江戸版「鉄仮面の男」【掌編小説】833字
十七世紀後半のフランスにおいて、「鉄仮面の男」が牢獄に囚われていた。
面会時には仮面の着用が義務付けられ、誰も彼の素顔を知らなかったという。
素性も不明であるが、時の指導者の息子だとか、名のある貴族の縁者だとか噂されていた。
彼の死後も様々な憶測が飛び交い、彼を題材にした小説や映画が数多く作られている。
さて、時を同じくして、日本にも「鉄仮面の男」がいたことをご存知だろうか。
江戸時代、とある場所に面を被せられた男が囚われていた。
名をヒョードルと言った。
国籍不明であるが