政治講座ⅴ691「中国におけるアップルの誤算と世界の歴史的疫病を俯瞰すると」
ここ数年、コロナ禍で「リスク分散」という言葉が胸に響く年が続いた。
企業の海外進出のリスク評価に関しては、歴史における疫病の発生確率・発生頻度などの分析が必要であろう。コロナ禍で企業活動には色々なリスクが伴うものであることが改めて示されたのである。
皇紀2682年12月15日
さいたま市桜区
政治研究者 田村 司
アップルが抱える「中国の面倒」―独メディア
Record China - 1 時間前
独メディアのドイチェ・ヴェレ中国語版は12日、「アップルが抱える中国の面倒」との記事を掲載した。
アップルが抱える「中国の面倒」―独メディア© Record China
記事は、「アップルのこれまでの成長は中国と無縁ではなく、2021年には中国が米国を抜き、iPhoneの最大の市場となった」としたほか、「中国はiPhoneの主要製造国でもあり、河南省鄭州にあるフォックスコン(富士康科技集団)はアップルのスマートフォン最大の生産拠点で、世界のiPhoneの70%を組み立てている」と紹介した。
一方で、「今年10月にフォックスコン工場で新型コロナの感染が拡大し、従業員が脱出して帰郷したため工場の稼働に影響が出た」と説明。「11月には新しく入社した従業員が待遇や防疫措置に不満を募らせたことで警官隊らと衝突、フォックスコン側は謝罪し、辞職を希望する従業員らの意思を尊重するとしたほか、補助金の支給も約束した」と伝えた。
その上で、「この騒動は中国のゼロコロナのジレンマを浮き彫りにした」と指摘。人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチの中国プロジェクトリーダーを務める王亜秋(ワン・ヤーチウ)氏が「中国当局による厳しい情報統制が、コロナに感染したら大変なことになるという誤った印象を与え、多くの従業員の心中に恐怖の種を植え付けた」とし、「工場の目的は金もうけであり、経営陣は従業員の医療や飲食などの問題に関心を持っていない」と述べたことを伝えた。
記事は続いて、最近論争になったもう一つの出来事としてiPhoneの機能AirDrop(エアドロップ)の制限に言及。「エアドロップはインターネットに接続していない形で、写真やその他のデータを他のiPhoneに送ることができるが、11月初めのアップデート後、中国版iPhoneではデフォルトでオフに設定され、オンにしても1回の時間は最大で10分でその後は自動的にオフになるようになった」と説明した。
そして、「来年からiOSのアップデートに合わせて全世界で実施されるとの情報もあるが、偶然にもアップルがこのアップデートを行う1カ月前に北京で発生した抗議デモでは、多くのユーザーがエアドロップで抗議スローガンを広めようと試みていた」とした。また、アップルのこうした措置に不満を抱いた中国人留学生らがカリフォルニア州のアップル本社前で1週間のハンガーストライキを行ったことを紹介。ある学生が「アップルは中国政府がわれわれ国民をコントロールするのを助けている」と指摘したことを伝えた。
この件については、セキュリティー・監視研究機関IPVMのアナリスト、Charles Rollet氏が「アップルの売り上げの大部分は中国に依存している。中国指導部の意向に及んだ場合、アップルには選択の余地はない」とする一方、「中国工場はアップルにとって非常に重要だが、それは当然、彼ら自身が作り出した境遇だ」と述べたという。
記事は、こうした面倒によるリスク分散を意識しているためか、アップルが生産ラインを中国から撤退させるとの報道が出ていると説明。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルが今月3日に、「アップルは一部の生産ラインの中国からの移転を加速する計画を立てており、サプライヤーに対しインドやベトナムなどでの組立をより積極的に検討するよう求めている」とし、サプライチェーン関係者の話として「鄭州工場での騒動により、アップルは事業を一つの国と結びつけることに、もはや安心できなくなった」と報じたことを伝えた。(翻訳・編集/北田)
中国の「大疫」流行は王朝末期の兆し
2020年04月29日 公開
2020年04月29日 更新
石平(評論家)
中国評論で名高い石平氏は、蔓延中の新型肺炎が政治的混乱と経済の崩壊を引き起こし、中国という国を再び「乱世」へと導く、と指摘する。近著『石平の裏読み三国志』より、三国時代と21世紀の共通点を解き明かす。
※本稿は、石平著『石平の裏読み三国志』(PHP研究所刊)より一部抜粋・編集したものです
王朝崩壊と疫病の大流行
中国の長い歴史のなかで、疫病の大流行は往々にして王朝崩壊と天下大乱の前兆であり、原因の一つであることがわかる。
最古の王朝の一つである周王朝の末期、「大疫」が流行したことは史書によって記録されているが、それは結果的に、周王朝の衰退とそれに伴う「春秋戦国時代」という中国史上もっとも長い大乱世の幕開けとなった。
三国時代、乱世の幕開けとなった後漢王朝の桓帝・霊帝の治世下では大規模な疫病が17回も起きたことが記録されている。こうした疫病の氾濫は結局、黄巾(こうきん)の乱の発生を誘発する要因の一つとなって、後漢王朝崩壊の遠因となった。
時代がさらに下って、漢民族がつくった最後の王朝である明王朝の末期、ペストや天然痘などの大流行で推定1000万人が死んだとされている。それが原因の一つとなり、明王朝は農民一揆によって潰された。
首都の北京が農民軍によって陥落した直後、明王朝最後の皇帝である崇禎帝(すうていてい)は、何と皇宮の裏の山で首吊り自殺をして悲惨な最期を遂げたのである。
昂ぶる「革命的気分」
そして、中国全土で大疫病の新型肺炎が流行しているとき、崇禎帝のことを取り上げた人物が北京にいた。北京大学教授の孔慶東である。
新型肺炎が猛威を振るっている最中の2020年2月1日、彼は自分のブログで何の文脈もなく崇禎帝の話を持ち出して、皮肉たっぷりの筆調で皇帝の首吊り自殺を揶揄した。
孔教授はいったい何のために、このタイミングで崇禎帝の首吊り自殺の話を持ち出したのか。彼は当然いっさい明言していないが、たいていの人は彼の意図を簡単に推測できた。
おそらく孔教授の脳裏には、明王朝崇禎帝の最期と、いまの中国共産党指導者である習近平のたどり着こうとする結末が重なって見えているのではないか。だからこそ、孔教授のブログはあっという間に全国で流布され、多くの人々の共感を得た。
なるほど、中国全国の多くの国民は、じつは習近平と共産党政権の破滅を心のなかで熱望しているのである。大疫病の中国で「革命的気分」は徐々に昂(たか)ぶっているようである。
圧殺はより大きな反抗を招く
こうしたなかで、武漢在住の一人の普通の市民の口から「共産党打倒」という驚きのスローガンが叫ばれた。新型肺炎拡散中の武漢市内の病院の惨状を撮影して、ネット上で流した方斌(ほうひん)という人物が公安警察に一度拘束され、のちに釈放された。
ところが2月8日、彼は再びネット上で自分の映像を公開した。そして、方氏はそのなかで何と共産党政権の非道を堂々と批判した上で、拳を上げて「共産党政権の暴政を打倒せよ!」と連呼した。
1989年の天安門事件以来、中国国内で「共産党打倒」が叫ばれたのはこれが初めてのこと。天下大乱と革命の時代の到来を予感させるような「鬨(とき)の声」が、一平民の口から発せられたのである。
中国という国がこれで「革命と大乱の時代」に一気に突入していくかどうかは、まだ確定できない。未曾有の大疫病が今後どう広がるのか、あるいはどう収拾されるかによって今後の展開は違ってくるし、中国共産党政権も当然、革命的反抗運動が起きるのを手を拱いて看過するようなことは絶対しない。
今後は、政権側の強力な取り締まりや粛清によって民衆の反抗がいつものように圧殺されていくのであろう。しかしそれは当然、民衆と政権との対立の解消を意味するものではない。
長期的な視点からすれば、圧殺はより大きな反抗を招くだけのことであって、中国共産党の独裁体制は今後、大きな不安と混乱のなかで揺らいでいくに違いない。一党独裁下の「安定」に取って代わって、造反と混乱の時代が確実にやってくる。
中国という国はこれから、まさに「乱世」を迎えようとしているのである。
危機転嫁に巻き込まれる恐れ
経済崩壊と天下大乱のなかで数億人単位の難民が発生してしまった場合、どれほどの難民たちが海を渡って日本列島に押し寄せてくるのか。
そして天下大乱になって軍閥林立のような乱世となった場合、日本という国を軍事的冒険のターゲットにしようとする軍閥がどれほどいるか。
あるいは中国共産党政権が国内の反乱による政権の崩壊を避けるために、日本や台湾などに対して危機転嫁の対外戦争を発動してしまう危険性はない、と言えるのか。
万が一、上述のようなことが一つでも起きてしまえば、日本の安全保障と平和は直ちに脅かされ、日本という国は否応なく中国大陸の天下大乱に巻き込まれていくこととなろう。
来るべき中国の大乱は、日本を含めた周辺国にとって決して他人事ではない。われわれはたんに高みの見物のような気分で、対岸の火事を眺めるようなことはできないのである。
疫病で見る世界史:なぜ中国がコロナウイルスの起点になったのか=飯島渉(青山学院大学教授)
結核をはじめとする感染症の流行は、約1万年前までさかのぼることができる。感染症は、農業のために森林を切り開き、野生動物を家畜化するといった生態系への働きかけ(開発)によって流行し、都市化で人口が集中したことがそれを助けた。感染症に焦点を当てた「疫病史観」で振り返ると、多くの人命を奪った感染症の流行が、歴史を大きく左右したことが分かる。
「コロンブスの交換」
1492年のコロンブスの新大陸到達以降、ユーラシア大陸とアメリカ大陸の間で人やモノが行き交う「コロンブスの交換」が進み、欧州から天然痘などの病原体がアメリカ大陸に持ち込まれた。これが免疫を持たなかった多くの原住民の命を奪い、現在のペルーに栄えたインカ帝国や、メキシコのアステカ帝国が弱体化。スペインによる植民地化を容易にした。帝国を滅亡させた陰の主人公は、病原体だったのである。
英国が植民地化したインドの地方病だったコレラは1817年に感染爆発を起こし、世界中に広がった。背景には、英国をはじめとする欧州諸国のアジア進出のほか、グローバルに拡大した商品貿易や移民、奴隷貿易があった。コレラ対策の切り札は上水道の整備で、それを目的として近代国家が生まれた。国家が大規模な水道整備に必要な多大な資金を集める役割を果たし、感染症対策への関与も大きくなっていった。
20世紀初期に米国から流行したインフルエンザ(スペイン風邪)は、米国が第一次世界大戦への参戦で兵士や物資を送り込む過程で感染が欧州に拡大。世界中で数千万人の命を奪った。その数は、第一次世界大戦で亡くなった人よりも多かった。
中国が起点のワケ
現在、世界を震撼(しんかん)させている新型コロナウイルスのような新興感染症が、中国を起点に登場しているのはなぜか。背景には、20世紀末から急速に経済成長した中国が、人類が1万年かけて経験した開発や都市化をわずか30年ほどの間で経験したことがある。「世界の工場」となった中国が、国際貿易や人の移動の面でそのプレゼンスを高めていることも、新型コロナ感染症をグローバルに拡大させる要因となった。
流行の中心地となった中国の武漢市や湖北省などでは、大規模なロックダウン(都市封鎖)が行われ、人々の活動を制限して感染症の抑え込みを行った。流行の中心が欧州や米国に移ると、多くの国で外出制限や学校の休校措置がとられ、世界はなかば鎖国のような状態となった。ほぼ同時にこれほど大規模な活動の制限が求められたことは、感染症の歴史においても、経済社会の歩みの中でも初めてのことである。
「疫病史観」は、私たちが想像している以上に、感染症が人類の歴史に大きな影響を及ぼしてきたことを主張する。考えてみると、農業化や工業化、さらに都市化という人類史の基本的なトレンドは、人々が集まって大きく生産や消費を行うことを前提としてきた。
しかし、今回の新興感染症は、私たちがそうした行動をとることを許さない。経済社会を成り立たせている基本的な活動が、感染症流行の要因になっているのである。現在、起きていることは、経済社会のあり方が根本から変わる転換点と後に位置づけられるのかもしれない。
(本誌初出 “疫病史観”の人類史 インカ帝国を滅ぼした天然痘 近代国家を生んだコレラ=飯島渉 5/26)(飯島渉・青山学院大学教授)
参考文献・参考資料
アップルが抱える「中国の面倒」―独メディア (msn.com)
中国の「大疫」流行は王朝末期の兆し | Web Voice (php.co.jp)
歴史でわかる経済危機 :疫病で見る世界史:なぜ中国がコロナウイルスの起点になったのか=飯島渉(青山学院大学教授) | 週刊エコノミスト Online (mainichi.jp)
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