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2024年4月の記事一覧

小説『洋介』 15話

小説『洋介』 15話

 春休みが終わり二人は6年生になった。
去年に引き続き、彼女と同じクラスになった。
と言っても、そもそも2クラスだけしかないので、確率は50%。驚くほどのことでもない。
発表の時に小さくガッツポーズはした。

 新しいクラスでも彼女は人気者だった。
わいわいと楽しそうに、囲まれている。
やっぱすごいな。
その光景を眺めながら、僕は教室の隅でぼーっとしていた。
時々、前の席の洋ちゃんが話しかけてくれ

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小説「洋介」 14話

小説「洋介」 14話

 季節は春になった。
一週間の春休みが始まる頃。
終業式の後、二人は河原にいた。きっと二人は両想い。

 石を浮かせるまでにもう1分もかからない。
彼女が隣にいても、スッと静まることができる。
そしてゆっくりと、縦にも横にも石を動かすこともできる。

静まりのスイッチをオンにしている状態は心地いい。
周りが静かになって、頭が冴えてくる。
いろんなアイデアが浮かんでくる。
それが楽しい。
本質を掴む

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小説「洋介」 13話

小説「洋介」 13話

 始業式の朝。
教室につくと、久しぶりに見るあの子がいた。
なんとなく緊張してしまった。
あのあと何度か河原に行って練習をしていたが、結局冬休みの間は一度も会えなかった。

そのときは目が合っただけで会話なかった。
他の女子と話していたし、そのあとすぐに体育館に移動したから。
そして校長のあいさつやら、連絡事項があり、その間、一度も会話はなかった。

すぐに帰る時間になり、校門を出たところで彼女が

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小説「洋介」 12話

小説「洋介」 12話

 冬休みに入って一週間が過ぎた。

 親戚が家に来たり、家族でおばあちゃんの家に行ったりした。
普段は仕事で忙しい両親に、ここぞとばかりに連れ回されて、僕も忙しかった。
そのため、冬休みに入ってから河原には、行くことすらできなかった。つまりはあの子にも会えない。
会うためには家に直接行くしかない。
河原からすぐのところにあるらしい。
三丁目のスーパーの近くの一軒家らしい。
探せばすぐ見つかるだろう

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小説「洋介」 11話

小説「洋介」 11話

 決意の翌日。

 学校であの子を見つけると、うれしくなって「おはよう!」と笑顔で話しかけた。
僕の前日からの変わりように彼女は驚いているようだった。
そうだった、昨日は気まずかったんだっけ。

彼女は少し照れくさそうに「おはよう」と言ってくれた。
その間に流れる空気に少し緊張した。
でも、自然な流れにゆだねようと決めたのだ。
リラックス、リラックス、感情が自然に出てくるままに。
緊張はあっても、

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