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かみのみぞしる -大地の裂け目と、壮大な勘違い- #015

「神のみぞ、知る」という言い回しは、それは神だけが知っている、という意味だ。運を天に任せる、というような時、今後どうなるかわからないような時、それは人間には知り得ないから、神様のみが知っているんだ、と。

しかし、強調表現である「ぞ」が曲者である。神のみ「が」知る、ではだめなのか。「ぞ」はとてもカッコいいが、分かりにくい。

「神の溝知る」

私はずっと、こうだと思っていた。誰かが(大抵は大げさに表現しようとして)「それは、かみのみぞしる、だよ」と言うのを聞くたびに、私は「神の溝」を想像した。それは大地の裂け目のような場所だ。荒野のようなカラカラに乾いた大地に裂け目がある。溝(みぞ)である。その溝の真っ暗な中に、顔のようなものがついていて、それは言うのだ。あごのあたりにひげを生やした、賢人である。

「ワタシだけが知っています」

自分のビジネスはうまくいくだろうか?、そう思った社長は、みぞに行って聞く。「我が社はうまくいくでしょうか」。神のみぞはこう答える。

「それは、ワタシだけが知っています」

社長は、それはそうだよな、と思い、商売に精を出すのである。

1週間後の遠足の日は晴れるだろうか。そう思った少年は母と一緒に聞きに行く。「その日は晴れますか?」みぞは答える。

「ワタシだけが知っています」

親子は、とりあえず準備するのである。答えはわからない。でも、知り得ないことは分かったのである。神の溝だけが、知っているのだ。

(追記)
「恐怖の味噌汁」という怖い話がある。子どもがお母さんに、今日の夕飯を尋ねると、母は答える「今日…麩の味噌汁よ…」。別に怖くもないし、特に意味はないが、なんだかこの話が好きなのだ。きょうふのみそしる。

(追記2)
このエッセイを読んだ妻は「その人、ずっと溝にいてかわいそうだね」と言った。

「神の溝」イメージ(つなまよ画)。maemuki氏に上記を送り、イラストを依頼した。

2023年10月9日執筆、2023年10月15日投稿


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