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Cカールな連休最終日

人生初のまつげパーマの帰り、ふとカレーの香りがした。今いるのは新宿、まだ夕飯には早い時間帯だった。ふらつこうにも私にとって新宿は深夜バスの出発口でしかなく、土地勘はなかった。それなら家により近い渋谷でカレーを食べようと、1番身近な山手線に乗った。東京って不思議で、有名な場所と有名な場所が近すぎる。カレー屋を調べるには短すぎる乗車時間だった。とりあえず前行ったことがある店をあてにしたが、こんな道だったっけ。と完全に迷子になる。前回は友達と昼間に行ったので道そのものは見えていなかったのだな。どこを歩くかじゃない、誰と歩くかなんだな…。と使えそうで使えなさそうな言葉を生み出しつつ、やっとカレー屋の入っているビルに着いたが看板は出ていなかった。

看板の代わりに私と同じくビルの周りでウロウロしているおじさんがいた。おそらく目的地が同じなのだろうと察した。いつもならもう少し粘ってお店の入り口を探していたところだったが、そのおじさんと同じ道をシンメトリーに行き来している自分が滑稽で諦めた。しかし、時間を追うごとに私の「今日はもうカレーしか食べたくない」気持ちが出来上がっていく。本当にカレーしか食べたくない。なのに渋谷にはドンピシャなカレー屋がなかった。

カレーには種類がありすぎる。カレーが食べたい且つカレー屋が目の前にある状況でも、カレーを諦めるという不思議な現象が起こってしまう。ちなみに私が今食べたいのはスパイスカレー。スパイスすぎてもはや草食べてるみたいな感覚になる其れが食べたかった。調べると結構近くに其れを出す店があった。入った。現金しかダメだった。オダギリジョーのあのCMか?と脳内ツッコミをして終わった。ああ、今日はカレー運がない。今日私はそもそもうっすら運がないのだろう。そんな日にたまたまカレーを探し初めてしまったことで「カレー運がない今日」を作り上げてしまった。もし富士山とかに登ってたら絶対途中下山になってたような今日だ。そんなことを考えながらも渋谷駅に戻り、今度は家の近くのカレーを調べていた。

私の住んでいる町は素晴らしく、なんでもある。落ち着きもある。ただ一つだけないもの、それはカレー屋だった。ない。カレー屋がない!Googleマップの「このエリアを検索」を実行しても、ピンは私の町からビュイ〜ンと飛ばされていく。でも一件、頑張れば家まで歩いて帰れる距離のカレー屋を見つけた。ギリ合格。カレーの系統もいい感じ。ここしかないと思い立って、あまり降りたことのない駅で下車した。結果、大正解だった。人生ってこんな感じの繰り返しなんだろうな。とメタ化して考えてしまう癖が出る。程よい辛さで鼻に抜けるスパイスの香りがちょうど良かった。私はスパイスカレーならなんでも美味しく感じるので味については語れないが、この店はなんといっても照明がカレーを惹き立てていた。カレーから滲み出た油の粒がキラキラと照らされていて、思わず「綺麗だ…」とレインボー(芸人)のジャンボになってしまうほどだった。スタンプカードも作ってもらっちゃったりして。

ありがとう今までの伏線たち。歩いて帰る道もなんだか気分がいい。自然と顔が上向く。反転した「5」と「9」の風船がマンションの窓から覗いているのに気づいた。59歳になる時、風船を膨らましてもらえるような人間になりたい。また進んでいくと、ある居酒屋がまだ早いのに閉まっていた。すると居酒屋の2階からハッピバースデートゥーユ〜の歌声が。従業員のお祝いだろう。帰り道に2度も誕生日という概念に出くわした。超おめでとう。

顔も見たことがない人たちに祝福を捧げられる。それは、私が今満腹で、まつげが上向いているからだ。そんな3連休の最終日。

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