デザイナーがデザインを考える時も、職人が試行錯誤しながら製品開発していく時もすべて、その最初のレシピに何が書かれているのかを逐一確認しながら表現していきます。

具現化したモノがそれを正しく表現できているのか確認しながらブラッシュアップしてクオリティを追求していく。

これらはすべて、製品の核と具現化したモノを照らし合わせる確認作業です。

仮に開発過程の後半で職人の意見をキッカケにデザインが変わったとしても、その意見の正当性を測るのもまた、製品の核が基準になります。

この部分無しには何も判断できないのです。

すべての要素の土台となる部分だからこそ、最も重要なところなのです。

こうやって書くと「そりゃそうだろっ!」なんて声が聞こえてきそうですが...

製品の核となる部分を言語化する!ストーリーにする!と、言うだけなら非常に簡単。

それを実際に行うとなると困難を極めます。

実際の現場にいる人たちはこの部分をなかなか明確にできなかったり、つい見た目だけのデザイン、技術、素材に目がいってしまったり。

気付いたら製品の核は不明確で、当初の思いとは関係のない表現を盛り込んでしまっていたりすることは多々あります。

モノづくりの難しいところであり、面白いところなのかもしれません。

そんな大切な部分に関われなかった私は、無意識のうちにレシピを確認しながら行うモノづくりに違和感を感じてしまっていたのだと思います。

”0から"モノを生み出す感覚を感じられなかった原因はこれでした。

職人が企画から関わることはほぼ皆無。

その体制を簡単には変えられないことも重々理解していましたし、仮に突然「企画も関わってくれ」と言われたとしても、すぐに結果を出せるほどの素質がその時の自分に備わっていたとは思えません。

私が本当の意味で"0から"モノを生み出す感覚を得るには、企画からモノづくりをすることに挑戦する環境に飛び込む、もしくは作るしかないと思いました。

その感覚を得ないと「自分が生み出したモノで多くの人が喜ぶ姿を見たい」という私の原点とも言える思いを叶えることは、いつまで経ってもできないと。

そんな思いもあり、土屋鞄製造所を退職し、今のメンバーと一緒にobjcts.ioを始めることになりました。

では“0から1を生み出す”ことに関わりたい人は全員、前半部分を考える企画者になれば良いのか?

それも違うような気がしています。

ある女性ミュージシャンがこのようなことを言っていました。

「メロディや演奏は映画で言うところの脚本、声と歌詞は演ずる者と台詞」

どれだけ素晴らしい声、表現力を持っていたとしてもそれを最大限に活かせるメロディや演奏が無ければ素晴らしい楽曲は生まれない。逆も然り。

綺麗な青写真を描けるだけではダメ、技術や表現力を持っているだけでもダメ。

本当に”0から1”を生み出す人になろうとするのであれば何か突出したスキルを持ちつつ、モノづくりの全領域に関わること。これが必須です。選択と集中では足りません。

少なくとも私はその広範囲で関わることが出来なければ"0から1"を生み出した感覚を得ることはできないようです。

#モノづくり #objctsio #デザイナー #デザイン #職人 #クリエイター #ファッション

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"モノづくりの上に成り立つ個性"をコンセプトに据えたLeather Productを生み出すひとです。 / もてる時間のすべてを「創造」のために使い、新しい価値を生み出すイノベーターへ、感性に響くものづくりを届けます。
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