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新卒一括採用は変わらない

新年度になり、各社一斉に入社式が行われました。これは、新卒一括採用の日本ならではの風景なのでしょう。
新卒一括採用をやめるべきだ、という人がいますが、私は新卒一括採用にもそれなりの合理性があるので、やめるべきではないし、原則は変わらないと思います。
新卒一括採用はポテンシャル採用なので学生が就職する事は比較的容易ですが、そうでない場合には即戦力採用なので、学生が就職する事が困難で、若年層の失業率が非常に高くなる可能性があります。
企業は「経理の経験者募集」といった募集をするので、経理の仕事の経験が無い学生は、経験者の転職希望者と競争しても勝てないのです。
新卒一括採用でジェネラリストになれば、様々な仕事を体験して自分の得意分野を見極める事ができますが、スペシャリスト採用だと、最初に就いた仕事しか経験しないので、他の仕事に適性がある可能性を捨てることになります。
最初に運良く採用された企業で経理を担当すると、営業の募集があっても採用されないので、一生経理の仕事をすることになります。日本企業であれば、営業に適性がある事に気付けたかも知れないのに。
日本人がリスク回避志向が強い事は、日本に新卒一括採用が向いている理由の一つでしょう。働く側は「新卒で入社して定年まで雇ってもらえる」という安心感が得られます。したがって、終身雇用でない会社は採用に苦労するでしょう。
日本人が恥の文化を持っていて真面目に働く、という事も、新卒一括採用向きです。雇う側は「終身雇用を保証すると労働者がサボる」というリスクが小さいでしょう。恥の文化が無い国だと「サボってもクビにならないならサボろう。窓際族になっても恥ずかしく無いのだから」という労働者が多数いるかも知れませんが。
新卒一括採用をしない企業は、転職者を採用する事になりますが、それは容易な事ではありません。
優秀な人材は最初に入社した会社で優遇されるので転職したいと思わない一方で、最初の会社でうまくいかなかった人は転職したいと思うでしょう。したがって、転職希望者は(優秀な人も少しはいるでしょうが)期待値として平均より優秀で無いと思われます。それならば、新卒一括採用した方が優秀な人材が確保できるでしょう。
野球選手や為替のトレーダーなどは、転職する場合も多いですが、それは社外の人からも能力が見極め易いからでしょう。経理の仕事の能力を社外の人が見極めるのは容易では無いので、経理の経験者の転職を受け入れる会社は、採用選考をよほど工夫しないと、新卒採用の方が良かった、という事になりかねないのです。


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