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小説箴言

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聖書の中の「箴言」をベースに小説を書いています。 正しきものと悪しきものの歩みをそれぞれ描いています。しかしその向かう先は、、、
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#ソロモン

小説箴言 7章

小説箴言 7章

7章

夜、おばあちゃんの家まで、お父さんと車で行くことになった。
僕(悟)が学校から帰ってすぐに、お父さんの妹から電話があって、調子が悪いから見に行ってほしいとなったそうだ。
お母さんは仕事だからいけなくて、夕飯の都合で僕も一緒に行くことになった。

二時間ほどある車の中で、お父さんとたくさん話した。
あの子のことを話した。
お父さんの教えてくれたことを守ろうとしていることも。

するとお父さん

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小説箴言 6章

小説箴言 6章

6章

さらに最悪なことが俺(龍)には待っていた。
いや、最悪を止めるために必要な最悪だったのかもしれないが。

年上のその彼女を仲間との集まりに連れて行った時のことだった。
久しぶりに会えて浮かれていたのだ。
女に飢えた男どもの前で優越感に浸っていた。
「おい、こいつらとも遊んだってくれや。ははは!」
冗談のつもりだった。
「おい、龍!ほんとか!いいんか?」
「おう、おう!なぁ?」
笑いながら振

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小説箴言 5章

小説箴言 5章

5章

あの頃、じいちゃんは俺(龍)に言った。
「おい!よう聞けよ!!
 調子に乗るなよ!調子ええことばっか言ってんなよ!!」

あの女に会ったのは中1の夏だ。

年上の女に誘われついて行った。
初めは刺激的で、魅力的な、甘い言葉と匂いに、興奮した。
その気持ちよさに浸った。

しかし、しばらくして俺は、沼にハマっていっている心地がした。
俺はなんとか這い上がろうとしたけれど、あいつはどんどん闇に

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小説箴言 4章

小説箴言 4章

俺(龍)の親父は暴力を振るうクソ野郎だった。
俺のことも、母ちゃんのこともよく殴った。
小2の時に母ちゃんと家を出て、俺はじいちゃんの家に預けられた。

あいつが教えたことは「龍、強くなれよ」ってことだけだ。
俺は嫌でも強くなった。
強くなればなるほど、苛立ちは増した。

あの牧師の話の後から、親父のことを考えることが多くなった。
『父が愛しい子を叱るように』
そう言っていた。
あいつがこの俺を愛

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小説箴言 1章

小説箴言 1章

僕は悟(さとる)。
ある日、家の倉庫でソロモン王の巻物を見つけた。
ソロモン王は古代イスラエルの王で、大いなる知恵と有り余るほどの財産を持っていた。
その書物はこう始まった。

『これはあなたが、知恵と命令の言葉を知るため、
悟りの言葉を理解するため、
正しさ、裁くこと、公平であることにおいて、
知恵の命令を受け入れるため、
若い浅はかなものに知識と慎みによる思慮深さを与えるため、のものである。』

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