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辻島治
2023年10月13日 20:35
道路に割れた花瓶と破片、煤けた造花の残骸。 なんにもないけど、何か持ってる振りをする。 私。 電車の音が、足元からする。 明日明後日の最終便に、あの人は間に合うか? ねえ、君。 歩くことは、生きていることに近くて遠い。 嘘は、嘘を、嘘で、虚構の春は青々としていた。 記憶が無い。 私たちには、もうどこにも逃げ場なんてなくて。 私の頭のネジは、たぶん。どこかで落
2024年1月16日 09:01
ねむれよ、よい子。真夜中は海の底に沈んでしまって。即効性の眠剤は、私の身体の奥深くで沈殿している。ねむれよ、よい子よ。子守唄は、いつも聴いたことのない民謡だったきがする。布団と敷布団に挟まれて、もぞもぞしてるのは不安だけで、本のページには栞を挟んでいる。ねむれよ、よい子よ。おやすみなさいで、走り出す列車。曖昧な言葉ではぐらかして。おやすみなさい。おやすみなさい。静かな穏
2024年1月30日 21:18
螺鈿の蝶を夢むか細き手足をもてあまし広げすぎた翅で飛んでゐる 蝶蝶螺鈿の蝶を夢む虚ろな瞳の幾多で万華鏡千年万年の朧月夜を飛ぶ 蝶蝶か細き手足をもてあまし広げすぎた翅で飛んでゐる 蝶蝶画像:こんとん様文:辻島 治
2024年2月19日 21:55
梅の蕾がふっくらと微笑んできた頃 知らないあなたからもらった手紙。 しっかり、拝読いたしました。 名前も、年齢も、性別さえも、何も知らない。 あなたへ あなたには、私のことなど、何一つとして、わからないでしょう。しかし、それでよいのです。 あなたは、想像したことがないでしょう。きっと、これを書いているひとのことなんて、どんな顔をして、どんな声をして、どんな浪漫を体験したのかだな
2022年7月10日 19:53
孤独に寄り添えることができたなら、 あなたを救えたらいいのにと願ってしまった。 じぶんのことすら満足に救えない癖に、 あなたのことを救えると信じていた。 神様であったらいいのになと願ってしまった。 あの頃の無辜なる言葉が、 懺悔の言葉になる。 欲しかったのは感謝でもなくて、 欲しかったのは賛美でもなくて、 共感なんて求めてもいなくて、 ただあなたを抱きしめようとした手が