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次の駅までのひとときに

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わたしのなんでもないエッセイ
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2020年8月の記事一覧

瓶ビールはまた、そのときに

瓶ビールはまた、そのときに

「俺、飲めへんから、都村付き合ったってくれや」

ぱたんと部長はメニューを閉じ、「烏龍茶と瓶ビール、グラス」とおばちゃんに指を2本立ててみせた。向かいの席のA先輩は「おお」とだけ言うと、椅子の背にずかっと体をあずける。それは「頼むわ」や「たくさん飲めよ」と受け取っていいのだろうか。まじまじと表情を窺っていたが、威圧感に負けて私は視線を机の上に落とした。ホテル1階の定食屋は他に人けがなく、食器を洗う

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