二の足を踏んでしまう“人事・採用DX”
企業説明会や採用面接のオンライン化なども進み始め、採用市場は日々急速に変化しています。
自社ニーズに合った人材を採用するためにも、採用市場における自社の優位性を確立していく必要があります。
そんなオンライン化が進む中で採用DXという言葉が注目を集めて始めています。
「業務のオンライン化は進めているが、内定まで繋がらない」
「選考辞退、内定辞退が多く困っている」
「自社に合った人材を採用したいが、上手くいかない」
こんな課題を抱えている企業担当者も多いでしょう。
本記事では採用DXの目的、実現させるためのステップについてお話しします。
■そもそもDXとは
DXとはデジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略。定義は以下のようになってます。
要するにDXとは、データやデジタル技術を用いて既存のビジネスやプロセスに変革を起こすこと、その変革によって売上や利益を向上させることということになります。
ちなみに、「既存の業務にITツールを導入する」だけではDXとは呼べません。
「既存のビジネスやプロセスのデジタル化」にとどまらず、そのことによって「新しい価値を創出し、企業それぞれの目的を達成する」ことがDXのポイントです。
■採用DX
「採用DX」とは何なのか。
採用DXとは、先述したDX定義も鑑みると、「データやデジタル技術を用いて既存の選考フェーズや組織を変革し、優秀な人材を継続して確保すること」を指します。
対象となる採用プロセスは「認知」「応募」「選考・内定」「入社・活躍」です。
既存の選考フェーズをデジタルに置き換えるだけではなく、「データやデジタル技術を用いた中長期的な戦略、組織レベルでの優秀人材の獲得、定着を推進する」ということが大切になります。
■CX(候補者体験)とEX(従業員体験)の向上
採用DXを実現させるために注力すべきポイントが、「CX(候補者体験)」と「EX(従業員体験)」の向上です。
この2つの向上により
・採用候補者から選ばれる企業
・優秀な人材が入社し、継続して働いてもらえる企業
になる構造となっているからです。
・CX(候補者体験)向上
CXとは、採用候補者の体験(Candidate Experience)の略です。
「採用候補者が企業のことを知ってから選考を終了するまでの全ての体験」のことを指します。
デジタル技術の普及、コロナ禍の影響でオンライン説明会やWEB会議ツールによるカジュアル面談など、従来の採用とは異なる手法がが主軸になりつつあります。
説明会のオンライン化では、学生が自宅から参加できる、地方在住者がkガルに東京に本社を構える企業にエントリーできるなど、参加ハードルが下がりエントリー数が増加した企業も増えています。
ただ、オンライン化によって生み出されるものはメリットだけではなく、同時に課題も見えてきます。
オンライン化が当たり前になったためにオフラインでのイベントが実施しづらくなる、一度も会社に訪問せずに入社が決まり雰囲気が感じ取りにくい
など、他にも様々な課題が生じています。
これらの課題に対して企業側は、自社発信の記事や動画のコンテンツに投資するといった、採用CXの再設計が求められてきています。
変化する時代に対応し新しい採用CXを設計することで、強固な採用基盤を作ることで「候補者から選ばれる企業」となることができます。
・EX向上
EXとは、従業員の体験(Employee Experience)の略です。
「従業員としてはたらく期間における全ての体験」を指します。
雇用の流動化、人手不足、働き方改革といった社会事情の変化から、従業員満足度やエンゲージメント(=EX)向上の必要性が注目されてきました。
採用DXにおいてはEX(従業員体験)の向上がCX(候補者体験)の向上に繋がるとされてます。オンライン採用が主となったこの時代では、CX向上には自社情報の積極的な発信が必要不可欠です。このときEXが良好であれば、社員や元社員のポジティブな発信、情報、リファラル採用などにも期待ができるようになります。
EXが向上することによって自社の魅力が、結果的にCXにも良い影響を与え、「優秀な人材が入社し、継続して働いてもらえる企業」になるのです。
■採用DXの実現ステップ
採用DXを実現するために、どのようなステップを踏んでいくべきなのか。
以下4ステップに分けて解説します。
・現状のCX(候補者体験)の整理
・理想のCX(候補者体験)の再定義、採用課題抽出
・EX(従業員体験)の課題抽出、施策検討
・施策実施、定期的な見直し
・現状のCX(候補者体験)の整理
最初に行うのは現状のCXの整理です。近年の市場の変化によって候補者のニーズも変化している可能性があるからです。
候補者が自社を認知する方法は、これまでは主に会社説明会でしたが、今ではオウンドメディアやSNSなど、選択肢も数多くなってきました。
まずは、4P分析やSTP分析などのフレームワーク等を用いてCXの整理をしましょう。これまでの採用活動の中で得たデータを揃えておくことも大切です。
・理想のCX(候補者体験)の再定義、採用課題抽出
次に理想のCXを再定義します。このときにキャンディデートジャーニーマップを用いると、候補者の視点や態度などから自社の採用活動を見直すことができるのでお勧めです。
再定義したCXをもとに以下を整理し施策の検討を行います。
・どのような状態を目指すのか
・どのようなデータが必要なのか
・そのデータを取得する仕組みはあるのか
デジタル化が可能なアナログ業務が残っていないか、などを確認し、残っていれば効率化を図ります。改善サイクルをスピーディーに回すことを意識してください。
・EX(従業員体験)の課題抽出、施策検討
EXにおいても、アナログ業務のデジタル化で、効率化が可能な領域が無いかを検討します。
・ミッション・ビジョン・バリューの見直し
・自社発信のコンテンツに繋がるユニークな取り組みの導入
・社員によるSNS・オウンドメディアを通じた発信
上記のような踏み込んだ施策も考えられます。
EXの向上は企業ブランドの価値向上にも貢献します。
・施策実施、定期的な見直し
CXの定義、EXの検討が出来たら、最後は採用活動の仕組みのアップデートです。
・自動的にデータ分析を行うITツールを導入する
・自社採用ページの立ち上げ、通年化した採用活動へ対応する
・自社コンテンツの充実を図り候補者との接点を増加させる
アップデート後は候補者へのアンケートなどにより動向を確認しましょう。
採用市場の変化をいち早くキャッチアップするため、定期的に候補者の動向を確認し、見直し・改善し続けることが必要です。
■採用DXを成功させるポイント
採用DX推進にあたり、「自社にDX推進のためのスキルをもった人材がいない」「セキュリティ対策に不安がある」という課題を抱える担当者の方も多いと思います。
このような場合は外部人材を活用することも一つの選択肢として考えられます。
DX推進に関する最新動向調査レポートによると、DX推進にあたり、全体の6割強の企業が外部人材を何らかの形で活用しているということがわかっています。
外部人材を、ITツールを活用することで、業務効率化・自動化を促進し、コア業務に向き合う時間を作り出すことが可能になります。
■まとめ
急激に変化したオンライン採用時代ですが、場当たり的に対応するだけでは採用担当者の有限なリソースを非効率にしてしまいかねません。
CX(候補者体験)とEX(従業員体験)の向上から採用DXを実現、「候補者に選ばれ、優秀な人材に継続して働いてもらえる企業」へと改革していきましょう。