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小説箴言 1章

僕は悟(さとる)。
ある日、家の倉庫でソロモン王の巻物を見つけた。
ソロモン王は古代イスラエルの王で、大いなる知恵と有り余るほどの財産を持っていた。
その書物はこう始まった。

『これはあなたが、知恵と命令の言葉を知るため、
悟りの言葉を理解するため、
正しさ、裁くこと、公平であることにおいて、
知恵の命令を受け入れるため、
若い浅はかなものに知識と慎みによる思慮深さを与えるため、のものである。』

僕は一晩中読み漁った。
自分の心の中を丸裸にされているようだった。
たまたま開いた最後の方のページには、
『あなたは義に過ぎてはならない。また賢きに過ぎてはならない。あなたはどうして自分を滅ぼしてよかろうか。
悪に過ぎてはならない。また愚かであってはならない。あなたはどうして、自分の時のこないのに、死んでよかろうか』
とあり、心に刺さった。
そのときの衝撃が、一晩中続いた。

すべての言葉を理解せぬまま頭に詰め込んで朝方眠りについた。
巻物の中にあったソロモン王の神、「主」を恐れた。

ある日、街の中のビルの間の数人の不良たちを見た。
待ち伏せをして、弱そうな奴を取り囲みカツアゲしている。
されているものは絶望の顔をする。
隠れて通報をしたところ、彼らが待ち伏せをしているところにすぐに警察がきて彼らは連れて行かれた。
周りにいた不良の全員が連れて行かれた。
僕は思う。「自分に力があれば同じことをしていたのだろうか」

巻物の中で「知恵」が大声で叫ぶという。
「浅はかなで居続けるな!!
いつまで嘲ることを続けるのだ!!
いつまで知らないままでいるのだ!!
立ち返れ!!!!」

このとき、その言葉が心の中に鳴り響いた。
身体中に力がみなぎっていく感じがした。

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おれは龍(りゅう)。不良だ。
カツアゲをしていたら警察に捕まった。誰かが通報しやがったらしい。
今日はムシャクシャしていて、朝から機嫌が悪かった。
家を出るときじいちゃんが、
「いつまでそんなことをしてるんだ!!
世の中をナメるなよ!!
ちゃんと帰ってこい!!」
と叱ってきたが、無視して出てきた。
そしたらこのザマだ。

警察の取り調べ。
薄暗い部屋の中で大きな声で怒鳴られ怒鳴り返す。

いつまで経ってもじいちゃんはきてくれなかった。
ふいに怖くなってきた。俺はこのまま捕まるのか?
じいちゃんは俺の名前を呼んでくれたのに、おれは聞かなかった。
手を差し伸べてくれたのに、俺は拒んだ。

頭の中で悪魔が嘲笑っているような気がした。
そしてこれからのことが急に怖くなった。
もうじいちゃんはおれを見放したんじゃないか。
呼んでも答えてくれないんじゃないか。
探し求めても、見つからないんじゃないか。

浅はかだった。愚かだった。
自分の行いの結果を食わされることになったのだ。

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警察に捕まっていく不良たちを見て、僕は急に不安になった。
報復されたらどうしよう。
そのとき、この言葉が体を覆った。
『しかし、わたしに聞き従う者は、安全に住み、災いを恐れることなく、安らかである』

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