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「天才とホームレス」 第16話 『教会とお祭り』

教会にはたくさんの「悩み」が集まるらしい。

僕らはあの黒人神父のところに頻繁に通うことになった。

教会にはいろんなところから人が集まっていて、おじいさんおばあさんが多かった。
それは僕らにとって都合がよかった。

おじいさんおばあさんも、子どもに負けないぐらい、友達になるのが上手い。
僕は助かった。

その人たちの悩みには、
あの町工場の小さな発明たちが役に立った(第8話参照)
数学女子のセナ、パソコンオタクのハマ、日焼け坊主のヤヘイの3人だ。

モニターとしても助かるということで、
あの着脱式セグウェイを押し車に取り付けた。

教会に入っていく老人たちの後ろを、
自立した押し車がついてくるという異様な光景が、
SNSで少しバズった。

そしたらそこに取材が何個か来たのだ。

そこで神父が提案してきた。

「お祭りをしまショー!」
にっこりと笑う大きな大きな神父。
僕らの肩をがっちりと抱く。
手は僕らの顔ぐらいデカい。

「僕らはゴスペルとライブペインティングをします。
 君たちも何かしてください!」

これは願ってもない話だ。
僕らにとってじゃない。
僕らと繋がってる他の会社にとってだ。

教会のおじいさんおばあさんは、
他の店や会社とも、どんどん繋げてくれた。
みんな僕らが来るだけで喜んでくれて、頼む前からいろいろと紹介してくれるのだ。
どっちがビジネスかわからない。

僕らは、畑をやってる人に対して、牧場から肥料を渡したり、
肉や乳製品の相談に乗ってあげたりして、成果もあげていた。

なにより店同士、会社同士を友達にした。
会社同士が僕らを介してお互いを頼るのだ。
頼ると友となる。

それは、お金にはならないが、お金になること以上に評価された。
関係性こそが大事なのだ。
そこから新しいビジネスが生まれる予感がした。

僕らの会社「ロケットえんぴつ」はお金を必要としない。実際にもらっていない。
そのかわり、その会社が提供する「経験」を得ることができる、「キップ」のようなものがあればいい。
それが今、たくさん溜まっていた。

そして始まって半年も経たないのに、
あの3人(テツ、シュン、ダイチ)はさまざまな経験をした。
そして経験した分、その会社の人と仲良くなっていた。
気がつけば僕らよりも大人の世界で顔が広い。
僕らは教会ぐらいしか担当がなかった。

そんな教会で湧いて出てきた話だ。


「よし、イノシシまるごと捌いて鍋や!」
にっこりと笑うてっぺい。

「おい、ゆきや。
 今まで出会ったやつ、全員巻き込むぞ!」



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