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電子書籍化しようと想った理由


 趣味で小説を書き始めて九年ほどが経ち、WEBに掲載するようになって八年。文章を書くことは元々好きだったけれど、小説を書いていて「楽しい」と想えるようになったのは随分後のことだった。

 需要のある設定で話を書けばそれなりに読まれるだろうし、ファンも増えるだろう。けれど初めから需要のある作品を書きたいとは思わなかった。むしろその逆で、ありきたりな話を好まない読者向けの話が書きたいと想った。自分の想うまま、個性を貫いて物語を綴ることが自分の中の信念だった。

 そんな需要の低い作品を見つけて読んでくれる人がいることは、私にとっては奇跡のようなことで、一人でも読者が増えれば増えるほど間違ってなかったと自分に言い聞かせてまた次に進む。

 書き手はどうしてもレビューや読み手の感想を欲しがる生き物だ。どんな些細なことでも感想が届いたら嬉しいし活力になる。だからそれがないと自分の作品がまるでダメなんだと思い込んでしまう。そうやって負の感情に振り回されて手を止めてしまう書き手は多いだろうし、誰だって一度はその壁にぶつかるんじゃないだろうか。

 そして誰だって書籍化という夢を一度は見るだろう。プロの人に認めてもらって、受賞して、書籍化!なんて流れが一番理想だけれど、本当に現実は厳しいと叩きつけられる。

 プロの人に認めてもらい書籍化することだけがゴールなのか。

 そう考えて、無理なら潔くその道を諦めて自分を認めてあげようと想った。今の世の中、無料で電子書籍化出来てしまうのだから、想い入れのある作品を素敵な表紙で飾ってもらって形にしてしまおう。
売ることを目的とするのではなく(そりゃ一冊でも売れたら嬉しいけれど)、そうすることが自身への長年のけじめになると想った。

 そしてそう想わせてくれたのは夫の一言。

『プロに認めてもらうんじゃなくて、自分で自分に価値を加えていこう』


 その言葉を聴いた時、心の中のわだかまりみたいなものがすとんと剥がれ落ちた。ああ、自分を認めてあげていいんだって想った。

 一つの物語を完結させることは簡単なことではない。それを何作品も書き上げて、それでも自分の中で胸を張れる作品はたった二つしかない。勿論、書き上げた時はいつも全力だった。けれど振り返って読み返すと、力不足だったと想ってしまう。今ならこう書けると、自分を超えたくなってしまう。

 そんな作品を誰かが褒めてくれても、自分が納得出来ないならば形には残せない。だったら、そのたった二つを、妥協せず、素敵なイラストレーターさまに表紙を飾ってもらって残そうと決めたのだ。

 そして決めてからの作業は、もう果てしなく挫折しそうになったけれど、素敵な表紙と共に発売出来る日は、もうすぐそこまで来ている。





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