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New Chapter


「向日葵は枯れつつ花を捧げおり父の墓標はわれより低し」―寺山修司

'If you have the ability to love, love yourself first' ― Charles Bukowski


この星に生まれてから11350日目。i.e. 31年と、もうすぐ1ヶ月。
光が溢れる夢で起きる。覚醒とともに夢のプロットとディテールは綺麗に消え去り、漠然とした胸の高鳴りだけが残る。猫のために玄関の扉をあけると、秋の乾いた空気が部屋に入る。今日はいつも通りのイギリスらしい秋の曇天。朝食をとりながら地球の裏の母とおしゃべり。最近は父に愛想をつかせて近所の教会に通いはじめたらしい。母は総じて男運悪いけど、Jesus Christ はいい男だったらいいねって笑っいあってLINEを切った。身支度をして愛猫のおでこに2回キスして、リスが沢山いる朝の公園にお散歩。

自然の光を浴びながら歩くのが自分の中のメディテーション。研究にせよそれ以外のことにせよ、一番いいアイデアが落ちてくるのはこの時間帯とシャワー浴びるとき。音楽聴いてゆっくり歩いてたら、ランニング中毒の人たちが狩をしてる狼みたいに後ろからすごい勢いで私を追い越す。あんなスピードで疾走してたんじゃ、葉っぱの色がだんだん黄色になってきたことも、雨の次の日から切り株にキノコが生えてきたことも、リスが口いっぱいにほうばってるのが美味しそうな栗だってこともきっとわかんないのに。

インスピレーションはいつも言葉じゃなくて感覚的なエネルギーとしてふわっと空から降ってくるから、それにふさわしい言葉を自分の中で探し当ててく作業を無意識の中でしてるんだと思う:

1. 生まれてからずっと実存的な所在のなさが常にあって、自分の存在を確かめるために 'Other' を知ることに没頭して生きてきたんだと思う。親の精神構造を分析したり、研究したり、恋愛したり、セックスしたりして。 'Other' を知ると世界がわかって安心するから。だけど、これからの新しいチャプターで大切なのは、'Other' に没頭する前に、'Self' の輪郭をまず確かめること。実存的な所在のなさの焦燥感に駆られて、'Self' を 'Other' の単一的な小さい物差しなんかで評価しようとしないこと。自分の可能性を過小評価して小さく纏まろうとしないこと。そうやって生きてきた'Self' をあらゆる社会の物差しから解放して、自分自身の無限の力と美しさと生命力を儀式みたいに毎日毎日身体で思い出せたらいいとおもう。

2. 無条件で猫を美しいと感じ愛するように、無条件で自分を美しいと感じ愛していたい。誰かに恋してドキドキするみたいに、自分に恋してドキドキしてたい。その感覚は少しづつわかってきた。とっても心地のいい'Self vis-a-vis Self'の関係を自分の中で確立した上で、'Other' と交わったら世界はきっともっと美しくて楽しい場所になるんだとおもう。スキルとか、実績とか、山羊座的な「努力」とか、そういうのはあくまでも自分を表現したり居心地よくするための手段であって目的じゃない。Don't confise your means with ends. ドキドキしてワクワクする自分の心がまず何よりも大事で、新しいチャプターはその中からしか生まれないんだとおもう。

3. 最愛の祖母も母ももうすぐこの星を去る。残された父は、自分でグリーフケアをするだけの深い信仰も哲学も持ち合わせてないから、きっと深い絶望で鬱になったり依存症になったりするんだとおもう。でもそれも彼の大切な学びなんだろうし、私は遠くでそれを見守ればいい。日は沈んでもまた昇るし、彼女たちが死んでも、彼女たちが私にくれた美しい思い出や学びや私のこの命は強くしなやかに生きていくんだとおもう。何回死んでも生き返ってくるタイプの命だし、後戻りできないような根本的な変容を遂げるたびにゾッとするぐらい美しい景色を見て来たから、寂しさはあっても恐怖はない。運命の輪がどんどん廻っても、きっと自分は大丈夫だ。

お散歩が終わってドイツの学者とオンラインミーティング。いろんな学者の中で自分のCVが誰のよりも人気で、自分だけ政府系のシンクタンクからお声がかかったらしい。卑屈にも傲慢にもならずに素直に、ありがとう、って笑って答えた。CVだけじゃなくて'Self' が心から満足できて'Other' に貢献するような研究ができたらいいな。

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