十二色あるうちの一色に留まらず
ミスチルことMr.Childrenの音楽に出会ったのは、まだ私が幼稚園かそのぐらいの歳だった頃に、初めて自身初のミリオンヒットとなった「CROSS ROAD」という曲をカセットテープ越しに聴いた時からだ。
その後は「innocent world」や「Tomorrow never knows」など、もはや有名といっても過言ではないシングル曲を中心に、間接的に聴く機会があった。
それから自分でもレンタルショップに通ってはCDを借りて聴く年代となり、なかでも一番のお気に入りと言っていいくらい聴き込んだのは「Any」という曲である。
一番印象的に焼き付いていたのは、中学3年生の時に通っていた塾からの帰り掛けで、主に夏期講習を終えた後帰宅する道中でよく聴いていたのを思い出した。
コード進行の展開はもちろんのこと、特に夕日が沈みかける時間帯の大通りで信号待ちしながら「交差点 信号機 排気ガスの匂い…」という歌詞がイヤホン越しに両耳に流れてくると、それだけでもリアルすぎて情が込み上げてくるものであった。
個人的にはこの曲だけが、中学生だった頃から高校生の間で流れていた「Sign」や「しるし」に「HANABI」など、当時人気ドラマの主題歌として話題沸騰となっていたそれらの曲と比べても、自らの口では到底表しきれない何かが逸脱しているような気がしている。
強いて言うならば、メロディと歌詞を通じて聞き手と対話している感覚に浸ってしまうのがミスチルの魅力だと勝手に解釈しているが、この「Any」という曲だけはボーカルの桜井氏自身が歌詞の中に潜むもう一人の自分と対話している、そんな感覚に不思議と陥ってしまうのだ。
それゆえ、シングルCDのジャケット写真を見ているだけでも情が揺れ動かされてしまうものである。
最近じゃ、いつかこんな風景をファインダー越しに撮影できたらなとつくづく思っている。
少なくとも、いつまでも同じ景色しか見えない場所に留まっていては、いつか多種多様に広がっている可能性を気づかないうちに捨ててしまうことになるだろう。
私も年齢を重ねていく毎に、時が経つのが早くなっていくのをヒシヒシと感じるようになってきたのも事実である。そしてそのスピードは今後、自分の知らない間にますます加速していくに違いない。
「人生100年時代」だと何処かの誰かさん達が口を揃えて豪語するも、何もしないで無駄に過ごすとか一日一日を大事に生きていくなどといった、在り来たりな言葉と方法でで纏められるような日々を送り続けたいとは、正直一つも考えたくもない。
すでに用意された12色あるうちの1色に留まらず、誰にも表すのが難しい唯一無二という色を自ら探してはやがて手にして、これまでとこれからをまた描き足していけたらいい…なんてことを私は今でも一部屋の片隅で考えている。
最後までお読みいただきありがとうございました。 またお会いできる日を楽しみにしています!