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節約家のあなたへ②

ハンドメイドで稼ごうと頑張る「あなた」に向けて、稼ぐ(=利益を残す)ための考え方について書いたお手紙の後編です。

このnoteは、10年前の私である「あなた」に向けて書いています。
「あなた」は売れないハンドメイド作家。
「わたし」はワークショップ歴10年のプロ講師です。

前編のまとめ

ハンドメイドを愛する者の大前提として、利益が出ても出なくてもハンドメイドは楽しい!!です。わたしにとっても、それは10年前から変わりません。
けれど楽しいだけでは暮らせないのも現実。ハンドメイドで生活費を稼ぐことを目標にするあなたには、お手紙の前編で「利益」に着目した考え方が必要だと書きました。

利益 = 生活費。
そう自覚すると、あなたが歩もうとしている道(道なんてあるのか?!)の険しさに背筋が伸びますよね。ちょっと怖くも感じます。

利益を残していくためには「①売上を伸ばす」「②コストを削減する」2つの考え方が大切です。①についての情報は溢れているのに、②についてはあまり表に出てきません。②は作家さんごとに方法が違うので情報が一般化されにくいことも要因だと思います。

後編のこのお手紙では、わたしが利益を残せるようになったきっかけについて書いていこうと思います。

手作り品販売の活動限界

あなたは分類や片付けが好きです。日用品類は使用頻度に合わせて位置を決め、荷物の重さや自分の身長を考慮した収納も工夫しています。単に「物をしまう」だけでなく生活導線に配慮して無駄を省いた「環境作り」に楽しさを感じていますよね。そんなあなたですから、わたしに指摘されるまでもなく作業の効率化はやってきました。

材料は計画的に仕入れて無駄なく使い、失敗を減らせるように試作の時からデータを取ってレシピも書き残しています。一人暮らしの狭い部屋で作業スペースだって上手に確保しました。あなたは色々工夫して上手くやっているのですが、それでもイベント前はいつも徹夜で作業に追われてきました。

制作だけでも時間が足りないのに、値札付けやPOPの用意、ディスプレイの小道具準備、在庫管理にイベントの告知やSNS、ハンドメイド作家の作業は膨大です。頑張れば頑張るほど「もっと」と気付くことも増えて、とても追いつきません。

一部を効率化はできても制作作業を大幅には減らせないことで、頑張っても伸び悩む状況が続くようになりました。前向きでいたいと思っても、気持ちの面でも制作時間や作業量の面でも限界が近付いているのが最近のあなたです。

好きを仕事にする方法

頑張っても売れなくて、限界を感じてやる気を失くした10年前のわたしが、それでも諦めるのは嫌で、悪足掻きで挑戦したのがワークショップでした。

初めてのワークショップはテーブルに看板と材料を置いただけの状態でやりました。そんな貧相なブースに、お客さんは順番待ちをして笑顔でお金を払ってくれました。今までで一番準備しないで臨んだイベントが、今までで一番盛況だったことに、私は衝撃を受けました。

必死に作品を作ってブースを埋めなくてもお金が入ってきた。
この信じられない体験で、わたしは目から鱗が落ちました。

「ものづくりを仕事にする」≠ 作品を作って売る

ずっと、好きを仕事にする方法は作品販売だと思っていました。商品をたくさん作らなくてはいけないと信じて苦しんできました。でもこの日、ワークショップという方法があることに気付いたのです。

「ものづくりを仕事にする」= ものづくりに関することで収入を得る

よく考えたら、作品を売ることは手段で、わたしの目的はものづくりを仕事にすることでした。それは、大好きなものづくりに<関すること>で収入を得たいという意味でした。
設計者やデザイナーのように考えたりデザインしたりする、職人さんのように技術を活かす、図工の先生や保育士さんのように工作を教える、修理屋さんのように直す…ものづくりに関わる職業だってこんなに多様です。ドツボにはまって作品販売しか見えなくなっていたけれど、ハンドメイドを仕事にする方法だって1つじゃなかったのです!

作業の効率化とワークショップ

手応えを感じたわたしは、作品販売からワークショップに方向転換を決めました。作品販売と比べてワークショップの方が利益を残しやすいというのが決断の根拠でした。

ものすごくシンプルに書くと、ワークショップは材料だけあれば売上が立ちます。販売のために必要だった量産、パッケージングや値札付けの作業をまるまる省略することもできます。しかも作り方やデザインの知識といった自分の中にある情報が商品になるので、材料を用意できる限り在庫が減りません。そして、作り方を教えることでお客さんが目の前で喜んでくれます。

■作品販売の場合
 商品:完成品(物)←売れると在庫減る
 必要な工程:材料用意→制作(工程多い)→パッケージング・値札付け→販売

■ワークショップの場合
 商品:体験(コト)←材料がある限り生み出せる
 必要な工程:材料用意→準備(工程少ない)→ワークショップ

同じ商品を1日に10個売るのは難しいと感じているあなたも、ワークショップなら10人できそうな気がしませんか?
この道が見えた時に、ずっと悩んできたわたしは心が軽くなりました。

作業量というコストをどう節約するかは収益構造を決める鍵になります。どんなに効率良く働いても、自分1人の仕事量は限られるからです。ワークショップに出会ったわたしは、以前よりも少ない作業で売上を上げることができるようになりました。つまり活動を効率化し、利益率を上げることに成功したのです。

節約家のあなたへ

成功したのです、なんて偉そうに書いてしまいましたが、めちゃくちゃ悩みながら少しずつ自分と向き合っていった末に、やっと少しだけ希望が見えたという密やかな体験です。

今思えば作品販売をしていた頃は、頑張れば頑張るほど視野が狭くなっていました。販売以外の方法なんて考え浮かびもしないまま、ずっと不安でした。

不安から抜け出せたのは、節約好きなあなたが、節約しても効率化しても売れない状態にストレスを抱えながら頑張って、それでも上手くいかなくてやる気を失くし、それでも逃げずにワークショップに挑戦してくれたお陰です。あなたがいてくれたから10年ものづくりを続けてこれました。ハンドメイドを好きでいてくれてありがとう。

いつもあなたに感謝しています。
わたしより

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