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ココロ、タギル、インド🇮🇳

実は私はインド力が高めの女である。

理由は、アーユルベーダの10年選手だからだ。

アーユルベーダ[5]〖梵 Ayurveda〗
〔生命の科学の意〕
インドの伝統医学。オイル‐マッサージなどにより、人間の生理機能のバランスを整え、病気の治療・予防および健康増進を図る。

困った時はいつも大辞林に助けてもらうんだ

少し美容通の方くらいならご存知であろうと思うが、インドはカレーとRRRしか興味のないguysにもお伝えしておくと、大辞林に書いてある通り歴とした医学である。

エステではなく、医療の一環なのでそこだけは強調したい。
基本はリンパマッサージなのだが、これに使うオイルが医薬品になり、扱うにはインドの医師免許が必要。
私が通っているサロンは、オーナーが免許を持っていらっしゃる本場さながらのサロン。年に何度もインドに渡り、オイルを入手しがてら新しいインドを学んで帰国する、インド人の次に右に出る者のいないインド通だ。

マッサージと言うと、有名なのはいい香りで肌もしっとりする癒しの「バリニーズマッサージ」が主流だが、同じマッサーでもインドはそんなに甘くない。

激痛だ。

そもそもリンパマッサージなので、むくみの帝王の私が毎回無事に帰れるはずがない。
医薬品のオイルをたっぷり使い、皮膚から吸収させながらリンパを流す「アビヤンガ」は、一言で言うと苦行だ。
マッサージをする側の苦労も然る事ながら、受ける側も捨て身の覚悟で挑まねばならない。健康のため、健康になれば美容にも繋がるし、私はこれで30年連れ添ったアトピーと別居出来た。
それだけでも、いい大人が紙パンツ一枚でオイルまみれで泣き叫ぶ価値はある。

大袈裟だと思うだろう?仰々しいと思うだろう?

あなたは、生きたまま骨から身を剥がされたことはあるだろうか?何を隠そう私もないが、そうとしか表現しようのない痛みだ。なんなら終わった後少し記憶が飛んでいる事もある。

だが、苦行はなんの為にあるだろう?

そう、悟りを開くためさ。悟りとは「知る事」
算数の答えは計算したり公式を学んで情報を足していくが、悟りは要らないものを削ぎ落として、一番奥にあるシンプルなものを「知る事」
煩悩が一緒に削ぎ落とされ、喪失し、目の前のやるべき事に目を向けれる様になる。一石二鳥ではないか。

とは言え、痛いのは嫌だろう。
だが、毎日早起きしてバランスよく食事し運動するにも、暴飲暴食をして一晩中遊ぶにも体が資本なのだ。
健康でないと悪くはなれない。その創造と破壊こそ、アーユルベーダの生まれたインドのヒンドゥー教の教えではないか。
とか言い出したら色んな所から叩かれそうなのでこれ以上は言わないが、これだけは言いたい。

何年もかけて悪くなった体が、なんの努力も苦労も無く一瞬で良くなることはない。
だが、少しのリスクで健康へ加速させてくれるものはある。

何事にもリスクはつきものだ。
シャンクスが利き腕と引き換えにルフィを救ったように、私は健康と引き換えに自ら決して安くない金を払い、紙パンツ一枚になり、月に一度聞いた事もない声を張り上げ、自尊心を捨て去る。
この歳になっても月に一度、初めての自分に出会えることも素晴らしいじゃないか、と枯れかけた喉をハーブティで潤すのだ。



だが、アーユルベーダはこの拷問とも言えるマッサージだけではない。

みんなの大好物「シロダーラ」だ。

これは、テレビでも見たことがある人もいると思うが、ジャングル育ちの人が読んでくださっている可能性もあるので説明させていただきたい。

さすがに大辞林にも載っていなかったので、私流でさせて頂く。

仰向けに寝転んだ状態で、脳天に人肌くらいの温度のオイルをゆっくり垂らす施術で、「脳のマッサージ」とも呼ばれている。
そう言うと一気にマーズアタック感が出るし、ホラー味も増す。だが、一回騙されてくれ。
後生だ、騙されてくれ。
なんの保証もないが、私に騙されてくれ。
私の勢いにビビらないで騙されてくれ。

気持ちいい。そうとしか言いようがない。
頭の中が本当にすっきりして、「ゴミの日1日間違えて出し忘れた」レベルのイラつきなら本当にどうでも良くなる。

私は考え事が上手くまとまらなくなった時や、何を考えてもマイナスに行きつき出した時に受ける。
人は1日に未来のことを約20回考えるらしいが、その全ての着地点がマッドマックス怒りのデスロードに繋がり出すと受ける事にしている。

まさに地獄に花が咲く、リラックスには最高なのだ。

さらに脳が「覚醒」するらしい。

ここまで推しておいて急にすまないが、これはわからん。

だが、なんらかの覚醒を経験した人がいるのだろう。
カイトの死を知ったゴンがゴンさんになったレベルの覚醒は、アルカがいないと取り返しがつかないので御免被りたいが、スーパーサイヤ人レベルは吝かではない。
むしろ有りだ。

「覚醒してぇな」

過去に3回受けたが、覚醒はなかったし、その概念がなかったので近づいていたとしても、気付かずにやり過ごしてしまった可能性がある。

石を投げられた!と思って避けたら飛行石だった!なんてミスは、ラピュタを知っているからこそ防げる事である。それを知らなければムスカ大佐も「無礼な!当たったら大怪我だぞ!」と全力で避けて憤怒するだろう。

覚醒の事実を知った私はもはやラピュタの王と言っても過言ではない。本当に人がゴミのように見えるのか、人間をそこまでやめれるのか体感する価値はあるだろう。


「シロダーラお願いします」

時は来た、それだけだ。

私は意気揚々と台に寝転び、頭を差し出す。今日は新しい私の誕生日だ、帰りにハーブスで文庫本くらいデカいショートケーキを食べてお祝いしよう、

シロダーラは人にもよるが、私は始まって5分で意識が遠のく。
深く眠ってしまう事で一度臨死を体験し、覚醒という形でこの世に舞い戻るのであろう、その工程はさながら不死鳥。

私は落ちた。
そして落ちた先で夢を見た。
私は壇上に立ち、たくさんの光と脚光を浴びながら、重鎮感がある落ち着いた紳士にエスコートされ、新しいユニフォームに袖を通していた。

ユニフォーム?

そして、胸を騒がせながらキャップを受け取り、深々とかぶった。

そこで目が覚める。

「なみさん、覚醒早かったですね?まだ少し時間ありますよ」
スタッフの声に愛想笑いを浮かべ、少し動いて背中を落ち着ける。
「夢を、見てました」
「え?どんな?」
「多分・・・ドラフトで一位指名受けてます」
「野球?ですか?」

ポジティブな事に変わりはないが、登りつめた後に起きる能力の解放の「覚醒」と言うよりは、お前まだバッターボックス立ったとこだから。と、現実を突きつけられた感がすごい。

ラピュタの王?片腹痛いわ、ポムじいさんのとこからやり直せ!

インドの力を借りても覚醒はまだ早いらしい。

笑えるエッセイまとめてます、どうぞよしなに↓

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