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映画『あの頃。』今が一番楽しい大人たち

観終わったとき、なんとも言えない安心感と「自分もこれでいい」という肯定感に包まれました。「好き」を共有してハンパない熱量で活動するアイドルオタクたち。自称「中学10年生」の彼らは喜びにあふれ輝いていました。知らなかった世界なのに本当に引き込まれました。

原作は劔樹人の自伝的コミックエッセイ「あの頃。男子かしまし物語」
監督は「愛がなんだ」の今泉力哉、脚本は「南瓜とマヨネーズ」の冨永昌敬。2020年製作。日本映画。

ベース弾きでフリーターの劔(つるぎ)(松坂桃李)はアイドル松浦亜弥の「桃色片想い」のMVを観て心を奪われてしまいます。「ハロー!プロジェクト」のアイドルに夢中になった彼は、トークイベントで知り合ったコズミン(仲野太賀)らと遅れてきた青春の日々を謳歌しますが...

題名は「あの頃。」ですが、過去を懐かしむ物語ではありません。「今がいちばん楽しい」大人たちの物語です。

内輪だけでオタク談義が盛り上がり、観客が置き去りにされてしらけてしまうようなことは全くありません。わちゃわちゃするシーンもなんせオタク達の年齢が高いのでちょぴり哀愁が漂い楽しめます。

今泉監督がいつも心がけているのは「観客を置き去りにしない作品づくり」だそうです。(公開記念特別番組 監督・原作者対談より)

アイドルに詳しくなくても楽しめます。何度も何度も愛すべきオタクたちに笑いました。

トークイベント後に仲間で「たこ部屋」と呼ばれるイトウ(コカドケンタロウ)の部屋に集まってアイドル談義をするところなどもホントに楽しそうで羨ましいほどです。

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主人公は劔なんですが、もう一人の主人公ともいえるコズミンを演じた仲野太賀がもう絶品でした。この俳優が演じてくれたから作品がここまで心をつかまれるものになったと思います。

コズミンはプライドは高いのですが、小心者で「ネット弁慶」と仲間に言われています。仲間が無職であることを陰で悪く言ってみたり、仲間の彼女にちょっかい出したり、情けないヤツなんです。小心者だけど声だけデカいヤツ。それでも仲間といつも一緒にいて、仲間もそんなコズミンを受け入れて笑っています。仲野太賀の絶妙な演技で、コズミンが単なる嫌なヤツではなくとても魅力的なキャラクターになっていました。

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映画を盛り上げるためのエピソードではなく、現実にコズミンに起こった深刻な事態。友に対する仲間たちの彼らなりのやり方が、明るく不器用で不真面目であたたかい。

夢中になれる大好きなことがあるって素晴らしいです。一風変わったことでもなんでもいい。家族に夢中な場合もあると思います。現実の恋愛に夢中なひと、彼らの様にアイドルに夢中なひと。

皆それぞれ大切なものがあって

生き方と同じ様に

人と同じである必要は全くないのだと。

大好きな作品となりました。

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