眠剤
ねむれよ、よい子。
真夜中は海の底に沈んでしまって。
即効性の眠剤は、私の身体の奥深くで沈殿している。
ねむれよ、よい子よ。
子守唄は、いつも聴いたことのない民謡だったきがする。
布団と敷布団に挟まれて、もぞもぞしてるのは不安だけで、本のページには栞を挟んでいる。
ねむれよ、よい子よ。
おやすみなさいで、走り出す列車。
曖昧な言葉ではぐらかして。
おやすみなさい。
おやすみなさい。
静かな穏やかさを渇望する悲鳴。
体温35.8度の平熱が体温37.0度へと高くなる。
ジェットコースター情緒だと
大丈夫だよと囁くひと
もういない。
さよならと手を振ったんだ。
別離だと厳粛に嗤う。
愛してないと愛してる
愛されてないと愛されている
境界線が分離する水と油みたいね
わたし、きっと、どっちでもないわ。
死にたくなった。
生きてみたくなった。
勝手なことをいつも、想った。
曖昧さをタバコを吸って、誤魔化そう。
呼吸の深さ=深淵の深さ。
あなただけが、幸いであればいいの。
ホーチュラスのなかでパンジーが咲く。
痘痕を愛してくれますか?
内蔵。
人間の内蔵は受信機ですからね。
皮膚をまとった骨格、筋肉、血管のひとつ、ひとつが、愛しいわ。
吐瀉した昨夜のケーキ、酒。
震える指先で、祈って、恋して、それから、なあに?
女生徒のお下げ髪がいつか、解ける頃。
黄昏時に、愛を語って。
愛を語るなら、墓場までだからと、君は鼻を鳴らしながら泣いて。
毒を食らわば骨までだからと、私の遺骨をひろってみせて。
愛してるが、憎しみと同じだなんて思わなかったと研究結果に狼狽える。
私は、滑稽ではない。複雑でもない。
そこにあるのは、なんだろうか?
わからない。
わからないなりにも、生きてみたい。
サンサベリアの花はいつ、朽ちてしまうことを覚えるのか知らんが……
きっと君がいなくなったら、だろうな。
サヨナラの予行練習をした。
ウサギ跳びで子供たちがはしゃぐ。
花を枕にして、夢をみよう。
小さな世界。
おやすみ、世界。
おやすみ、おやすみ。
画像:なるみ様
文:辻島 治
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