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ギリギリまで持っていたいタイプ

お盆休みがはじまる。
わが社は、夏の間に5日間、自由にとってもいいよスタイルなのであまり関係ないのだが、印刷所や組版所などは、お盆にかっちり全社お休みというところが多い。
そうなると、世にも恐ろしいことが起きる。

お盆進行である。

関係各所が稼働している間にできることをする、もしくはお休み前にすべて終わらせるという通常より、「巻いて巻いて~!」というモードに突入するのである。急かされると焦って失敗する私にとって、かなり緊張する時期に突入だ。

※ちなみに「お盆進行」の仲間に、「GW進行」「年末進行」などが存在する。

9月に新刊2冊を控えているのだが、これがモロお盆進行に引っかかっている。早め早めに動いていたものは、先週のうちにゲラやら色校が出ているが、校了はお盆明けの18日でよい。
この期間を、どうとらえるかが人によって違うな……と先程一人で考えてしまった。

早く出たんだから、早く済ませて、さっさと終わらせちゃえ!
というタイプもいる。
早めにもらえれば、それだけ次のバトンを渡された人の作業時間が増えるわけなので、関係各所にとっては、ありがたいに違いない。

しかし、私はどうもそういうタイプではないらしい。
ギリギリまで持っていたいタイプだ。
色校が出た時点で、ざっと確認はするので、大きな間違いや修正が必要かどうかは把握する。
「そこまで見るなら、ざっとじゃなくて本腰入れてチェックして、次へつなげばいいじゃない?」と思われるかもしれない。
だけどやらない。
色校&ゲラは、ギリギリまで手元に置いておく。

なぜかというと、たぶんそれは私が情報誌出身の編集者だからかもしれない。
情報誌は、校了して7~10日後くらいには製本されて、書店に並ぶ。
書籍のスケジュールを考えると、信じられないスピードだ(そう考えると新聞は本当にスゴイな)。

たとえば、8月10日に東京におしゃれスポットができるとする。
それを8月13日発売の雑誌に載せたいが絶対間に合わない。中に入っているショップ情報やレストランの料理などは、事前に撮らせてもらったり取材すればいい。しかし、外観などはおしゃれスポット側もギリギリまで作っているので双方で話し合い、製本に間に合うデッドラインまで外観の写真のスペースだけ空けておき、そのページは校了しない。
そして、校了日の翌日の朝(8月8日とか?)、カメラマンと外観を撮りに行き、その写真をデザイナーに転送。
デザイナーがはめ込んで、即返信。
それをおしゃれスポット側にもチェックしてもらい、印刷所に渡す。
印刷所は、そのページデータを受け取りすぐゲラを出す。
場合によっては我々編集者は、出張校正といって印刷所で待機し、印刷ホヤホヤのページをその場でチェックして校了するのだ。

おしゃれスポット(なんか気に入ったので、繰り返しています)のほかに、来日日程が限られているハリウッドスターとか、時事ニュースなどもそう。
よい記事にするために、ギリギリまで粘るのだ。

新米編集者の時、私の教育係だったM先輩は、粘りの達人だった。編集長に怒鳴られようが、印刷所から催促電話がガンガンかかってこようが校了しようとしない。
隣で見ていて、私のほうがハラハラするのだが
「あれだよ、待った分だけいいニュースが舞い込んできたりするんだよ」といぶし銀を利かした顔で粘る(女子です)。
実際、芸能人インタビューページを担当していた先輩は、他誌が諦めてしまった芸能人をギリギリまで粘って、巻頭ページに独占で持ってきていた。「校了日3日後に校了なんて前代未聞だからね!」と進行係のお姉さんにしこたま怒られてたけど。

私もそのスピリッツに従って、粘ったときがある。
平成が終わる。新しい年号はいかに? と盛り上がっている時期に校了があった。私は、先生のあとがきに「〇〇元年」と入れてほしかった。
校了は3月末だったのだが、発表の4月1日まであとがきのページを校了せずに待っていた。
そして、菅ちゃんが「令和」と発表した瞬間に、組版所に「令和と入れてください!」と連絡し、その日のうちに校了をした。
自己満かもしれないけど、「M先輩、私、教えを守りました!」とお伝えしたい気持ち。

校了から発売までの期間、何があるかわからない。
たとえば、時事ニュースを入れている本で、どこぞの首相が辞任したとか、今まで当たり前に使っていた言葉が急に使ってはいけない用語になったとか、ランドマーク的な建物がまさかの閉館とかいろいろあるのだ。

もちろん、〆切はできる限り守る。
だけど、ギリギリまで校了はしない。

これは、グータラしているのではなく、粘りのスピリッツだ! と理解してしてほしい。

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