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mitasann
#彼女を文学少女と呼ばないで/ハン・ガン「こんな濃霧の明け方に、この都市の幽霊たちは何をするのだろう」
『すべての、白いものたちの』ハン・ガン
彼女は、あまりの寒さに
海が凍った風景を見たことがある。
海は遠浅で、ひときわ静かだった。
しかし波は岸から凍りはじめ、
まばゆい光を放っていた。
白い花が咲きかけて途中で止まったような光景を
見ながら歩いていると、
砂浜に、
白い鱗を凍りつかせて
こわばった魚が散らばっているのを見つけた。
土地の人は、
こんな日を「海に霜がおりた」というらしい。
これらの言葉たちで私の心臓をこすったら、
何らかの文章は流れ出てくるだろう。
けれども、その文章の中へ
白いガーゼをかぶって隠れてしまっていいものなのか。
♦︎異国の地、それはありきたりの疎外感などではなく。
ときに私は自分を動く島、孤立した島のように感じ、
そうやって人ごみの中を通り抜けていくとき、
肉体はまるである種の監獄のようだ。
今までの人生すべての記憶が、
それと分かちがたい私の母国語とともに、孤立し、
封印されているように感じる。
この夏、私が逃げ込んだ場所は
地球の反対側の都市などではなく、
結局は私の内部、私自身の真ん中だったのか
と思うほどに。
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