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Rainbow⑩

恵み③

 白保海岸は、夜明けを待っていた。
 閑散とした砂浜には、流木が東の空を見るように横たわり、細波が力無く引いては寄せるを訳もなく繰り返す。次第に風は強くなり、カーチーバイ(夏至南風)が、七月の石垣島を吹き荒らす。巻き上げられた砂塵は、海岸の堤防を越え、民家の建ち並ぶ集落へ撒き散らされる。
 朝六時前、風がドアを叩く中、真里は両親の定食屋の手伝いをしていた。真里が手伝い始めて、もう一週間になる。テーブルを拭き、箸や薬味などを手際よく並べていく真里を、千夏は複雑な心境で見つめていた。
 町を一望できる展望台での出来事以来、真里は学校以外の時間を千夏から離れないようになった。店の手伝いも「人手は足りているからいい」と断ったにも関わらず、真里は毎朝手伝いに部屋から降りてくる。
 もう日課の早朝ダンスも行っている気配がない。千夏は、自分の浅はかな行動を悔やむしかなかった。
「私みたいにならないで、――人の失敗を嘲笑うような人には、決してならないで」
 あの日真里に言いそびれた言葉が、もう何度も頭の中を巡っている。
 高校時代の千夏は、負けず嫌いな性格が、「青春」という二文字では綺麗に片付けられない状況に追い込まれていた。

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