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井本井上になった日

 私が漫才を初めて人前でしたのは小学五年生の時だった。年末の全校集会だったか6年生を送る会かなんかだった気がする。もはや細かい事は覚えていない。私はこの時ライセンスの漫才を見て、漫才の世界に引き込まれたばかりであったのだが、それはまたこっちのお話。

 上記のような経緯で漫才の世界にのめり込んでいたのだが、丁度その頃6年生を送る会だったかなんだかの出し物募集がされていた。これだ、と思った。とりあえずその時一番仲の良かった友達を誘って出し物の応募をした。これが人生初の漫才をするきっかけだった。ネタは私がとりあえず書いた。題材にはことわざを選んだ、というよりもエンタの神様でやっていたインパルス板倉俊之さんのピンネタのモロパクリだった。当時板倉さんがやっていたテストのコントがあった。ことわざのペーパーテストで、前半部分を読んで後半部分を穴埋めする形式のテストで、その後半部分を板倉さんがボケていくのを延々と繰り返すネタだった。それをそのまま漫才にしてしまった。一応オリジナルのボケとして、ボケがセリフを忘れて後ろ向いてカンペを見るというくだりを作った。一回目は不審な顔をしつつも見逃して、二回目でツッコむという、小5の自分にしては意外と良いボケを作ったなと今でも思う。あ、言い忘れていたが私はツッコミをした。ライセンス井本さんのツッコミが好きだったので。

 次に漫才をしたのは小6の時。小6の時は二回漫才をした。一度目はなんかの年末の全校集会か6年生を送る会かなんかのときだった。二度目は小6の3月に行われた卒業前クラス内レクのときだった。とりあえずM-1でNON STYLE優勝後だったのは確かだ。この時もネタは私が書いていたが、もう内容は一切覚えていない。土台だけはどこかから借りて、内容はオリジナルにしてやろうと作った記憶はある。前回の漫才で、知っている人には板倉さんのパクリだって言われてしまったからだ。そんな悔しさを噛みしめつつ作ったネタだったがなぜか中身を少しも思い出せない。困ったものだ。だが、一つだけ覚えていることがある。また今回もツッコミを担当したのだ。NON STYLEの井上さんのツッコミが好きだったので。

 そして現時点で最後に漫才をしたのは中3の時。3月に行われた3年生を送る会(通称三送会)でだった。漫才に引き込まれた話のリンクを上に貼ってあるが、中3時点ではお笑い熱が冷めていた時期でもあった。三送会の出し物募集で友達に漫才をしようと誘われたのだ。最初は断っていた。受験勉強が本格化していた時期でもあったし、そんなときに面白いネタを考えられるとは思えなかったからだ。もうこの時期になると既にあるネタのパクりをすることは自分の中では絶対に許せないと思っていた。中途半端なことをするくらいならいっそやらない方がいいと思っていた。だから断った。でもその友達は一日中誘ってきた。私が折れた。いや、漫才に対して折れていたところを直立に戻された。人生四度目の漫才をすることにしてしまった。そうと決まれば一日だけ受験勉強そっちのけで一晩ネタ作りに充てた。持っていた色々な本を片手に参考に出来るものはないかと思いながら作った。そして出来上がったネタを翌日相方となった友達に見せたところ、「いや、なんかもっとテキトーにわーってやるつもりだったのに…」と私の本気度に嬉しビビられてしまった。その日から受験勉強と並行して漫才の練習をひたすら行った。共通の友達を一人監督につけながら自分たちだけの面白さを追い求めていた。確か一度ネタの中身でガチ喧嘩をしかけた。だがその喧嘩の内容をそのままネタに落とし込んだことによって、雨降った地を固めた上にそこに家を建てた気分になった。この時はあまり意識していなかったが、つかみというものを無意識に作っていたのは我ながら褒めてあげたい。舞台袖から勢いよく登場し、その勢いでボケがツッコミを弾き飛ばして、弾き飛ばされた方は盛大にずっこけるというベタベタにベタなものだった。だがつかみとしては成功した。と、この辺までは覚えているのだが、肝心なネタの中身を覚えていない。偽電話詐欺を題材としたコント漫才だったことは覚えているがどんな展開でやったのかさっぱり思い出せない。だからもういっそ今の自分ならどういう展開にするかなと、書き直してみることにした。これは後ほど公開しようと思う。あとやっぱりこの漫才もツッコミをやった。ライセンス井本さんに、NON STYLE井上さんになりたかった。

 今再びお笑いブームが自分の中に来ている。見るのも楽しいが、自分で漫才がしたい。お勤めの身なのでプロを目指すと言うつもりはないが、大人の趣味としての漫才をしたいという気持に漠然となっている。そうは言うものの、残念ながら次の相方をまだ見つけていない。とりあえずボケをしてくれそうな相方を探しつつ、ボチボチとネタを書いてみることにしようかな。井本井上にもう一度なるために。


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