築地書館

日本列島の自然の成り立ちや、身近な自然の驚異である人体、一輪の花の形態から数億年に及ぶ…

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日本列島の自然の成り立ちや、身近な自然の驚異である人体、一輪の花の形態から数億年に及ぶ昆虫と植物の共進化に思いを馳せるガーデニングなど、生物学、生態学、地球科学、自然史、環境政策に関する書籍を1953年から出版する会社です。人間社会と自然の関わりを考える歴史書も。

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    築地書館社員が語る、日常のあれこれ話です。(月1回予定)

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土と脂―編集部より

質の良いホウレンソウやニンジンには、質の悪いものの4倍の栄養がある。 アメリカの子どもたちは、米国史上初めて、親より寿命が短く不健康な生涯を送ると予想されている。 これらはともに、本来食べものに含まれる微量栄養素や ファイトケミカルといった健康維持に必要な成分の不足を示している。 その原因は、近代農法が、化学肥料や耕起によって、土壌生物と植物の協力関係を絶ってしまったからだ。 土壌生物の力を取り戻すには、不耕起・被覆作物・輪作を柱とする環境再生型農業が重要だと、 取材を

    • 土と脂―訳者あとがき

       本書は、デイビッド・モントゴメリーによる土と農業と人間の関係を探求する著作の第4作であり、アン・ビクレーとの共著としては『土と内臓』に次ぐ2作目となるものだ。  最初の『土の文明史』は、土壌の肥沃さと文明の盛衰興亡との関係を明らかにし、土壌を荒廃させた文明が滅亡することを示した。初の共著である2作目『土と内臓』では、植物の根と人間の腸の類似性に注目し、どちらにおいても微生物が栄養の取り込みと免疫に、ひいては植物と人間の健康に重要な役割を果たしていることを明らかにした。植物

      • 土と脂―序章──「土壌の健康が食物の質に影響する」は本当か?

         ほとんどの人は友人や家族と食卓についたとき、土のことなど考えない。だが考えるべきなのだ。みんな、新鮮なモモが山盛りのしょっぱいポテトチップスより健康的であることを知っているが、健康に対するもう一つの側面は見失われがちだ。つまり、そのモモに何が含まれていて、どのようにしてそこまでやってきたのか──食べものをどう育てているのかだ。  何を食べるべきだとか何を食べてはいけないとかいう扇情的な見出しが世の中にはあふれているが、普通の食料品店のニンジンは、私たちの曽祖母がその子ども

        • 土と脂―目次

          序章 「土壌の健康が食物の質に影響する」は本当か? 土壌生物がもたらす作物の健康 健康な土と良い食べものをつなぐ科学的な根拠 ジャンクフードの下に隠された飢餓 第1章 健康というパズルの重要なピース 食べものの役割に関心が薄い医学 「正しい食べもの」がかつて含んでいた栄養 収量という罠 隠れた飢餓─親より寿命が短くなるアメリカ人 食べものの栄養素密度を予防医学として考える 土壌の健康を通して農法を考える 土 SOIL 第2章 人は岩でできている 店頭のニンジンとホウレン

        土と脂―編集部より

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          土と脂―書影

          土と脂―書影

          書籍編集経験者を対象に正社員を募集します(2024年8月)

          1. 仕事内容 募集職種 書籍編集 職種内容 書籍編集業務を一貫して手掛けていただきます。業務の流れは、下記のとおりです。 企画を立案し、編集会議に提出します。 著訳者への執筆依頼。 原稿入手。原稿整理。レイアウト。 校正(外部校正あり)。 原価管理。ページ数、資材のコスト管理をしていただきます。 書名立案。装丁デザイン原案の立案(装丁自体はデザイナーに依頼)。 刊行後のSNSでの情報拡散、著者イベントなど。 2. 給与、待遇 給与 当社規定により決定します。 休暇 完全週

          書籍編集経験者を対象に正社員を募集します(2024年8月)

          姫田忠義「越後奥三面 山に生かされた日々」雑感

          日本列島でさまざまな生業について暮らす人びとの記録を多くの映像作品として残してきた姫田忠義+民族文化映像研究所の企画作品だ。 20世紀末に、ダムの湖底に消えることになる朝日連峰に抱かれた山の集落である奥三面(おくみおもて)の村人たちの生活を、村に住み込んで映像民俗学の映像作家、姫田忠義が映像に収めている。村の生活の豊かさと村人たちの生活技術の高さに圧倒された2時間半だった。 冬は4メートルの雪に埋もれるので、郵便さえ途絶する。150人ほどが暮らす集落は各戸が孤立しないよ

          姫田忠義「越後奥三面 山に生かされた日々」雑感

          一寸の虫にも魅惑のトリビアー編集部より

          サクッと読める名前の由来から、地球温暖化、外来種の分布拡大、シカの食害など考えさせられるトピックまで、 思わず人に話したくなる虫知識が満載。 体のつくり・翅の色・行動など目に見えるものも、染色体や生殖器の構造など目に見えないものも、 それは虫たちの小さな体にきらめく進化の結晶。 時に払い除けられてしまう虫たちも、限られた命と環境の中で必死に生きています。 アリジゴクの勢力争い、ザトウムシの地理的変異、トンボの翅色多型、 ゾウムシの長い口吻、チョウの交尾栓、クモの円網――。

          一寸の虫にも魅惑のトリビアー編集部より

          一寸の虫にも魅惑のトリビアーはじめに

          本書は朝日新聞鳥取版に2019年5月から2023年3月まで約4年間にわたり月に1回「虫にまつわるエトセトラ」というタイトルで私が連載した昆虫やクモに関するエッセイを母体としている。その連載にあたり、私は市販の図鑑や書籍に散見されるありきたりな解説記述ではなく、私自身の研究・経験に基づく話題や、その「種(しゅ)」の分類や生態や進化についての研究されてはいるが世間ではまだあまり広くは知られていないと思われる話題を選んで紹介することを試みた。 私の第一の専門はクモガタ類に属するザ

          一寸の虫にも魅惑のトリビアーはじめに

          一寸の虫にも魅惑のトリビアー目次

          はじめに 鳥取県の地図 4月 交尾栓 ─ギフチョウ 単独性から真社会性への移行を示すハチ─ホクダイコハナバチ ファインマンさんゆかり(?)のヤスデ─ミコシヤスデ 100年ぶりの再発見─スズキダニザトウムシ 5月 巣穴の攻防─ハマベウスバカゲロウ 同胞種間の繁殖干渉─ナミテントウ 派手な色をした大型ヤスデ─アマビコヤスデ 奈良公園のシカが変化させたイラクサに適応─アカタテハ 染色体の地理的変異と交雑帯─イラカザトウムシ 6月 東亜・北米東部型隔離分布─マメザトウムシ 鳥取

          一寸の虫にも魅惑のトリビアー目次

          一寸の虫にも魅惑のトリビアー書影

          一寸の虫にも魅惑のトリビアー書影

          武蔵五日市駅の裏山を歩く

          初夏の清々しい陽射しに誘われて、新宿から中央線、青梅線、五日市線を乗り継いで1時間半で着く武蔵五日市駅の裏に広がる深澤集落から南沢山に登った。 道端には安政4年の銘がある道祖神や、庚申塔が立っている。江戸時代後期から20世紀初めまでは、林業と養蚕で栄えた地域だ。目指す南沢山は、檜原街道と青梅街道をつなぐ金比羅尾根のすぐ横にピークを持つ山だ。武蔵五日市の町のすぐ上にありながら、金比羅尾根を使って御嶽神社や青梅方面にもアクセスがいい集落だ。秋川を秋留台地から下れば多摩川本流にも

          武蔵五日市駅の裏山を歩く

          スザンヌ・シマードさんの苦渋に満ちた講演を聞く

          5/27、広尾の聖心女子大学の講堂で、ブリティッシュコロンビア大学(UBC)の森林生態学者シマード博士の講演を聴く機会があった。 森林土壌の、樹木と土壌微生物のパートナーシップが、根圏での1対1の関係だけでなく、多様な樹種と多様な菌根菌が森林でネットワークを作っているということを提唱した科学者だ。そうした仮説をどのように思いつき、どのようにその仮説を証明していったのかの講演だと思っていた。 しかし内容は、森林生態学者レイチェル・ホルトさんとともに、日本の国土面積の数倍の広

          スザンヌ・シマードさんの苦渋に満ちた講演を聞く

          ザトウムシーはじめに

          ザトウムシは山地の森の中で人知れずひっそりと生きているマイナーな動物である。私はあるきっかけでこの虫に魅せられ、高校生の頃から50年以上この虫を研究してきた。 この動物は移動力が乏しいために種分化(しゅぶんか)や進化、生物地理学などの研究には非常に面白い研究材料である。 機会があるたびにけっこう宣伝しているのだが、この動物を自分で研究してみようという若い人がなかなか現れない。 図鑑がなくて名前を簡単には調べられないことがその一因だとは承知しており、3年前に大学を退職してから

          ザトウムシーはじめに

          ザトウムシー目次

          はじめに 第1章 ザトウムシとは 1 体のつくり(クモとはどこが違うか) 【コラム1】 ザトウムシという名前の由来 2 4つの亜目と各科の特徴 【コラム2】 スベザトウムシ亜科とフシザトウムシ亜科 【コラム3】 フシザトウムシ亜科分類の問題点 3 古生代から脚は長いまま 第2章 1年をどのように過ごすか 1 越冬方法 2 幼体と成体の区別 【コラム4】 雌が早熟 3 捕食者だが広い餌メニュー 【コラム5】 ザトウムシのウンチ 4 どのように呼吸するか 5 室内での飼い方

          ザトウムシー目次

          ザトウムシー書影

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