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これも仕事、あれも仕事、たぶん仕事、きっと仕事

編集者って、著者さんを叱咤激励して、原稿読んで、赤ペン片手に校正をしたり、デザイナーさんやイラストレーターさん、カメラマンさんにお仕事を依頼したり、プロモーションを仕掛けたり、営業と部数についてやんややんや言ったり、重版かかって著者さんと涙流して喜んだり……みたいな仕事が、表に出ている部分だろうか?

『働きマン』とか『重版出来』とか『忘却のサチコ』とか、そういうマンガやドラマを見ていると、大体そんな感じかな?

一昨日私は、上記のどれでもない仕事をしていた。
赤ペンは持っていた。
そして、ゲラに必死に今まで書いたことのない文字を書き込んでいた。
それは、ローマ数字……。

今抱えている本は、本文の前に前段があって、そこは本文と区別してローマ数字でノンブル(ページ番号)を振っている。
アラビア数字だと、ノンブルにずれが生じていたら、「1、2、3」くらいまで書いて、「以下同」と、赤字を入れれば組版所や印刷所が直してくれる。
でも、ローマ数字を人任せにするのって、なんだか無責任な気がして「ⅰ、ⅱ、ⅲ、ⅳ、ⅴ……」まで書き込んで、一抹の不安を覚える。

待って……。私これ、どこまで書くの?? 
ページを数えると、ざっと24ページある。
「わからない……」

ローマ数字、1から24までなんて、わからない……。
というわけで「ローマ数字一覧」をネットで探し、手書きでページ番号を振っていく。
自分が信用できないので、ゲラになったらもう一度見直して、プロ校正さんにも見てもらおう。

ほかにも、ギリシア文字もやっかいだ。「α、β、γ」くらいなら数学の授業で習ったので何とか書ける。
でもガンマは、怪しい。「Y」に見えてしまう可能性があるので、「γ」と書いた後、青ペンで「ガンマ」と注意書きを記す。
――そして、その先へ。
Δ(デルタ)、ε(イプシロン)、ζ(ゼータ)、η(イータ)、θ(シータ)……。もう無理。なんか、顔文字の鼻とか口に使われるやつでしょ?
(/・ω・)/←こういうやつ(ちなみにこれは「オメガ」使用)。

漢文もやっかいだ。
先週、結構な量の差し替え原稿が先生から届いたのだが、まさかの手書きだった。
しかも、とんでもなく美しい文字だった。
これを、組版所にベタ打ちしてもらうのは申し訳ないので自分で打つ。
隣に座っていたアシスタントさんに「レ点、一二点ってさぁ……、Wordでどうやって打つの?」とダメもとで聞いたら、「知るわけがない」と返されたので、またネットで「レ点 Word 打ち方」と検索して、なんとかやり遂げたが、かなりの時間を要してしまった。

先日までやっていた韓国語の本では、ハングルが!
韓国語の本は2回目だった&自分がちょっと勉強をしているので、書くことはできる。だが、これを組版所のオペレーターさんに打ってもらうことはできないので、Wordデータに落とし込む。
間違ってはいけないので、著者さんにできるだけデータでもらうのだが、「홉」だけ打ってくださいとお願いするのも心苦しいので、こちらで文字を用意する(ちなみにこの文字は、BTSのJ-HOPEのHOPEの部分です。うふふ)。

まぁ、こういうのも編集者の仕事だ。

あと、絶対に間違ってはいけない「目次」などは、二人一組になって読み合わせというものをやる。
片方が読んで、片方が文字を追い、内容とページ数があっているかを確認するのだ。
先日、M美ちゃんが、まさかの目次見出しが中国語という恐ろしい本を作っていて、私に一生懸命中国語で語りかけてくる。
M美ちゃんは中国語ができるので(天才か!?)、流暢に読み上げるのだが、読まれている私は、目が点……。
文字数があっているかくらいしか確認できず、怖くなってあとから本当にあっているのか確認した。
最近ハマっている中国宮廷ドラマみたいでちょっと楽しかったけど。

撮影のある本では、撮影時の食事の手配などもする。
モデルさんに「オーガニックしか食べない。あと、朝イチで温かいスープが必ずほしい。水は常温でエビアン。新鮮なフルーツも」などと言われたときは、『プラダを着た悪魔』か! というほど走り回る。

新米雑誌編集者だったときは、ディズニーランドの取材で、パレードの場所取りの仕事もした。
1時間前からシートを広げ、場所を取り、パレードが来る直前にその場所をカメラマンさんと先輩に譲り、私は次の場所取りに行く。
私だって、パレードみたい……と後ろ髪引かれながら移動する。
取材が終わって、1時間自由時間をもらえたときは、涙をこらえながらミッキーを象ったアイスを食べたっけ……。
一人ディズニーなんて初めてで、絡んできたチップ&デールに対して、ノリの悪いゲストみたいになったっけ……。

あとは
・書店イベントで集客のための呼び込み&チラシ配り(超ニガテ)
・イベントでの司会(子供相手に、ひざが震えたこともある)
・撮影時の手タレ(美しさが必要ない場合)
・けん玉検定を受ける(けん玉の本作っていたもので。ちなみに3級です)
・「母娘旅」特集で、母親役モデルを手配する予算が捻出できず、自分の母親を差し出す(母ノリノリ)
・平安もののコミックを作った時は、著者さんと京都へ行き、自腹で十二単も着た(先日それを、普段大人しい同僚男子に見せたら、腹を抱えて笑っていた)
エトセトラ、エトセトラ。

――

これも仕事、あれも仕事、たぶん仕事、きっと仕事。
そう思って、今日も元気に働きます(昼休みのつぶやきnote)。



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