先手を打ったつもりが、裏目に出てしまった話
2021年4月末日、夕方に仕事を終えるとすぐさま、職場近くにある喫茶店に向かった。
翌月から私は引っ越しに伴い、転居先近くにある駐車場のうちの1スペースを借り始める。そのための契約の手続きを行うべく、申込先である仲介業者のHさんとそこで会う約束をしている。
思えば、申し込みから契約成立までに一ヶ月近くと、随分と長くかかってしまった。当初予定していた計画であれば、下旬ごろまでには一通りの手続きを済ませておきたいところであった。
使用開始目前になって、双方ともばたついてしまわないように、私は先手を打ったつもりだった。しかし1、2週間経過しても契約の目処が立たず、月を跨ぐ寸前までかかってしまうとは、想定外としか言いようがない。
契約の申し込みについては、私からHさんにメールを通じて、その旨の文面を送信していた。しかし1、2日経ってもまともな回答が得られず、刻一刻と日が過ぎていくことに焦りを覚える。
(果たして、この会社に任せて大丈夫だろうか…?)
そう思いつつも、再三にわたって催促をおこなっていた。これでもし応答がなかったら、別の業者さんに依頼するつもりでいた。
サイトで確認したかぎり、私が申し込みを入れている場所には、もう一つの仲介業者が絡んでいる。これ以上進展がなければ、最悪の場合、Hさん率いる業者での申込みを破棄して、別のところに依頼をかけようとも考えていた。
だが今になって振り返れば、仮に別の業者に変えたところで、状況は何一つ変わらなかったと思う。その核心に行き着いたのが、Hさんから転送という形で送られてきたメールでのやりとりであった。
私が夜な夜なもどかしくしていた裏で、Hさんは何やら、私がこれから借りようとしている駐車場の管理会社と揉めていたらしい。転送されてきたメールを介して、担当しているA氏に催促する旨の文面で、それが明らかになった。
「いやータダノさん、今回は色々とご迷惑をかけて申し訳なかった!」
私はその喫茶店に入り、Hさんとお会いした。そして今に至るまでの出来事や、手続きが遅くなってしまったことの理由を聞いたのだった。
A氏は、再三に渡ってHさんからの催促を長らく放置していたのである。明らかに不手際を起こしているにも関わらず、謝罪の言葉すらない。
ゆえに、一連の対応について真摯に受け止めるどころか、上長に気づかれるまでしらばっくれていたそうだ。
手続きが遅くなった原因が、Hさんには何一つなかったことに対して、私は改めて安堵した。とはいえ、事が大きくなるまで何故ほったらかしにしていたのか、その詳しい真相までは聞けなかった。
だがHさんの口から、A氏は派遣の人間であることを告げられると、私はなぜか少しだけ頷けたのであった。
数日後、郵便にて契約書を含めた書類が私の元に届いた。これで晴れて、新しい駐車場で愛車を停められるようになった…のだが。
何れにせよ、たった一つの契約を取り交わすだけなのに、私にとって今でも忘れ難き出来事となってしまったものである。
これ以上、同じようなトラブルに巻き込まれるのは御免被りたいが。もしかしたら最低でもあと一回ぐらい、それも忘れた頃に遭遇するかもしれない。
最後までお読みいただきありがとうございました。 またお会いできる日を楽しみにしています!