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推し作家の「概念」グッズを作る。【クリアしおり編】

毎日のように内田百閒の話をしている。

 皆様、お暑い中お元気にしておられますか。私は毎日内田百閒の話をしています。(主に身内鍵垢Twitterで)

 それというのも、元から好きで読んでいたのに、さらに某文豪ゲームでのキャラクター化&実装でこれは色んな人に勧めるチャンス!と作品のガイドPDFを作ったりオタクの叫びをたれ流したり、挙句は発行時系列の順番通りに内田百閒作品を全部読んで感想をまとめるという、無謀なマラソンまで始めてしまったからです。

 まだ二作しかまとめられていない体たらくですが、この企画のために改めて百閒作品を読み、読み、途中つかれたので別腹の『阿房列車』を頭から読み直してまた企画の百閒作品を読んだり……と、人生で一番百間先生のことばかり考えているし、そりゃツイートもその感想に偏るわけです。

 こんなにしつこく読んでも、相変わらず面白い……飽きない……好き……という気持ちはいつしか「身の回りの物に百間先生の概念を取り入れたい」「なんなら自分用に作るし……」という方向へカーブしてきたのですが、百間作品はまだ著作権保護期間中ですので好きな文章抜粋などもできません。TPPのアレで延長してなかったら今ごろ青空文庫に入力しまくってたのによお!と嘆いても始まらない。法律は順守したまま何かしらの推し活がしたい。

そうだ、「概念」グッズ作ろう。

 全作読破企画の感想をまとめる際に、各書籍のタイトルを新聞風の題箋画像としてデザインしていました。作品タイトルには著作権がない(商標登録しているものを除く)ので、これなら何かしらに活用できる。
 自分でもお気に入りなので、アクキーとかにしたいなあ……でもどうせ使わないか……と考えていたのです。
 それと同時に、本をあれこれ読みながら「ペラペラのしおりが大量に欲しい! 挟んだままめくっても邪魔にならないやつ!……作るか?」という発想に至って検索すると、出てきたのが印刷所さんのクリアしおりの紹介。こ、これだーー!!

 四枚一セットで、台紙のデザインもできるのがとてもいい。題箋画像は三つまで作ってあるので、あと一つを仕上げて、色を付ければすぐにでも流用できる。よっしゃーー!!とillustratorをフル稼働させて、半日でおおむねのデザインを、プラスもう半日で仕上げデータを完成させました。おれはこういうときのためにAdobeに年貢を納めているんだよオ!

データ完成品(の見本画像)

 というわけで、思いついた翌日に入稿しました(少部数なのでオンデマンドで)。デザインもデータ作成も素人の手探りで、果たして上手くいくのかドッキドキです。一応、白い部分は透明で透けるはず……。

そして現物が届いた。

印刷所の箱を開いたところ(まだこれは余部だった)

 たった5日で迅速に届けられた印刷所からの箱を開けると、うわーーーーーーーーーー!!!!!そこにはうわーーーーーーー!!!!!!いやもうなんこれうわーーーーー!!!!「商品」じゃんうわーーーー!!!!(やかましい)

下に白い紙を敷いた全体写真
スケスケ版全体写真

 いやあもう大興奮してしまいましたよ……すごい ちゃんとできてる いやめっちゃよくない??????(表現の放棄)
 台紙部分に白押さえを入れるか悩んで、いやクリアしおりらしさを見せよう!と透かしたら思いのほかスケスケすぎて地の色がほぼ目立たなかったりと反省もありますが、個人使用の非売品だし!商品じゃないからおっけー!!とポジティブに乗り切りました。

デザイン元ネタと、バラしたしおりたち

 というわけで、以下、それぞれのデザインの説明です。

『冥途』(第一創作集)

上段左:岩波文庫/上段右:旺文社文庫/下段左:『初稿 冥途』(えでぃしおん うみのほし)

 2022年の今からちょうど100年前、1922(大正11)年。33歳の内田百間が初めて世に出した本です。短編というにもまだ短い、18本の文章が読み手を明治大正時代の人間の見た夢の世界へと、道連れにしてくれます。

 『冥途』の題箋は企画の最初に作ったのですが、手癖でやった部分が大きく、あまり作品と関係ないデザインなのが自分で気になっていました。
 今回、色を付けるにあたって、ぼんやりと不穏が漂うような感じにしたいと思い、さらに「えでぃしおん うみのほし」から発行された『初稿 冥途』の装丁が素敵なので、なんとなく影響も受けつつ(?)、モヤモヤっと水彩ブラシを散らしました。

クリアしおりの透け感を活かした『冥途』

 結果として一番クリアしおりの素材を活かせた気がします。
 実際に『冥途』の本文ページに重ねると、すんんんごくイイです……。

 他、『冥途』については企画でも解説しているので、よろしければ合わせてどうぞ。

『旅順入城式』(第二創作集)

上段左:単行本(第三版)本体/上段右:単行本函/下段左から旺文社文庫、岩波文庫

 『旅順入城式』は『冥途』のおよそ十二年後、随筆集がヒットするまで本を出せなかった百間が、随筆の人気を受けて世に出した創作集です。

 デザインは、単行本版の本体の色合い(百閒先生曰く「夕立雲の下がちょっと明るく乱れているところ」旺文社文庫版解説より)と、百閒先生使用の原稿用紙をもとにした函のデザインを合体させました。これぞ概念グッズ。

 ただ「あんまり似せすぎても……」と別の色を入れたグラデーションでちょっとデータの作り方をしくじったのと、「だいたいこんな感じだよね~」と勘で作ったタイトル部分がちょっと似すぎたのが反省材料ですね……。なんならフォントも同じかもしれない、岩波文庫のほう……(Adobeフォントの豊富さが裏目に出てしまった……?)このしおりは非売品の個人用です。(元から販売するつもりはないんですが、特にここで売っちゃだめなやつだな!となりました、反省)

『百鬼園随筆』『続百鬼園随筆』(第一、第二随筆集)

上段左から、新潮文庫、旺文社文庫(下段も同じ)

 内田百閒の代表作『百鬼園随筆』と、その続刊である『続百鬼園随筆』。現在も書店に並ぶ新潮文庫版は、芥川龍之介の描いた百閒(の、ドッペルゲンガー?)の似顔絵が表紙です。

 このぐるぐるにも惹かれますが、しおりには旺文社文庫版の表紙デザインから、蝶と扇のモチーフをお借りしました。
 ババーン!と百閒先生が世に出た随筆集なので、ババーンて感じのサンバーストで賑やかに。小説作品とはまた雰囲気の違う、百閒随筆の楽しさ(だけでもないんですが)を表現しました。

 しかしクリアしおりの特性を理解していなかったため、ずさんなデータ作成ぶりが透けて見えてしまう事態に……。いや~~売り物でなくてよかった……(販売目的だったらさすがに作り直してた……)。

裏から見た白押さえ

 『旅順入城式』にもちょっと入れてますが、百鬼園随筆はサンバーストを目立たせたかったため、裏に白押さえを入れました。なかなか効果的にできたんじゃないかと自負しています。後先考えない作り方してるので、白押さえデータを作るときに大変苦労しましたが……(自分のデータの解読から始まる)。

 『百鬼園随筆』についての解説はこちらに詳しくまとめてあります。

その他のデザイン元ネタ

左:単行本『普及版 阿房列車』/右:福武文庫『百閒座談』
細部は異なっている偽の印っぽい絵

 スケスケとなった台紙の文字部分に添えた印章風の画像は、百閒先生使用の検印をイメージしました。この、「閒」の字の代わりに門からお月さまが出てるデザイン、かっわいいですよね~~!!そのまんまはあれなので寄せているだけですが、改めて、百閒先生センスいいなあ……と実感しました。

上:内田百閒『旅順入城式』単行本より、野上臼川(豊一郎)画のきつね

 『冥途』『旅順入城式』共に単行本にいるキツネチャンは、既に著作権の切れている野上豊一郎(野上臼川)画なので、堂々とトレースしました。でも私が下手くそだから地味にクオリティ落ちてますね、すみません野上先生。法政大の能楽研究室にはいつもお世話になっております。

よろしければ内田百閒を読んでください。

 いや~~概念グッズ作るのって、楽しいですね!これからも著作権セーフの域内でいろいろやっていきたいと思います。

 ここまで読んで、人をここまでさせる内田百閒って何者?どんな作家なの??と気になった方は、ぜひ百閒作品を読んでみてください。青空文庫にはありませんが、2022年現在もかなりの数の本が(それも文庫で)現役で書店に並んでいますし、日本の古本屋など古書でもたくさん販売されています。もちろん図書館でも!みんな内田百閒を読もう!

某ゲームから入った方へのガイドPDFより抜粋、ざっくり書籍リスト

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