海月
孤独に寄り添えることができたなら、
あなたを救えたらいいのにと願ってしまった。
じぶんのことすら満足に救えない癖に、
あなたのことを救えると信じていた。
神様であったらいいのになと願ってしまった。
あの頃の無辜なる言葉が、
懺悔の言葉になる。
欲しかったのは感謝でもなくて、
欲しかったのは賛美でもなくて、
共感なんて求めてもいなくて、
ただあなたを抱きしめようとした手が、
勇気を出して伸ばせていたら なんて
何度も、
何度も、
何度も、
書いては 消して。
何度も、
何度も、
何度も、
消しては 書いた。
懺悔するには遅かった、
後悔するのには早すぎる気がした。
ただただ、涙だけ次から次へと流れる。
「どうして?」
海月がアクアリウムで漂っていた。
触手が、ふわりふわらふららら、と歌い踊る。
それは、シナプスのようだった。
わたしの脳内を観察しているようだった。
わたしの脳内で、なにかがコポコポした。
「どうして?」
海月は、わたしにその触手をのばしてきた。
わたしの脳内のシナプスにも、
猛毒があるのかもしれない。
ガラス越しにその触手にふれたら、冷たかった。
ふわりふわらふらら、と歌い踊っている。
いまも、脳内で歌い踊る。
海月の触手みたいな、あのふわふわとしたシナプス。
ふわりふわらふららと歌いながら、歌い踊る。
踊る、ひとり、踊る。さみしいな。
そんなわたしは、今でも、海月が好きだ。
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文章:辻島 治
見出し画像:みんなの写真(isora/様)のくらげ写真
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