アイスランドで巡り会えた、碧い氷山と赤いオーロラ
氷の放つ、凛とした美しさに惹かれる。
幼い頃に目にした、朝日を受けて輝く氷柱があまりにも美しくて、今でも鮮明に思い出すことができる。ひとつまたひとつ、手に取っては溶けてなくなるまで自然のなせる神秘の美しさを見つめていた。
当然のことながら、氷と炎の国として名を馳せるアイスランドには大きな憧れを抱いていた。自然の織りなす巨大な氷河や氷山を間近で見てみたい。
そのチャンスは今年4月に訪れた。
❏ボストン空港からひとっ飛び
日本が「東の果て」なら、アイスランドは北の果て。日本からだと果てから果てへの長い旅になる。が、ボストンからは直行便で5~6時間もあれば着く。
LLCの格安チケットで、
早朝のレイキャビクに降り立つ。
❏SF世界を彷彿させる未来的スパ
ブルーラグーンをご存知だろうか。
アイスランド関連のコンテンツでは必ず目にするスパ施設だ。世界の果てのような荒涼とした自然のなかで異彩を放つ未来的空間。まるでSFの世界に迷い込んだ気分を味わえる。
だがいかんせん高い。時期によっても異なるが最安プランでもその日は大人ひとり14,490アイスランドクローナ(ほぼ1万6千円)だった。かなり悩んだけれど結局行った。ただその決断は間違ってはいなかったと思う。
温泉に出ると見渡す限りのミルキーブルー。白い湯気の立ち昇る幻想的な世界がどこまでも広がる。
ミネラルたっぷりの温泉水が、深夜フライトで疲れた体をゆっくりほぐしてくれる。渡米してから湯舟につかっていなかったのを思い出す。湯舟って最高。チケットに含まれるシリカのフェイスマスクで毛穴をきれいにして、コールドドリンクを楽しんで、結果的には大満足。
❏半端ないアイスランドの物価高
アメリカで物価高に苦しめられてたが、アイスランドはそれを上回る。何といっても高物価ランキングでトップ5の常連国だ(Numbeo.comの生活費指数調査)。卵1ダース800円、レタス1玉450円。
友人の姪「タタ」(ブラジル人)がアイスランドに住んでいるので、後日彼女がボストンへ遊びに来たときに、あの物価の高さでどうやって生活しているのか尋ねてみた。アイスランドでは給与水準も高いので現地で生活するうえでは、さほど困ってはいないのだとか。彼女は付け加えた。「ショッピングを楽しめる店も全然無いしね」と。
彼女によると、アイスランドでたくさん稼いだあと、母国に帰国して優雅なリタイア生活を送るインド人が結構いるという。何とも合理的な人生だ。
❏カーテンみたいなオーロラ、いずれ赤いオーロラ
実はこの旅にはもうひとつ大切なミッションがあった。2年前の記事でも書いたオーロラウォッチのリベンジだ。
結論から言うと、今回はすごく恵まれていて、カーテン状のオーロラについに遭遇できたのだ。それだけでなく、いずれ見られたらと願いを込めて書いた「赤いオーロラ」に限りなく近い赤紫のオーロラにまで遭遇できて、感無量だった。
前回はオーロラ予報サイトの予報値を頼りに動いていたのだが、今回はガイドツアーに参加した。
ガイドさんは「経験上オーロラ予報サイトの数値は当てにならない」と断言。
事実その夜のオーロラ予報値も、10点満点中の3点と低かった。こういうのはプロを頼るに限る。
まずはバスでオーロラの見える場所に移動。太陽が完全に落ちるのをじっくり待っていると、空に霞のようなものがちらちらっと見え始めてきた。
ゆらゆらしてるのが肉眼でも分かる。目を凝らしているとだんだん白色、やがて緑色を確認できるようになってくる。
空が暗くなると徐々に色が明確になってきた。オーロラが生き物のように動き続けているので、目が離せない。
北で活発に動いていたオーロラが西に広がるタイミングで、夢にまで見たカーテンのようなオーロラが現れた。ツアー客の歓声があがる。
子供達は感動でテンション上がりっぱなし。そして東の空ではなんと。。
紫色のオーロラが姿をあらわした。徐々に赤みを増していく。神秘的な赤紫のオーロラだ。
先述のタタのパートナーのアイスランド人によれば、アイスランドでオーロラは日常的なことで、レイキャビク市内に住んでいても家の窓から見えるらしい。それでも赤や紫のオーロラはなかなかない。ラッキーだったね。と話してくれた。
❏氷の聖地を目指して
氷の絶景を見ることができるアイスランド南東部を目指し、レイキャビクから5時間ほどひたすら車を走らせる。
目的地はアイスランドで最大の氷河湖、ヨークルスアゥルロゥン湖。ヨーロッパでも最大級のバトナヨークトル氷河の一部であるブレイザメルクルヨークルト氷河(舌噛む)の先端に位置する。
氷河は何百年もかけて少しずつ崩れ落ち、氷山となって湖に浮かぶ。
氷山の90%は水面下に沈んでいるのでまさに一角しか見えていないはずなのだが、それでも大きい。巨大な生物が息をひそめているかのような威圧感。音もたてずにゆっくりと漂う。
多くは白色で、なかには噴火灰により黒くなったものを見ることもできる。どの氷山もそれぞれに美しく見応えがある。
とりわけ目を引くのがブルーの氷。長い年月をかけて圧縮されてきた氷は不純物が少なく、青い光以外は全て吸収してしまうため、青く光って見えるのだとか。
氷山はやがて氷河湖のすぐ隣りにある大西洋へたどり着く。いくつかの氷が波に打たれビーチにうちあげられていた。その氷たちが、まるでダイヤモンドのように美しく輝くことから、ここをダイヤモンドビーチと呼ぶそうだ。
この日はあいにくの荒天だったが、それでもわずかな光をとらえて氷がきらめいているのが分かる。
氷山として流れてくる氷は、1000年もの年月を経たものもあるらしい。
雪として降り、山の上で堆積して氷河となり、何世紀もかけて山を下っていくと、今度は氷山として水辺を漂う。波にうたれ氷のかけらになったら、あとは水となり空気となって消えていくだけ。
千年もの時を経て、まるで悟りでも得たかのように澄みきった氷は、荒い波音を聞きながら、そっと砂浜に横たわっていた。
※つららの写真はPAKUTASOからお借りしています。
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