君は私を狂わせる、生態系の頂点
毎日あくせく更新している(たまに観戦に夢中でサボる)私だが、SNSが大の苦手である。
noteが比較的続くのは、書くことが好き、読むことが好きな人が多く、読まれているかどうかは別として、文字に対して真直に向き合っている人が多く見受けられるからである。
逆にInstagramやXは、情報の波に揺れていたい不特定多数の集団のようで、苦手。
「人の意見に流されたくないんだ」と、マントを翻して立ち去ればカッコいいのかもしれないが、「人と意見が合わなさすぎるんだ」と言うサイコパス的な部分が露見されて拗ね拗ねモードになってしまう。
情報収集には使う程度なので、アプリを開いてものの5分あれば、違う作業に入っている。
「暇な時ついつい見ちゃうよね」「夜中は特に止まらないのなんで?」街頭インタビューや、友達、車内での会話の盗み聞きでよく耳にするが、私は全く共感できない。
忙しい時にサッと確認して終わる。と友人に言ったら
「辞書かよ?」と返されて、
お!なんと秀逸!と、拳で手のひらを打つ。
そうそう、色んな人の意見や答えがわかる「生き字引」なのよ!
だが「そうゆう意味ちゃうねんけどな」と一蹴されて、ついに私は口籠る。
そんな夜中にコソコソAVかよ。とこっそり下唇を突き出した私に「子供が聞いてるから」と口を歪ませる。
夜中に止まらなくなるのは、強迫観念が強くなるからだから、作業に追い込みかける時は夜中にやるといい。
「朝活の方が効果的じゃない」
朝は準備運動的に頭動かすイメージじゃん。
「なるほど。よく分かったわ」
「あんたに、SNSが向いてない理由。全て自己完結するもん」
うん、そうか。
「皆んな誰かと繋がってたいの、子供が抱っこねだるみたいにね?」
私は誰だか知らない人と沢山繋がるより、顔を知ってる人が数人いればそれで充分なのだが。
もうこれ以上は水掛け論になるからやめた。
私と姉は、全く似ていない。
血を分けた年子の姉妹なのだが、いつも友人同士と思われている。
顔の好みも真逆で、私は濃ゆい顔、姉はさっぱりした顔が好きな傾向にある。
今は一緒にBリーグの推し活に専念しているが、姉は田中大貴選手が大好きだ。
プレイスタイルや、人柄が好きと本人は豪語しているが、見た目が9割である。
私はそれで大賛成だ。なんだかんだ言っても顔だろ!体型だろ?かっこいいんだもん!見た目が好きでいいじゃない。
街中を歩いていて自分好みの人に何人出会うだろうか?
星の数いる人の中で、ドンピシャリと落雷みたいに好みの人に出会えるなんてまぁまぁ無い。
ましてやそんな偶然の出会いから、毎日眺められる関係性にまで持っていくのは現実的に難しい。
日常から切り離された美学が推しなのだ。
そう言うところを共感できる姉は素晴らしい推し活仲間だ。
が、
二人で推しの話をする際「これ見て!めっちゃかっこいい!」と見せてくれたり、送ってくれる田中選手の写真を見ても、私は全く好みじゃないから「へぇ」くらいなのだ。
自分の推しですらたまに「年中タンクトップ着た元気な三十路」と冷静になる。
急に自分に現実を突き付けてヒリヒリしたがる曲がった癖がある。
「なみの好きな富樫(敬称略)が一番好きな選手なんやで?見た目は大貴(敬称略)が一番ってゆうてるもん!」
この言葉は姉の伝家の宝刀である。
私はこれを振り上げられるともうNO!と言い辛い。
尊い推しの推しは最推しであり、生態系の頂点なのだ。
大貴がいて、それを尊ぶ富樫がいて、その下に私達がいるの。
あぁもういっそ、バッサリと切り捨てられたい。
もがいても仕方がない。
水中で溺れてしまった時も、下手にもがかないでじっとした方が生存率が上がる。
私は心を真っ平にした。
そして大貴を静かな心で吸収することにした。推しの富樫と同じ気持ちになってみたい細やかな変態心もある。
こんな時に役立つのは、もう無理ですごめんなさい!と泣き叫んでも流れ続ける自動供給器官のSNSである。
私は世に溢れる大貴の写真を穏やかに見つめた。
私の「へぇ〜」がアルカイックスマイルになった頃、Instagramの検索はいつの間にやら殆どが大貴たんになった(愛情を込めてニックネームで呼んでます)
ちょこちょこジャルジャルの福徳さんが混ざっているのはAIのご愛嬌だろう。
ご本人のアカウントも覗いた。ふんふん、割と神社仏閣好きなのね?お肉が美味しいのね?
ややあって気付いた。
その片鱗に、私の推しの富樫が惜しげもなくいる事に。
彼といえば、はっきりと歯切れのいい正論で話すインタビューの端々に、抑えきれない「好き」を溢れさせる天才である。
去年も何かと田中大貴大好き発言でBリーグ界隈を賑わせた。
ちょこちょこと、やりとりされる2人のコメント。
惜しみない富樫のハートの連打。
全く外ではドライで、勇樹の「ゆ」の字も出さない大貴たんが、コメントではデレている。
事件や!!
私達は慄いた。
オタクに限らず、女という生き物は好きな何かがいちゃこいているとキュンとするものなのだ!
「え?付き合ってる?(妄想)」
「いや、どうやろな、富樫の片思い?(妄想)」
「何年片思いやねん、拗らせすぎやろ(意見)」
「初恋てそんなもんやん、しかも絶妙な距離感でずっとおんねんで?好きな先輩おって、卒業したら同業で、そしたらもう先輩後輩じゃない少女漫画あるあるや(意見)」
「何それ、うらやま(憧れ)」
「仕事楽しすぎるやろ(憧れ)」
「あ!デートしてる!(幻覚)」
「え?富樫サイドは無言やけど!(確認)」
「ちょま、え?えぇ?(困惑)」
会話に一気に現実味が失せるのも、推し活の醍醐味。
この2人のやり口(失礼)は、プライベートで繋がっているのにSNSで堂々といちゃつき、いざ公式戦で当たっても絡みほぼゼロで期待を裏切ってくるところである。
年末のサンロッカーズvsジェッツ戦は目を皿のようにして見ていた。もう血眼だった、たぶん毛細血管切れた、3本。
年明けのオールスターでは大貴たんがいない中、富樫が若いツバメの金近選手といちゃこいたインスタライブをしていたのを見て、どれだけ我々が肩を落としたか。
リゾートホテルのテラスでフレンチトーストだと?!けしからん。
女心、振り回しすぎじゃない?
勝手にぶん回されてろ!の声が聞こえそうなのでそろそろ黙る事にしたいのだが。
急に姉からのLINE。
「デートしてる!!」
え、2人でブルーノのツアー行ってたの?!
慌てて確認した大貴たんのストーリーズには、定点カメラ?と思われる程に手ブレのない動画と富樫勇樹の#️⃣
その昔、有名人同士がこっそりお付き合いし、さりげなくSNSでアピールすることを「におわせ」なんて言って騒いでいた。
楚々とした慎ましい、日本人らしい行為だと私は思うようにしていたが、内心「面倒だな」とも思っていた。
なぁ、いっそさり気なくにおわせてくれ、お二人さん!
もう、あたりはプンプンにおってるよ!!
「さっさと結婚すればいい」「あ、推し同士の結婚、一石二鳥でめっちゃ得やん」
オタクはすぐ結婚させたがる生き物です。
やっぱりSNSは碌でもない。
疲れた目を使い捨てのホットアイマスクで温めながら、私は布団に潜り込む。
勝手に幸せすぎて疲れた。
東京オリンピックで、女子サッカーアメリカ代表と、女子バスケアメリカ代表のキャプテン同士がパートナーで、ダブル金メダルだったことを思い出す。
先にサッカーの試合が終わったので、パートナーが金メダルを獲る瞬間を幸せそうに観戦していた姿が微笑ましかった。
スポーツは平和の祭典だし、これからこんなシーンがもっと増えるといいな、と切に私は願う。
ところで今年のオリンピックで、キャプテン富樫率いる日本の男子バスケが金メダル取ったら、大貴たん花束持ってパリまでお迎えに・・・
全てただの妄想なので悪しからず。妄想の中では全てがフリーなので。
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