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田んぼの生物多様性をむむむ。キッズが調査!人間も様々な生き物とつながりながら生きている。

(一社)つちからみのれでは、尾鷲ヤードサービス(株)とともに、尾鷲市向井地区で生物多様性を高める「ふゆみずたんぼ」の取り組みをしています!先日そこで生き物調査イベントを行いました!
昨年度に引き続き行ったイベントで、去年は見つからなかった生き物が帰ってきていることもわかりましたので、そのレポートをします!!



背景:ふゆみずたんぼの取り組み

(一社)つちからみのれは尾鷲ヤードサービス(株)とともに、尾鷲市向井地区の田んぼに一年中水を張る「ふゆみずたんぼ」という取り組みをしています。

尾鷲市向井地区はかつて、だんだん畑での甘夏栽培が盛んで、田んぼや畑が多くある美しい里山の風景がありました。しかしながらだんだん畑では大型の農業機械が入らず手作業で行う必要があるので効率が悪く、稼げない仕事となっていきました。1964年には市内に建設された尾鷲三田火力発電所が稼働を始め、農業から工業へ人々は仕事を移っていき畑だったところは耕作放棄地となるところが増えていきました。

田んぼの風景もわずかしか見られなくなり、このような里山エリアに生きていた生き物たちは住処をなくしてしまいました。

今、でも、日本中で向井地区のような里山の風景が失われていると聞きます。山と海の間に位置する里山エリアで、人と自然が共存し農業を生業として暮らしていたが、その暮らしでは成り立たなくなり、里山から人がいなくなっているのではないかと思うのです。

里山のような人が手を加えた自然は「二次的自然」といい、日本は9割が二次自然だと言います。それは弥生時代より田んぼや畑など里山での暮らしが主だったからです。

人間も生き物。ほかの様々な生き物とのつながりの中で生きています。普段の生活の中でそれらを感じる機会はあまりないですが、虫たちが果実の受粉をしてくれていたり、キノコが落ち葉を分解してくれていていたりと、見えないところでものすごくつながり合い補い合いながら生きているんだと思います。

もし今の生態系のバランスが崩れ始めた時、どんなことが起こってしまうのかは生き物とのつながりが複雑すぎて想像ができないと生き物の先生がおっしゃていました。でもきっと人間は人間だけでは絶対に生きていけないから、もともとあった多様な生き物とのつながりを守ることが自分たちの豊かな暮らしを守ることにつながるのではないかと思って、「ふゆみずたんぼ」の取り組みを始めました。

尾鷲ヤードサービス(株)さんが向井地区を盛り上げたいと活動を始める中で、自分の土地も使えてないから借りて欲しいと地域の方からお借りされた土地がありました。10年ほど耕作放棄となってしまっていた休耕田でその活用を考えていたタイミングに、公益財団法人日本自然保護協会さんとのご縁をいただきました。

「田んぼとしてお米を作って売るのではなく、地域の子どもたちと一緒に生物多様性を高める田んぼにしよう」

2023年より4月より、日本自然保護協会さんのサポートのもと、使ってない間も一年中水を張る「ふゆみずたんぼ」の取り組みがスタートしました。田んぼという環境は水場や草地など様々な環境があるため多種類の生き物の住処となり、また水場の環境があることで水生昆虫など田んぼで生きられる生き物の住処となります。稲作を行っていない冬の間も水を張っておくことで田んぼの環境を再現し、生物多様性を高めようというものです。水を張ってから4ヶ月ほど経過した8月に第一回目の生物多様性調査を実施しました。(第一回目 生物多様性調査の様子はこちら)

そして今回、第一回目からの変化を見るためにも、第二回目の調査を行いました!


今年の生物多様性調査の様子

できるだけ去年の調査日時と同じ条件でやるべく、今年も同時期の8月25日に行いました!
なかなか暑いですが、山からの湧き水を田んぼに張っているので、調査中はひんやり冷たくて気持ちい〜

この日は、午前・午後の部合わせて、子どもたち11人、大人が13人、つちみのメンバー6人の合計30人で調査を行いました!

「何このむし!!?」
知らない生き物を発見したら、すぐに生き物の先生が教えてくれます!
「これはね、マツモムシと言って水の中を泳ぐ虫で、刺されると痛いんだ」
生き物好きな子どもたちも、博士のように物知りな先生がいろんなことを教えてくれるので、たくさん聞きに行っていました!

つちみのメンバーも、童心に戻ったように夢中で生き物探し!!
生き物たちを水槽に入れた後は、何を何匹つかまえたのか調べるため「仕分け」をします。これは何の生き物かな?よーく観察してにている生き物がいればその水槽へ、わからなかったら先生に聞きながら、みんなで仕分けをしました。


調査の結果

調査の結果、この日は水に生きる生き物だと約20種類、トンボなど飛ぶ生き物も入れると約26種類が見つかりました!ヒメゲンゴロウやクロベンケイガニ、カワニナ、ヨシノボリなど去年の調査では見つからなかった生き物たちも見つかり、水の生き物の種類で比較すると3種類ほど増えていました!

最後先生と一緒に調査結果の振り返りもし、立派な生き物調査隊のみんなでした!


参加者の感想・生き物の先生の振り返り

参加者の方からの感想としては、

「虫探しは尾鷲ではどこでも簡単にできるんですが、専門の先生と一緒に生き物観察することで、学んで自分の知識にできるのでいつも参加させていただいています。今回は、虫の入りやすいガサガサの方法も教えていただいて、すぐに大きなヤゴを捕獲でき、成功体験にもなってより楽しそうでした。」

「今ってなかなかそういった方と現実世界で巡り合う事難しいですよね。どうしても画面上とかになってしまうので、あの様に対面で話したり、聴いたり出来る機会がもっと増えて、こどもが自分の好きなものを見つけるきっかけになったら良いなと思いました」

また生き物の先生からは、

「アカハライモリは山と水場(田んぼや湿地)が連続して隣り合っているところでないと生きていけず、今減ってしまっていて純絶滅危惧種に指定されている。ペットショップなどで売られていることもある。ここは山と田んぼが隣接している環境なので、アカハライモリがたくさん見られた」

「またアメリカザリガニなど外来種がいないこともびっくりした。ミズネコノオ、アブノメ、シソクサ、ミズマツバ、ミミカキグサ(根っこで獲物を捉えて消化液で溶かして食べる食虫植物)など田んぼの絶滅危惧種の植物がたくさん生えていて、田んぼに眠っていた種子が芽生えてきたのだと、さらにびっくりした」

地域の方は、

「ゲンゴロウとかってまだおったんや。昔はようけいたけど、もういなくなったんかと思った。まだおったことにびっくり。なんだか懐かしい。」

との言葉をいただきました!


まとめ

美味しい野菜が食べられて、美味しい水が飲めて、空気が綺麗で星が見える。
きっとそれらは、もともとここに暮らしてきた生き物たちとのつながりの中で守られてきたものだと思います。

むむむ。の生き物調査イベントに参加してくれた子どもたちは、田んぼでは普段の虫探しよりもたくさんの生き物が見つかる!ということを体感として感じてくれたんじゃないかなと思います。

もっと多くの種類の生き物たちが帰ってくるよう、ふゆみずたんぼの取り組みをこれからも続けていきます。毎年調査イベントを行います!

そして生き物たちとのつながりをもっと日常でも感じられるような仕掛けをしていきたいと思います!!