見出し画像

オードリータン著「デジタルとAIの未来を語る」が、なぜ今読むべきなのかを分解する。


「寝る」を脳に指令するための習慣


寝る1時間前くらいから読書をするようになった。

寝る前の習慣とすることで脳も本を読むタイミングで、

「あぁ、あと1時間くらいで寝るんだな」

の合図になる。意識的に脳に指令する行為って大事。


付箋読書


本を読むとき、印象に残った言葉は声に出すようにしている。音にすることで、その1文が部屋に響き渡る。脳という田んぼに言葉を植え付けるように丁寧に反芻する。


声に出した後は、付箋を付ける。過去にはスマホで写真を撮っていたが、びっくりするくらい見返さないので付箋を付けるようになった。

ということで今回付箋を付けた本はこちら。

画像1

オードリータン著 デジタルとAIの未来を語る



著者オードリー・タンについて。

次代の世界的カリスマとして注目を集める台湾IT担当大臣のオードリー・タン。IQ180超の天才的頭脳、性別なしというジェンダーレス、世界のグローバル思想家100人に選ばれる先見性、新型コロナ対応でわずか3日で全国民にマスクを配るシステムを構築した。


なぜ付箋をつけたのかを深堀りしてみる。


ここからは私が付箋をつけた言葉とその理由を書いていきます。付箋を付ける=今の自分に必要なキーワード。そしてそのワードがなぜ自分のココロに引っかかったのか、それを分解、整理してnoteにまとめることで、読書がより立体的な体験になると思うからです。

そんなわけで各章で分けて解説していきます。

第一章 AIが開く新しい社会-デジタルを活用してより良い人間社会を作る


政府はデジタルで社会の方向性を変えようとしているのではありません。私たちも「石鹸で手を洗いましょう」をいう考えと同じ方向を向いています。ただ、私たちはこれと同じ方向性にいながら、「手を洗いましょう」というメッセージをデジタルによって、より広く、より早く伝えようとしているだけです。<第一章「AIが開く新しい社会」より>

第一章「AIが開く新しい社会」からの言葉です。この中の「・・・だけです」という表現が多用されていることが印象的。デジタルが魔法の杖ではなく、あくまで主体は人間であり、デジタルはツールに過ぎないことを徹底して伝えているのだと思います。


・・・もともと私たち人間は、核をコントロールできた場合の効用を知っています。ところが、放射能汚染を目の当たりにすると、核が人智を超えた結果をもたらし得ることをまざまざと実感するのです。こうした経験を基に、私たちは謙虚、謙虚ということを学ぶのだと思います。<第一章「AIが開く新しい社会」より>

ここでは「謙虚、謙虚」と2回出てきています。まるで自分に言い聞かせるように謙虚という言葉を使っているようです。台湾政府の一員としてコロナ対策のヒーローと呼ばれながらも謙虚であることを忘れるな、この気持ちが大事なんだと。


タイヤル族(台湾の先住民)は私に、「平地に住む人たちは、先住民にも教育が必要だと言うけれど、自然の資源を無節制に使っている彼らにこそ教育が必要なのではないか。それでこそ優れた成果を得られるのではないか」と言いました。私は彼らの考えから多くのことをインスパイアされました。<第一章「AIが開く新しい社会」より>

もはや説明不要ですね。「教育とは何か」を改めて考え直す話です。これを著者がインスパイア(感化)と表現しているのも興味深いですね。


私はデジタルから遠い人たちがいつかいなくなるとは思っていません。「デジタルを学ばないと時代に遅れてしまうよ」という態度は絶対とりたくなく、その姿勢を堅持していました。それはデジタル担当政務委員になった今も同じです。<第一章「AIが開く新しい社会」より>

徹底した謙虚の姿勢、これがない限りデジタルは国に定着していかないんだと痛感させられます。


第三章 デジタル民主主義-国と国民が双方向で議論できる環境を整える


いきなり第二章が飛んでいます。第二章は著者の生い立ちだったので付箋を貼らなかっただけで、決して読み甲斐のなかった章だったということではありません。


私が自主勉強していたときに自然と感じるようになったのは、「何事も独学が可能なのだ」ということです。ネット上にはさまざまな意見があり、それを統合することで自分の学習領域となりました。また、私は「より多くの時間をこうした勉強に費やしたい」と感じ、こうした勉強方法を「情報科学だけ限らず行いたい」と考えました。<第三章 デジタル民主主義>より

この考えは我が子に応用できるなと思ったからです。中学を中退後プログラマーとして起業した著者のような学び方が通用するように大人が変えていかなくていけないと。多様性を受け入れることは未来を創るんだと肝に銘じたい。


私が強調したいのは、デジタル以前のラジオやテレビのようなアナログの時代でも民衆が扇動される危険性は存在していたということです。これはマスコミュニケーションにとってずっと付きまとう問題なのです。「インターネット環境をどのように調整していくか」という話ではなく、情報発信する力がある限り、この問題が消えることはありません。<第三章 デジタル民主主義>より

デジタル、インターネット、SNSがあろうがなかろうか、民衆が扇動される歴史は繰り返される。目先ばかりを見ていると本質を見誤る、そんな警鐘でもあると思いますね。


第四章 ソーシャルイノベーション-一人も置き去りにしない社会変革を実現する


たとえば、今なら「新型コロナウィルスをいかに抑えていくか」が、世界共通の価値になるかもしれません。それを実現するためには、ワクチンを開発することが最も重要だと思っているひとは多いと思います。しかし、それ以外にもまだ方法はたくさんあるかもしれません。だからこそ「他人から学び、考える」という行為を謙虚に行っていかなければなりません。<第四章 ソーシャルイノベーション>より
私の仕事は非常に明確で、様々な異なる立場の人たちに対して、共通の価値を見つけるお手伝いをすることです。いったん共通の価値が見つかれば、異なるやり方の中から、みなさんが受け入れられるような新しいイノベーションが生まれます。それは共通の価値と実践の価値のイノベーションです。<第四章 ソーシャルイノベーション>より

「自分の仕事は明確になっているか」を自問させられる言葉です。ブレない仕事観を磨いていかない限り、堂々巡りは終わらない、自身にとってもイノベーションは生まれないんだろうなと自戒します。


「イノベーションとは、より弱い存在の人たちに優先して提供されるべき」ものであり、それこそが誰も置き去りにしない「インクルージョン」です。私たちの社会には、多種多様な人たちが生きていることを忘れてはいけません。<第四章 ソーシャルイノベーション>より

改めてインクルージョンという言葉を考えるきっかけになります。インクルージョンは直訳すると「包括・包含」ですが、これだといまいちピンときません。でもインクルージョンの反対語エクスクルージョン=排除から考えると腹落ちできます。格差社会をなくすことが「インクルージョン」に繋がります。


第五章 プログラミング思考-デジタル時代に役立つ「素養」を身につける


もっとも重要なのは、「必ずこうしなければならない、これを勉強しなければならない」と考えず、特定の方向性を設定せずに学ぶこと、そして「いかに好奇心を持つか」ということです。好奇心が自分の中に湧き上がってきた時点で、先ほどお話したようなお互いの共通の価値を持った学習方法に移行すればよいのです。<第五章 プログラミング思考>より

親として「いかに好奇心をもたせるか」を考えさせられる言葉です。好奇心を持ったらやらせてみる、やる前から親が判断しないことが大事。だからといって学校に行かなくて良いというわけではもちろんありません。親として子どもたちの好奇心の入口を拡げてあげることが努めだと思うのです。


プログラミング思考とは、「一つの問題をいくつかの小さなステップに分解し、多くの人たちが共同で解決する」プロセスを学ぶことです。「最初から最後まで一人の力で解決方法を考える」やり方とは異なる方法を学ぶことで、どの分野でも通用する「問題解決の方法」が身につくでしょう。<第五章 プログラミング思考>より

国の課題に限らずどの課題においてもこの「プログラミング思考」が主流になっていくのだろうなと思います。「問題をいくつかの小さなステップに分解する」はAIにはまだまだできないことです。


民主主義を健全に発展させるためには、「いかにして人が寄り添うものにしていくか」が大きなポイントになります。<第五章 プログラミング思考>より

わが国の民主主義が寄り添うものになっているか、なぜ無関心になってしまうのか。どうやった親近感を持ってもらえるのか真剣に考えないといけません。

私が非常に尊敬するプログラマーの先輩がいます。その人は「プログラムをどれだけ書けるかどうかは、母国語の運用能力がどれだけ優れているかにかかっている」「文才があればあるほど、プログラムがうまく書ける」と断言していました。<第五章 プログラミング思考>より

母国語の運用能力がどれだけ優れているかは興味深い表現です。何かを表現することにおいては母国語をいかに大事にするか、伝えるをいかに真剣に、真摯に、そして謙虚に考えるかだと思います。


たとえ自分は受け入れられないとしても、こうした異なった価値観や考え方があるということを知っておくことが、大事なのです。そういった知識がなければ、どんな考え方でも、それぞれのグループに属する人たちは、自分の振る舞いを自然なものだと思い、疑うことをしなくなるからです。それは創造力を閉ざしてしまうことにもつながります。<第五章 プログラミング思考>より

創造力を閉ざしてしまう危うさを端的に表現してくれています。この創造、想像力が欠けてしまうと途端に戦争になってしまう。それくらいの危うさを含んでいるのではないでしょうか。

おわりに

「すべてのものにはヒビがある。そしてそこから光が差し込む。」(「Antem」より)もし、あなたが何らかの不正義や注目が集まっていないことに対し、怒りや焦りを感じているのなら、それを建設的なエネルギーに変えてみてください。そして自問自答してください。「こんな不正義が二度と起こらないために、私は社会に対して何ができるのだろうか」と。<おわりに>より


まとめ


最後まで読んで頂き、ありがとうございます。ポイントをまとめます。

・寝る前読書のすゝめ
・本に付箋をつけて、分解→整理→アウトプットへ
・徹底した謙虚の姿勢
・多様性で創る未来
・自身の仕事は明確になっているか
・「いかに好奇心を持つか」で決まる学習
・健全な民主主義は「いかにして人が寄り添うものにしていくか」
・創造力を閉ざす危うさは異なった価値観や考え方を理解しないこと


自問自答を習慣化するためにも、またどこかのタイミングでこの本を再読したいと思います。そしてその度にオードリー・タンのような振る舞いができているのだろうかと。改めて振り返りたいと思います。

なぜ今この本が売れているのか、読みながらこの本は今、全世界で読むべき本だと納得させられた読書体験でした。

どうかこのnoteを読んだだけで理解した気にならず、改めてすべて読んでもらえたらいいなと思います。それくらい今の自身に響く言葉に出会える、そんな読書脳な旅へ出かけてみてください。


画像2





この記事が参加している募集

noteでよかったこと

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?