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「移動」を変革するスタートアップ2

皆様、お久しぶりです。
サボってたわけではないですよ!

前回から移動を変革するスタートアップと題して、その前半部分として自動車業界に起こっているCASEと呼ばれる変革について触れました。

今回はもう一つの移動の変革でもある
MaaSについて、その意義と関連するスタートアップを紹介しようと思います。

MaaSとは 

MaaSとは
Mobility as aService
の頭文字をとったもので、「移動」に関する新しい概念です。

これ定義としてはまちまちだったりするので、1番信頼できそうな国土交通省のページから引用すると

MaaS(マース:Mobility as a Service)とは、地域住民や旅行者一人一人のトリップ単位での移動ニーズに対応して、複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済等を一括で行うサービスであり、観光や医療等の目的地における交通以外のサービス等との連携により、移動の利便性向上や地域の課題解決にも資する重要な手段となるものです。

国土交通省HPより引用

うーむつまりは
「行きたいところを指定したら経路の提案と決済が一気に出来てしまう」
そんなプラットフォームです。

MaaSの具体例

とは言っても(僕も含めて)ピンとこないので具体例をあげてみます。
実はMaaSにも先進国、後進国があり、世界の中でもトップクラスのサービスが広まっているのがフィンランドです。

なぜフィンランドでMaaSに力が入れられたのかというと

  • 特に首都ヘルシンキで交通渋滞が課題となっていた

  • (国際的に)脱炭素の動き

  • お金が海外に流れてしまう

1つめ、2つめはどの国の都市圏においてもそうなので、そこまでクリティカルな理由にならないと思いますが、3つめはあくまで一説ですが結構重要です。

実はフィンランドには国内の自動車メーカーがありません。なので車に依存した移動に頼り続けると、その車両代や下手したらメンテナンス費まで海外の自動車メーカーに流れてしまうのです。おそらくこれを危惧したが故に政府や自治体が本気でMaaSに取り組んだのではないでしょうか。

では具体的にどういうサービスかというと「whim」というフィンランドのスタートアップ企業が運営するものです。
whimはまさにMaaSの定義とほぼ同様の機能を持っており、目的地を入力すると経路の候補が出てきて、アプリ内で決済も出来てしまいます。
また、特徴としてはサブスクの料金体系を採用しており月額で一定料金を支払えば公共交通機関が乗り放題(5キロ以内はタクシーも!)になるプランなどもあります。

whimが普及した結果、車が中心であった移動手段が鉄道やシェアサイクルなどに移行させる人が増え交通渋滞の緩和につながったそうです。
実はwhimは日本でも実装されており、タクシーやバイクシェアなどの予約決済や1dayバイクシェアといった乗り放題のプランも展開されています。

MaaSの発展過程

MaaSといってもそのレベルは様々であり下記のようにレベル分けされています。

  • レベル0
    移動に関する手段や情報が何も統合されていない状態。

  • レベル1
    情報のみ統合されている状態。行き先を調べればその経路や料金が出てくる段階。グーグルマップなどが該当します。

  • レベル2
    レベル1に加えて予約決済が可能な状態。

  • レベル3
    公共交通機関に加えてタクシーやレンタカーなどの複数の事業者が提携した上で一元化したサービスを提供している状態。

  • レベル4
    レベル3のプラットフォーム上で得られたデータを用いて政策の立案等が行われる状態。交通渋滞や脱炭素の領域での社会課題の解決が可能。

厳密な区分けはないので意見が分かれる場合もありますがフィンランドの場合はレベル4に達していると考えられています。

日本におけるMaaSの現状

では日本ではMaaSはどれだけ浸透しているかというと、先述のレベルで言うとレベル1〜2の間、局所的にはレベル3にいかないくらいの浸透度によります。
意外と浸透していないと思った方も多いと思いますが、ここからは日本におけるMaaSをはじめとしたそれぞれの「移動」についての課題を都市部と地方に分けて個人の考えも含めて、それらの課題を解決するスタートアップにも触れながら考えていこうと思います。

都市部における課題

都市といっても様々なのでここでは東京に絞って話を進めます。
東京における「移動」についての課題といえば真っ先に思いつくのはやはり渋滞でしょう。なのでこの渋滞を防止するためにMaaSが必要となってくるのですが、MaaSを実現するのは一つ大きめな問題があると考えています。
それは
「首都圏の交通機関発達しすぎ・便利すぎ」
という点です。

東京って特に鉄道が蜘蛛の巣のように張り巡らされていて、タクシーやバスもたくさん走っているのであまり移動手段の不足で困ることってないんですよね。
しかも決済についても事前決済していなくてもSuicaなどでスマホ一つあれば全て決済出来てしまうのでこちらもあまり不便に感じることが少ないのではないのでしょうか。

このように交通の不便さを感じないと言う点が特にtoC向けサービスにおいて普及が進まない理由の一つであると考えています。
決済についてもSuicaをはじめとした交通系ICがJRと私鉄でサービス分断している部分(定期とか)があることやPayPayなどの決済システムでは鉄道に乗れないことなどの決済システムの分断なども一つ障壁になっています。

なので東京をはじめとした都市圏における課題はラストワンマイルと呼ばれる「歩くのには少ししんどいけどタクシーに乗るほどの距離ではない」交通空白地帯の移動手段が重要であると思います。ここではこのラストワンマイルの課題を解決するスタートアップを紹介しようと思います。

LUUP

これは知っている方が多いのではないのでしょうか。
最近街でも乗っている人を見たことがある方も多いのではないかと思います。
LUUPは電動キックボード、電動アシストおよび設置ポートを提供するスタートアップです。

基本的には原付と同じで電動なので距離があったり坂があっても楽ですし、料金についても時間制なので例えば1キロくらいの距離であればかなり低料金で移動することも可能ですし、電車やバスのように時刻表に縛られることもないのでとても柔軟性の高い移動を実現することも可能です。使用方法もとても簡単で、設置ポートでアプリを立ち上げて車体のQRコードを読み込むだけです。

ちなみに先ほど「原付と同じ」と記載しましたが、法的には異なり原付が「原動機付自転車」であるのに対してLUUPは「小型特殊自動車」になります。
また、現在は電動キックボードが特例措置として(新しい乗り物なので)小型特殊自動車扱いされていますが、2023年7月より改正道路交通法が施行されLUUPは「特定小型電動機自転車」となります。
こちらの交通ルールなどの詳細は下記のリンクの通りなので確認してみましょう!

将来はLUUPのおかげで都市部の交通空白地帯がなくなるかもしれませんし、自動販売機横やマンションのデッドスペースを設置ポートにするなど土地の有効活用にもつながるなど、街の作り方そのものにも変革を起こすかもしれません。

いずれにせよ、飛行機・鉄道・バス・タクシーに加えて新しい交通インフラとしてLUUPが台頭してくると考えると楽しみですね。

WHILL

前節では電動キックボードを運営するLUUPを紹介しましたが、WHILLはその車椅子バージョンともいえます。

最近では鉄道やバスもバリアフリー化が進み車椅子でも乗車できるようになりましたが、やはりラストワンマイルで移動手段がなくなってしまうのも車椅子で移動する方々も同じです。

その高い操作性やコンパクトに折りたためる利便性、5センチの段差を越えられるタフさなど多くの特徴がありますが、普通の電動車椅子と大きく異なるのはやはりそのかっこよさではないでしょうか。

WHILLのミッションは「全てに人の移動を楽しくスマートにする」です。
かつてメガネは目が悪い人用の福祉用具として扱われ差別対象となることもあったようです。しかし、今ではファッションの一環として目が悪くない人でもメガネをかけるようになりました。
WHILLはデザインをかっこよくすることによって、車椅子ではなくパーソナルモビリティ、つまり誰もが利用できる移動手段を目指しているんです。
下のリンクにその創業に対する想いなどが綴られています。

また、屋内でも使用可能で、羽田空港などで誰でも利用可能です。行き先を設定すれば自動で連れて行ってくれます。
羽田のように巨大な建物などは迷いやすいのでとても便利ですね。

WHILLもLUUP同様新しい交通インフラとして広がっていくのがとても楽しみです。

地方における課題

地方における移動の課題は言うまでもなく移動手段が車に集中していることです。
そもそも日本の地方都市やその郊外は計画的に街づくりができてこなかった結果、移動に関して不便な構造になってしまっていると言われています。

具体的に言うと東京などの都市部は鉄道の駅を中心に街づくりされているのに対して、地方は国道などの幹線道路沿いに街が発達しているという特徴があります。

鶏卵問題なのでどちらが先かは分かりませんが、地方は鉄道の本数が少なく駅間の距離が長いので不便→車にシフトする→幹線道路沿いが発達するという流れあるいはその逆で道路沿いが発達する→鉄道が廃れるというインフラにとって負のスパイラルが形成されてしまっています。

一方で欧米(特にヨーロッパ)の地方の街はコンパクトに必要な商業施設等の街機能が集約されており、路面電車などが整備されていることが多くいかに街の構造が移動の質に影響を与えるのかがわかる良い例かと思います。

日本では宇都宮市で路面電車の整備や秋田市ではコンパクトシティ構想などがありますね。しかし、さらに郊外になると結局は車がないと生活が難しい状態というのが現状でしょう。

ただし、鉄道は建設費も莫大ですし、維持費もかなりかかってしまうので今から鉄道で地方の移動を支えるのは難しいというのが現状でしょう。

つまるところ結局は地方における移動で一番重要なのは車やバスになってきます。では現状のままで良いのかというとそうではなく例えば
・車を持っていない観光客
・免許を返納した方
・そもそも車の免許を持っていない方
これらに該当する人は地方では移動に関してかなり不便を強いられることになり結局は都市部に移動→人口集中などの異なる社会課題の遠因になってしまったりします。

まとめると地方においてはスマホなどでシームレスに確保可能かつシェアリングなどの個人に依存しないモビリティサービスが特に重要になってくると考えられます。

ここではそんなサービスを提供するスタートアップを紹介します。

nearMe

nearMeはドアtoドアの移動手段(スマートシャトル)を提供するスタートアップです。

スマートシャトルは端的にいうと相乗りタクシーのようなものです。
「相乗りタクシーは日本では禁止??」
と思った方もいるかもしれませんが、実は 2021年に法が緩和されています。

現在の法で原則とされているのは1運送につき1契約の原則です。
つまりは一回の運送で複数の客からお金を取ることができないということです。
それではどうすれば相乗りが実現するかというと、乗車前にタクシー利用者をマッチングして相乗り、代表者が運賃を支払えば良いのです。

よく考えると輸送可能人員の観点でいうとタクシーってちょっと勿体無いですよね。
基本的には4人乗せれるはずのタクシーが1人の乗客だけ乗せていたり、複数のタクシーの出発地と行き先がほぼ同じであったりでそのスペックを活かしきれていないのが現状です。

nearMeは例えば羽田空港に行きたい人同士をマッチングした上で自宅→空港の移動を実現しています。タクシーでもこの移動は可能ですが、相乗りする分料金が安くなるのが特徴です。

空港の他にもゴルフ場など車でしか行くのが難しい場所へのドアtoドアの移動を提供しています。
もちろん首都圏だけではなく地方でもサービスを展開していて、観光客をはじめとして便利な移動を提供しています。

まとめ

いかがでしたか?
交通手段が充実していると思われがちな日本においても移動に関する課題は盛りだくさんです。
前回触れたEV化についてもSDGsの動きが強くなるにつれより活発化するはずですし、今後少子高齢化が進む日本においてはシームレスかつ誰でも利用できる移動サービスの登場は必要不可欠です。
航空や鉄道など大手のプレイヤーがメインのこの分野こそスタートアップの活躍がカギを握ります。
スタートアップが持つ革新性と大手が持つアセットをうまく組み合わせて、より良い移動そして街づくりが実現することが楽しみです!

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筆者は何者??
島内 道人(しまうち みちひと)
北海道大学大学院 情報科学研究科 修了
化合物半導体のナノ構造形成に関する研究に従事
→成果論文
学位取得後、インフラ系企業に新卒で入社。大規模システム改良に従事。
その後for Startup, Inc.に入社。スタートアップ支援に尽力しています。

for Startup, Inc.について
for startupsについて 弊社for Startupsは国内有力VCと連携し、有望スタートアップへのヒトの支援(ヒューマンキャピタル)を中心に、CxO・役員クラスのハイレイヤー層を数多く輩出してきました。 また、2017年よりベンチャー投資を始めるなどヒトだけではないハイブリッドキャピタルとして国内の成長産業への支援を行っております。

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