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ファイナルファンタジー16はなぜ批評的に成功したが、商業的に失敗したゲームタイトルの1つになりうるのか

ファイナルファンタジー16。世界中のメディアのレビューを見る限り、批評的に最も成功したゲームであることは間違いないでしょう。しかし商業的成功とは程遠いようです。日本ではAmazonで4位と悪くありませんが、ヨーロッパ諸国では散々な結果を弾き出し、日本でも予約購入割引がネタにされてしまいました。なぜこうなったのでしょうか?

結論として、戦犯はソニーであると言うべきでしょう。ソニーとスクウェアエニックスは独占的コンテンツ提供のパートナーシップを締結しました。これにより少なくとも新作リリースから半年間は他のプラットフォームでゲームをリリースできません。これは多くのゲーム開発会社がマルチプラットフォームで売り出すことで開発コストの増大やスケジュールの遅延に対応しようとしている現在のトレンドと相反するものです。

もちろんマルチプラットフォームに対応していないゲームシリーズも存在します。しかしそのようなゲームシリーズはマルチプラットフォームで稼働させることが技術的に困難である場合や、プラットフォームの特性に対する適合性が低い場合であることが大半です。例外はポケットモンスターシリーズですが、ポケットモンスターは世界で最も稼ぎ出すキャラクターフランチャイズであることを忘れてはいけません。問題はファイナルファンタジーシリーズは技術適合性やプラットフォーム適合性、あるいはキャラクターフランチャイズとしての強さとは縁遠いゲームシリーズであるということです。つまり、マルチプラットフォーム対応のメリットが大きいにも関わらず、スクウェアエニックスはマルチプラットフォームでリリースすることが不可能なのです。

さらにPlay Station 4に対応していなかったことも問題を引き起こしました。特にヨーロッパ諸国では日本よりもXboxシリーズの普及率が高く、日本でもPlay Station 4が現役である以上Play Station 5への移行をしない消費者も存在します。それもあり多くのゲームがPlay Station 4向けにもリリースされているのですが、スクウェアエニックスはそれをできないため、売上を失ったのです。

もちろん、商業的成功と批評的成功は必ずしもイコールであるとは言えませんし、ソニーとの独占契約のライセンス料が非公開である以上スクウェアエニックスがマルチプラットフォーム非対応であることのハンディキャップを克服できている可能性も否定できません。しかしながらマルチプラットフォームでのリリースができず初動で販売数を稼げなかったことが今後の売上の下押し圧力になる可能性は否定できませんし、多くのゲームプレイヤーのスクウェアエニックスに対する不信感を植え付けた可能性があります。特に多くのPCゲームプレイヤーはPC版を待ち望んでおり、吉田プロデューサーは「楽しみにしていてほしい」とコメントしましたが果たして彼らが半年から1年近く待ってくれるかは不透明なままです。

もちろん今後ファイナルファンタジー16の発売本数はジワジワと伸びていくとは考えます。しかし発売たった2週間で日本でさえ売上が激減したことは、お世辞にも好調な業績とは言えないスクウェアエニックスにとって悩ましい状況をもたらす可能性があると言えるでしょう。

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