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デジタル社会と「深い読み」

いま、『デジタルで読む脳 × 紙で読む脳』という本を読んでいる。
タイトルの通りデジタル社会となっている昨今、デシタルが「読む脳」に及ぼす影響を脳科学の観点から述べている本だ。

結論を端的に述べてしまうと、デジタルで読むことのデメリットは「深い読み」が減ってしまうことにある。メリットは、ほぼない。

「深い読み」とは何かというと、文章やその行間、登場人物の行動や感情について深く考え、推察しながら読んでいく読み方だ。

驚くことに「深い読み」は、脳の感覚野や運動野を活性化させ、あたかも〈体験〉したかのような経験を脳に与える。
それはすなわち「読書」が、比喩抜きで脳を変える力を持っていることを示している。

ところがデジタル社会は、この「深い読み」を脅かしていると著者は言う。

僕たち人類には〈新しい知識や情報を欲しがる〉という「新奇性バイアス」という認知の偏りがあるらしい。
原始の時代。人類の生存がまだまだ不安定な頃、「情報」というのは生死を左右する重要なものだった。だから、ヒトは出来るだけ新しい情報を収集し、その情報を得ることに喜びを感じるように脳が進化したのだという(報酬系)。

この「新奇性バイアス」と「デジタル・ネット社会」の親和性は抜群で、スマホやSNSをパッとひらけば、すぐに新しい情報にありつける。
人類にとって、スマホはもはや脳にとってのファーストフードもしくはスナック菓子のようになっており、僕たちは情報デブになっている。

一度に多量の情報が入った脳はどうなるかというと、「考えることをめる」。
何もその人が怠惰なんじゃない。オーバーヒートしないよう、脳自身の防衛機能として「考えることを止める」のだ。

考えることを止めた脳は「新奇の情報を得る」という報酬を得るためにスマホに依存し、「深く読むのをやめ」「斜めに読み」「結論を早く欲し」「抽象的な概念を理解する努力を怠り」「倍速で動画を視聴する」。

つまり、本来読書で得られたはずの脳の変化や体験なんてものは得られず、情報を右から左へ流して貪り尽くすゾンビのようになる。

これが「デジタルで読む脳」が及ぼす影響らしい。

僕にも心当たりは十分にあって、それこそ情報だけを欲して本や動画を漁っていた時期があった。
けれど、それだけでは身につかないというか、見たもの読んだものが手からスルスルとが抜け落ちていく感覚があって、それは要するに「考えることを止めた」状態だったのだと思う。

今はKindle Unlimitedも解約し、ほぼ紙の本だけを読んでいる。まだ集中力が十分に回復してはいないが、以前より脳が働く感じがする。

デジタル社会において「集中」や「深く読む」は、逆にキーワードになるのだろう。


参考にした本

Kindle Unlimitedを解約した話↓

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