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「前橋市アーバンデザイン」を読解くvol.8 第5章:長期ビジョン(前編)

前橋市の再開発計画「前橋アーバンデザイン」(以下MUD)を章ごとに読解いていく。今回は第5章「長期ビジョン」について。前章の「まちづくりの方向性/エコ・ディストリクト/ミクストユース/ローカルファースト」をいかに長期ビジョンに落とし込んでいるのかを読解いていきたいが、この章はボリューミーなので(前編)全体像(後編)具体策をそれぞれ解説していく。

1)ビジョンイメージ図

実際のMUDでは第5章の巻末に添付されている資料だが、イメージしやすいので冒頭に触れてみよう。

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イメージ図を見ると、今の前橋よりはるかにグリーンが増え、住居(マンション)、商業ビル、学校がミクストユースされている状態はわかる。今住んでいる神戸がこんな感じのグリーン感。でも、このイメージ図の中の公園は既存の利根川部分だけであり、残りは街路樹がメイン。NYのセントラルパークのように、ドーンとマチナカ公園があったらいいのにな~。イメージ図からは、あまりワクワク感は伝わってこないのが残念。

【解説文】
長期プランの各テーマを重ねた図案が以下のビジョンイメージ図です。賑わい拠点、魅力的な屋外空間を水と緑でネットワーク化することで前橋プライドの礎をより強固にすると同時に、回遊性を高めてそれら屋外空間の活用を促進します。また、水と緑でつながった屋外空間は、歩行者、自転車、公共交通 が使う新しい街路ネットワークによって結ばれており、便利で健康的なライフスタイルを促進します。
水辺、街路樹や公園などの緑の豊富な環境や、まちを歩いて楽しくなるような通り沿いの店舗の賑わい、様々なアクティビティにより人々の出会いと交流を生むオープンスペースなど、豊かな屋外空間を積極的に使い、育てることで、建物を含めたまちなか空間がより活発に使われて、クリエイティブな人材が集積・活躍する、多様なライフスタイルを受け入れるまちになることを目指します。

さらに解説文を見てしまうと謎が深まる・・・クリエイティブ人材が集積するとあるが、クリエイティブ人材って誰?そして、多様なライフスタイルを受け入れるって、どゆこと?このイメージ図からはな感じ取れない。「前橋プライド」「便利で健康的なライフスタイル」「クリエイティブ人材」「多様なライフスタイル」とかふわっとしたワードが並ぶと、途端に嘘くさくなってしまう。中途半端な文章にせずに、イメージ写真とキーワードくらいの方が直感的に伝わるかも。

2)長期ビジョンの3つの切り口

さて、本章の主題である「長期ビジョン」は3つのテーマで構成されている

1.街路ネットワークについて【複数交通手段への対応】
歩行者・自転車がより便利に、簡単に往来・移動できるようにすることで、利用者の増加を図る
2.オープンスペースについて【水と緑のネットワーク化】
オープンスペース化した低未利用地や前橋公園、利根川、広瀬川、馬場川をつなぎ、 水と緑のネットワークをつくることで前橋らしいまちの魅力を積極的に高める。
3.土地利用について【ミクストユース化して昼夜間人口のバランスをとる】
まちの中の用途の複合化を促進し、住人口と就業人口の増加による昼夜間人口のバランスをとり、 昼夜問わずまちに人が行き交う仕組みをつくる。

おっ、急に具体的な都市開発計画になってきたが、前提が語られないままにこれを実行すると言われても、みんな腑に落ちないのでは?この3つのテーマを理解する為には、前提とする都市計画として「コンパクトシティ」を目指すということを知っておく必要がある。コンパクトシティは国交省が推奨する地方創生の基本モデル。これに沿っていれば都市再生を実施する際に国の補助金もアテにできる。それでは、前提となる「コンパクトシティ」の考え方を紐解こう。

3)前提は「コンパクトシティ」

日本の多くの都市が抱えるドーナツ化現象やスプロール(虫食い)化現象の課題に歯止めをかけ、中心市街地を活性化するのがコンパクトシティの考え方。高度成長期に中心市街地から郊外へと宅地や商業地、公共施設などの開発が進んだ結果、交通や教育・医療・福祉のサービスなどの都市機能が分散し、今度は人口が減少すると利用者が少なくなり、サービス提供が維持できなくなってくる。前橋市でも高度成長期に居住地や商業地が拡大していき、日本で車の所有率No. 1の車社会が出来上がった!けど、今となっては車に乗れない高齢者が生活に不便してるのはわかりやすい例。現在は、移動や生活の不便さを解消するために、公共サービスを補助金等で補填しながら何とか継続しているのが大きな課題になっている。そこで、交通や教育・医療・福祉のサービスを維持するために、郊外へと広がって薄まってしまった生活基盤をもう一度一か所に集約させて、都市機能を継続させるのが「コンパクトシティ」の考え方。ただし、間違えてはならないのは「以前の中心市街地の賑わいを取り戻す」という事ではなく「新たに都市機能を備えた小さな町を再構築する」という事である。

※コンパクトシティに関しては久留米工業大の記事がわかりやすい

記事によると、メリットとデメリットはこう整理されている。

■コンパクトシティのメリット
・行政のサービスが充実する
・経済が活性化する
・環境問題を改善できる
■コンパクトシティのデメリット
・居住地域が制限される
・近隣とのトラブル
・郊外から中心部には移動しにくい

コンパクトシティのメリットを見るとMUDの①エコ・ディストリクト②ミクストユース③ローカルファーストは達成できそう!だが、デメリットを見ると簡単には進まないよ~という事だろう。次回の(後編)では、そこをどうやってコンパクトシティ化していくのか、テーマごとに深堀りしてみる。


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