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政治講座ⅴ864「名機ゼロ戦よ再び大空を飛べ、三菱重工・三菱航空機にエールを送る」

MRJが大空を飛ぶ姿を一日千秋の思いで待った。開発を諦めずに今までのノーハウを生かして更なる名機を作って欲しい。あのゼロ戦から始まる名機を再び蘇る事を切に願う。思えば皇紀2600年から命名された零式戦闘機の誇りを見たい。知られざる本質は、国家プロジェクトのあり方や行政機関の整備方針である。日本の旅客機開発に困難をもたらす最重要課題は、こうした先端技術ではなく、 「国による認証制度」 の問題なのだ。報道記事では「失敗」と形容しているが、失敗があっての成功なのである。再挑戦を望む。

     皇紀2683年2月20日
     さいたま市桜区
     政治研究者 田村 司

H3ロケット開発遅れ・ジェット旅客機挫折は日本の有能「理系人材」不足が原因 科学技術立国神話はもはや幻想だ

磯山 友幸 によるストーリー • 7 時間前

H3「失敗ではない」と言ったところで

またしても日本の科学技術「神話」が揺らいでいる。2月17日に予定されていたH3ロケットの打ち上げができなかったのだ。主エンジンには着火したが、続いて着火するはずの固体ロケットブースターが作動しなかった。システムが異常を検知して着火信号を送らなかったためという。

H3打ち上げ「失敗ではない中止」の説明会見を行うJAXA担当者
  JAXAライブ画像より© 現代ビジネス


新聞の中には「打ち上げ失敗」と見出しを立てたところがあったが、宇宙航空研究開発機構 (JAXA)の担当者は「失敗ではない」と言う。専門家からすると、異常を検知し設計通りに停止したのだから、「失敗」ではなく「中止」だということらしい。
「失敗」と配信した共同通信の記者がネット上で炎上し、「失敗は成功のもと」と発言した永岡桂子文部科学相も釈明に追われた。担当者からすれば「失敗」と書かれるのは沽券に関わるということか。また、「失敗」という言葉に反応したネット民も「日本は失敗するはずがない」という思い入れがあるのか。背後には日本の科学技術は世界に冠たる水準だという「神話」があるように思う。
だが、現実は、H3ロケットの開発も苦難の連続と言っていい。H3はJAXAが三菱重工業と開発中の次期基幹ロケットで、設計・開発段階から民間企業である三菱重工が主体的役割を果たしてきた。運用後には商業利用のための打ち上げを「受注」することを狙っている。いわば新発想の開発ロケットだ。
当初は2020年度に初号機の打ち上げを目指したが、問題が見つかって2020年9月になって延期を決定。2021年度中の打ち上げへと時期が変更された。ところが2022年1月になって再度延期。ようやく今回の打ち上げにたどり着いていた。ところが残念ながら今回も「中止」ということで飛ばずじまいだった。それでもJAXAは「2022年度中の発射を目指す」との姿勢を変えていない。

もはや日本の科学技術は世界有数ではない

残念ながら、われわれは、最近似た光景を目にしている。
同じ三菱重工が2月7日、長年開発を進めてきた国産初の小型ジェット旅客機「スペースジェット」(旧MRJ)からの撤退を発表したのだ。事業化を決めたのは2008年。当初は「MRJ」、「三菱リージョナルジェット」と呼んでいた。ところが2020年6月までに6回も納入を延期。新型コロナウイルスによる航空需要の激変もあって、開発は事実上、停止。ついに事業化のメドが立たなくなり、撤退を表明した。

「中止ではなく失敗」したMRJ  by Gettyimages© 現代ビジネス


いやいや、これは技術力の問題ではなく、商用運行に必要な「型式証明」の取得が予想以上に難しかったためだ、という声もある。市場が変化して事業化が難しくなっただけで、日本の技術力が低いわけではない、という人もいる。しかし、参入から1兆円を投じて製品を出せなかったという事実は重い。
三菱重工は2016年に大型客船事業からも撤退している。海外のクルーズ会社から受注した船の契約納期を3度も延長するなど度重なる引き渡しの遅延を起こした。造船所の現場に人材が不足するなど、社内の「知見」が足らなかったためだとされた。
結局、2400億円に及ぶ損失を出している。もちろん、これは三菱重工という1つの会社の問題では片付けられない事態だろう。日本の科学技術は世界有数という「神話」が崩れ始めているのではないか。

OECD平均よりはるかに低い理系率

「現在 35%にとどまっている自然科学(理系)分野の学問を専攻する学生の割合についてOECD諸国で最も高い水準である5割程度を目指すなど具体的な目標を設定し、今後5~10 年程度の期間に集中的に意欲ある大学の主体性をいかした取組を推進する」
2022年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2022」いわゆる「骨太の方針」にはこう書かれていた。岸田文雄首相が掲げる「新しい資本主義」に向けた改革の柱のひとつとして盛り込まれた。日本の科学技術力を支える理系人材を育てることが喫緊の課題だ、というわけだ。
実はこのベースとなる提言が、政府の「教育未来創造会議」から2022年5月に「1次提言」として出されている。タイトルは「我が国の未来をけん引する大学等と社会の在り方について」である。そこには、「人材育成を取り巻く課題」として、少子化の進行などと共に、「高等学校段階の理系離れ」「諸外国に比べて低い理工系の入学者」などを挙げている。
高校で理系を選択する生徒が2割にとどまっていること、学部段階の理工系入学者はOECD平均の27%に対して日本は17%であること、中でも女性は平均15%の半分以下の7%であることなどが指摘されている。
「骨太の方針」を受けて、教育未来創造会議は「工程表」を2022年9月にまとめている。そこには理系学生の割合を5割程度に引き上げることで、「高専を含めて毎年30万人程度を輩出する」という目標をいの一番に掲げた。

あまりにも「遅まきながら」

もっとも、残念ながら、そのための具体策は乏しい。学部の設置要件の大胆な緩和などを掲げており、理系学部の新設への補助金の積み増しなどを行う方向だ。
また、極端に少ない女子の理系選択者、いわゆる「リケジョ」を増やすために、シンポジウムや大学の出前授業を行うという。少ない女子の理系志願者を増やせば、全体の理系学生が増えるという狙いだろうが、そのための「ジェンダーバイアスの排除など社会的機運の醸成」となると、それでいつになったら理系人材が輩出されるのか、と思ってしまう。
遅まきながらも政府が動き出したのは「理系人材不足」「技術者不足」が日本社会に影を落とし始めているからだ。
H3ロケットや国産小型ジェット機、大型客船を作るのに苦労している理由が、人材不足だけだとは言わない。だが、そうした高度な技術者、科学者を生み出す母数を人口減少の中でどう確保し増やしていくのか、これは日本の大きな課題であることは間違いないだろう。

なぜ長い間、日本で飛行機が作られなかったの?(またはそれが今や、盛り上がってきている理由)

  • 2016.06.29 18:00

日本技術力は世界から高く評価されており、車、電化製品、重機など、「Made in Japan」は世界にあふれています。しかしそんな中、意外なほど未進出の分野があります。飛行機です。

最近でこそ、三菱航空機の国産ジェット機「MRJ」や、ホンダの「ホンダジェット」などが登場しましたが、どうしてこれほど長い間、日本では飛行機産業が根付かなかったのでしょうか。

その疑問の答えと、国内飛行機産業の現況について、航空機イノベーションを専門にしている東京大学大学院の鈴木真二教授がIBMのWebメディア無限大(mugendai)で語っていましたよ。
教授いわく、日本で飛行機産業が根付かなかった大きな理由の1つが、第二次大戦後にあるそう。アメリカの占領下に置かれた日本は、航空機の研究や開発を禁止されてしまったのです。
禁止されたのは期間にすれば7年だったものの、その頃はちょうど航空機技術がプロペラ機からジェット機に転換した大事な時期。そのため戦時中に高度な戦闘機などを製造していた日本でも、この波に乗ることができなかったのだとか。
それでは、ここに来て「日本産飛行機」の機運が盛り上がってきたのはなぜでしょう。
その理由の1つが、日本のブランド力。車や新幹線など、世界で信頼されている日本の「乗り物技術」により、航空機にも日本製を求める声があるのだそうです。その証拠に、MRJは実物の機体がないにも関わらず、多くの注文があったのだそうですよ。
その他にも、「航空機開発に欠かせないのは経済学」「故障しても落ちない飛行機」など、興味深い話が続く鈴木教授のロング・インタビューは、無限大(mugendai)でお楽しみください。ource: 無限大(mugendai)(渡邊徹則)

国産ジェットを「1兆円空回り」に終わらせた三菱重工の"変に高いプライド"6度の開発延期でも、反省の色なし

PRESIDENT Online

「技術的なブランクへの心配」は当初からあった

半世紀の溝は埋められなかった」——。小型ジェット旅客機「スペースジェット」(SJ、旧MRJ)事業開発を凍結することになったとき、三菱重工業の幹部は肩を落としながらこう漏らした。

三菱重工がスペースジェットの開発に着手したのは2008年。経済産業省が音頭をとり、官民で「日の丸ジェット」を実現しようと立ち上げた。「国内市場が縮小、若者の車離れが進む中、自動車一本足の産業構造だと日本のものづくりはおぼつかない」(経産省幹部)。

自動車1台に使う部品数は2万~3万。航空機になるとその数は2桁増える。それだけにその幹部は、「産業の裾野の広さは車とは比べものにならない。雇用確保にも大いに貢献する」と期待していた。

そんな大きな期待を持ってスタートした日の丸ジェット開発だった。しかし、当初から不安がなかったわけではない。民間ジェット機の開発は1962年の「YS11」以来のこと。YS11は1973年に生産を終えていた。それだけに三菱重工の幹部は「技術的なブランクへの心配がなかったかといえばウソになる」という。残念なことにその不安が的中してしまった。

ANA調達担当幹部「戦闘機を造っているんじゃないんだぞ」

これまで6度も納期を延期するなど累計1兆円の開発費を投じながら空回りが続き、新型コロナウイルス禍の打撃で窮地に陥った。「技術への過信がなかったかといえば、それはないとはいえない」(三菱重工幹部)。自前主義にこだわり傷を深くした姿は、三菱重工、ひいては日本の製造業に重い教訓を投げかけた。

三菱重工が航空機製造の経験が薄いとは単純にはいえない。米ボーイングなどとは常に取引がある。しかし、納入するのは部品が主力で、約100万点にも及ぶ航空機製造で部品の調達や工程管理は、部品メーカーの発想では限界があった。

「こんな狭いラゲッジスペースはあり得ない」「こんな堅いシートは使えない」。経産省の要請で初号機の受領を待つ全日本空輸(ANAホールディングス)の調達担当幹部はSJの立ち会いで何度も三菱重工の開発陣に声を荒らげた。「戦闘機を造っているんじゃないんだぞ」(同)。

防衛省の戦闘機などの製造も請け負う三菱重工だが、予算や納期は民間航空機のほうがシビアだ。乗客のさまざまなニーズを反映させないといけない民間航空機の開発は「官公庁向けの航空機よりも数倍も手間がかかる」(同)ものだ。

開発の足を引っ張った「変に高いプライド」

中国、韓国勢に追い上げられ、青息吐息だった造船業の復権を狙って立ち上げた大型豪華客船事業でも三菱重工は2400億円もの損失を計上している。特に豪華客船は「海に浮かぶホテル」とも呼ばれ、内装など凝った設計が要求される。「駆逐艦や巡洋艦を造っていた感覚でやられたらたまらない」(海外大手船会社の担当者)。

結局、船主から何度も設計変更を迫られ、なんとか完成にこぎ着けたが、赤字を垂れ流したまま客船事業からの撤退を余儀なくされた。

SJの開発では、三菱重工の技術者の「変に高いプライド」も開発の足を引っ張った。相次ぐ開発の延期に自前主義を捨て、打開を目指すべく着手から10年が経過した2018年、カナダの航空機大手などから外国人の技術者を多数集めた。しかし、三菱重工の技術者とそりが合わず、現場で対立が続いた

日当10万円を超える「お雇い外国人」を雇ったものの開発のスピードは上がらず、相次ぐトップの交代で現場の士気は落ちていった

戦艦「武蔵」や「零戦」を生んだプライドは崩れ去った

SJの開発と同時期にブラジルの航空機メーカー、エンブラエルも次世代の小型ジェット旅客機の開発を進めていた。民営化したこともあり経営や財務状態は安定していなかったが、実際に開発に先行したのはエンブラエルだった。苦戦する三菱重工を尻目に2018年に初号機の納入にこぎ着けた。
一方のSJは現在も商業運航に必要な認証の「型式証明」を取得できていない。すでに6度も開発を延期、2008年当初1500億円としていた開発費は1兆円規模に膨らんだ

事業を担う三菱航空機は2020年3月期に4646億円の債務超過に陥った。三菱重工が債権放棄と増資引き受けに応じて資金支援したが、新型コロナ感染拡大で航空機需要が蒸発、事実上の事業断念に追い込まれた

開発力が落ちている」——。SJの開発を引き受けた宮永俊一会長はグループの会合でこう漏らした。豪華客船に民間航空機戦艦「武蔵」や「零戦」を生んだプライドは跡形もなく崩れ去っていく

造船は規模に勝る中韓勢に水をあけられ、昨年12月には専業の大島造船所に長崎造船所に2つある工場のうち主力の香焼工場を売却することを決めたのだ。

なぜ国産旅客機「MRJ」は失敗したのか 現場技術者に非はなかった? 知られざる問題の本質とは

1/9(月) 9:11配信

 YS-11以来の国産旅客機として期待を集めたスペースジェット(旧称MRJ)は、5回の計画遅延を繰り返した末、2020年10月にプロジェクトの凍結が発表された。既に5機の試作機が飛行試験のために渡米しているが、飛行試験は中断され、そのうち1機は航空機としての登録も抹消された。 【画像】えっ…! これが航空会社の「年収」です(8枚)  MRJの計画は、もともと経済産業省と国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託・助成事業「環境適応型高性能小型航空機」として始まった。三菱重工は、2003(平成15)年度から主契約企業となって事業を推進した。プロジェクトには宇宙航空研究開発機構(JAXA)なども参画しており、これは文字通り 「国家プロジェクト」 だった。  JAXAをはじめとする専門機関は、コンピューターを活用した先進的設計手法や、複合材部品の新しい製造技術など、基礎技術に関わる支援を行った。しかし製品開発はその先にあるもので、技術開発はゴールではない。旅客機が製品になるには、量産品として型式証明が取れなければ意味がないのだ。  MRJプロジェクトの遅延は、ほとんどがこの型式証明の取得手続きに関わるものだった。事業凍結への決定打となった大幅な5回目の遅延も、型式証明を得るための大規模な設計変更が理由である。  専門メディアによると設計変更は900件以上に及び、設計荷重の見直しや、各種システムの系統設計に関わる変更など、基本設計の段階に戻ってやり直すような内容がいくつも含まれている。これは卒業論文の提出時に「課題設定と調査からやり直しなさい」といわれたようなものである。

型式証明とはなにか

 航空法には、航空機は耐空証明がなければ飛んではいけない、と書かれている。国の審査で「安全な航空機であることの証明」を受けるのが耐空証明で、各国が定める耐空性の基準を満たさない航空機は、原則としてその国で飛ぶことができない。  耐空性の基準は、日本では耐空性審査要領、米国ではAIRWORTHINESS STANDARDSとして文書化されているが、世界中で米国と欧州の基準を踏襲しているので、実質的に同じ内容となっている。  型式証明は、量産航空機に包括的な証明を与える制度である
・図面や計算書などの設計プロセス
・製造工程や品質管理などの生産能力
・試作機で確認される性能や飛行特性 などを国が審査し、その型式に対して証明を与える。
型式証明を得た航空機は、適正に設計・製造されていることが認められているので、機体個別の耐空性審査は、製造記録や整備記録などの確認で済ませることができるのだ。  
販売先の国で型式証明を得られなければ航空機は製品として意味がない。そのため、三菱MRJでは、国土交通省航空局(JCAB)の型式証明と同時に、連邦航空局(FAA)の証明を取得する方針を採った。しかし、日本の企業が日本で開発製造する以上、設計や製造の過程を審査して製造国型式証明を発行するのは、あくまで日本のJCABである。

誰が審査するのか

 耐空性の基準が文書化されているといっても、設計が基準を満たしているかどうかは、その文章だけでは判定できない。 「○○の場合でも□□の状態にならないこと」 と書かれていても、「○○の場合」とされる条件や、その設計が「□□の状態」を防止できると認められる条件は明確ではないからだ。その判定は、過去の事例などで培った知見に基づき、行政側の審査員が行う。  機体ができてから不合格では困るので、メーカーは設計段階から審査当局と密接に連絡を取り、確認しながら作業を進める。MRJの場合は三菱がJCABと一緒に開発を進めたはずだが、JCABの審査員も基準の解釈に「頭を悩ませた」という。  日本では、メーカー以上に、審査する側に経験やノウハウがないのである。そして、できあがった試作機を米国に持ち込んだ2016年の終盤、FAAは「この設計では型式証明を認めない」と判定した。三菱とJCABが進めてきた設計が、FAAの審査員から不合格の判定を下されたのだ。  三菱でも型式証明が難関であることは承知しており、外国人技術者の採用や経験者の任用などの施策を講じたが、それも功を奏さなかった。型式証明審査は時を重ねるごとに厳しさを増していて、過去に認められた設計が現代では通用しないことも多い。ボーイングなどでも、新しい旅客機を既存の737や777の派生型として開発することが多いのは、新型機としての型式証明が不要で、変更部分の審査だけで済むためだ。  JCABはMRJの審査を行う航空機技術審査センターを2004(平成16)年に名古屋に設置し、FAA職員を招いた講習も受けたといわれるが、膨大なノウハウが必要な審査能力が一時の研修で体得できるわけもない。FAAに助言を求めても、FAAは外国当局の審査には関与しない。あくまでJCABが製造国の責任として型式証明を発行しなければいけないし、FAAは輸入された機体を米国の基準で審査することになる。
つまり、MRJが挫折した理由の根本は、 「日本という国家が、航空機の安全を国際的に担保する能力に欠けている」 ことだ。

ホンダジェットは米国製

 難航するMRJの傍らで小型ジェット機ホンダジェットの成功が各所で報じられたため、 「なぜ自動車メーカーのホンダが成功したのか」 という声も多く聞かれた。しかしホンダジェットは日本の国産機ではない。製造会社は米国のノースカロライナにあるHonda Aircraft Companyという会社であり、米国で設計開発された正真正銘米国製の飛行機なのだ。  
日本で開発したのでは外国で売る航空機はつくれないことを、ホンダは知っていた。また、ホンダが日本で航空機を製造するなら、JCABから航空機製造事業者の認定が新規に必要で、この審査に合格するのも大変だ。
つまり、 「日本製ではない」 ことがホンダジェットの一番大きな成功理由だ。  もうひとつ興味深い存在として、中国製の旅客機C919がある。エアバスA320やボーイング737に競合するクラスの機体で、2022年に中国国内の航空会社に引き渡しが始まっている。C919はもちろん中国航空局の型式証明を受けているので、中国国内で商業運航が可能だが、FAAの型式証明は取得していない。開発元のCOMACは、あえて「FAAの型式証明を取得しない」選択をしたのだ。  C919がFAAの型式証明を取得しようとすれば、MRJと同様の困難に見舞われたかもしれないが、広大な国土を持つ中国は、国内だけでも十分な市場がある。米国の型式証明を必要としないのだ。

国家プロジェクトのあり方と航空機産業

 一方ではFAAの権威も揺れている。  ずさんな設計のために墜落が相次いだボーイング737MAXに関して、FAAによるボーイング社への審査が非常に甘かったことが調査で明らかになり、物議を醸している。FAAも神様ではないし、自国産業を保護したいという判断の存在も否めない。そのため、より安全な航空機の実現や、より自由で平等な国際市場の実現には、各国がオープンな場で情報を交換し、協力していくことが必要ではないか。  日本においても、経産省がプロジェクトを立ち上げる際、JCABの型式証明能力や、FAAの証明取得プロセスをどうするかといった問題が、十分に検討されたとは思えない。経産省とNEDOが実施したMRJに向けての技術研究は、高い付加価値を持つ製品実現のために必要な努力だが、日本の旅客機開発に困難をもたらす最重要課題は、こうした先端技術ではなく、 「国による認証制度」 の問題なのだ。  しかし、専門分野の研究や設計を担う現場技術者や、マーケットだけを見ている投資家や経営者では、こうした認識を持つのは難しい。特に日本では専門人材の流動性が低く、開発現場の実情から行政の制度までを、網羅的に知る機会は得にくい。  その結果、経産省/NEDOは市場や基礎研究だけを見て絵を描き、三菱はそれを足掛かりにして事業に取り組んだが、肝心の型式証明を手掛ける国交省は蚊帳の外という、驚くべき体制ができあがった。  これは「誰が悪い」という問題ではなく、国家プロジェクトのあり方や行政機関の整備方針など、日本という国の力が改めて問われるべき事例ではないだろうか。ブースカちゃん(飛行機オタク)

参考文献・参考資料

H3ロケット開発遅れ・ジェット旅客機挫折は日本の有能「理系人材」不足が原因 科学技術立国神話はもはや幻想だ (msn.com)

型式証明 - Wikipedia

なぜ長い間、日本で飛行機が作られなかったの?(またはそれが今や、盛り上がってきている理由) | ギズモード・ジャパン (gizmodo.jp)

国産ジェットを「1兆円空回り」に終わらせた三菱重工の"変に高いプライド" 6度の開発延期でも、反省の色なし | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)

なぜ国産旅客機「MRJ」は失敗したのか 現場技術者に非はなかった? 知られざる問題の本質とは(Merkmal) - Yahoo!ニュース

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