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#永遠の咎

死に語りな猫(下)

死に語りな猫(下)

向日葵の咲かない夏なんてものはないはずだった。

世界の何処かで向日葵は目障りにも太陽を目指して顔を向けるために咲く。

けれど、死にたがりの猫と約束を交わしたあの向日葵はその夏には咲かなかった。

正確に記すならば、約束の次の夏、枯れた向日葵の後に向日葵はやって来なかった。

まるでこの世界から向日葵という種が消え失せてしまったかのように、いや真実それは消え失せてしまったのだけれど。

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死に語りな猫(上)

死に語りな猫(上)

死にたがりの猫が向日葵に登っていた。

「このままその太陽で押しつぶしてくれないか」

枯れかけた向日葵はいいました。

「君の体をこの陽射しで押しつぶしたとしても、それは腐敗するだけだ。君を焼きつくすことはできないし、ましてや消し去ることなど到底無理だ」と。

死にたがりの猫は悔しそうに舌打ちをしながら、それでも向日葵にすがりつき、がりがりと葉に歯を立てました。口の中に溢れる苦い香り。

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