見出し画像

【救急疾患を知ろう】 胃腸炎

今回は胃腸炎についての説明です。
胃腸炎は救急疾患ほどではないのですが、最近やたらと若年者の胃腸炎症状で搬送される方が多いので緊急で作成しました。
私は胃腸炎ユーザーなので、昔から胃腸炎になっても「あー、きたな」程度で済むのですが、最近は20-30代で初めて胃腸炎になる方がいるのか、びっくりして救急車を呼ぶ人が増えているようですね。
実際、救急車が必要ないケースが多いですが、症状からはどうにもこうにもしようがない状態になったりプチパニックになったりする方も多いので、きちんと原理を理解してもらおうかと思います!
ちなみにこの記事の内容は海外に行かれた人(=海外渡航歴あり)には適用しません。渡航歴のある方で胃腸炎様症状がある人は有無を言わさず受診しましょう。

ではいきましょう!

胃腸炎とは

胃腸炎っていってもほとんどの人がイメージはできるのではないでしょうか。
「気持ち悪くなって吐いて、下痢して、お腹が痛くなる」など。
本当にそのまんまです笑
ですが少し医学的に説明します。
腸炎患者の9割以上に吐き気があり、9割近くが下痢をします。腹痛は8割弱程度でみられます。総じて多くの場合が吐き気と下痢と腹痛を認めます。また加えて、風邪っぽい咳や鼻水などもみられることもあります。
主に感染経路は口からです。原因物質を摂取することもそうですが、腸炎になっている人が触ったものを手で触れて、それを口にすることでも感染します。手洗いが十分であれば感染はある程度防げます。

一般の人からしたら、胃とか腸とかの区切りはあまりないかもしれません。
胃腸炎と言っても胃炎が全面的に出ているケースは少なく、多くが腸炎です
そして腸には小腸と大腸がありますが、それぞれの腸で炎症の症状が異なります。小腸型の腸炎と大腸型の腸炎の特徴を見ていきましょう。

  • 小腸型
    小腸からの分泌物が増加することにより頻回・大量の水様便便というかもはや水
    痛みはあるが強くはない

  • 大腸型
    腸の粘膜が破壊される、少量だけど頻回の下痢で痛みが強い
    場合によっては血の混じった便やどろっとした粘度の高い便がでる

下痢と吐き気や嘔吐は共通して見られます。
小腸型と大腸型に区分する必要があるのか、と言った疑問もあるでしょうか。
小腸型は脱水が強くて体重が減るほどのもの以外、ほとんどの場合怖いものはありません。
大腸型は細菌性もちらほらいることや、O-157などの怖い菌によるものあることから注意が必要です。下痢が出て血が混じっている、牛肉を扱うご飯屋さんで食中毒がでているなどの場合は大腸型の腸炎の可能性があります。
よって、区別はしておいた方が良いですね!


原因微生物(菌やウイルスなど)

腸炎の原因の9割以上が感染性で、その多くがウイルスです。
わずかに細菌によるものがあり、残りは原虫といった珍しいものや非感染性のものでも起こります。
このセクションでは感染症によるもので、特にウイルス性と細菌性、そしてそれを引き起こしうる食物などを紹介します。

ウイルス性

ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルス、アストロウイルスなどがあります。
ノロウイルスは有名ですね。牡蠣などの海産物や船旅での食事はリスクとなります。
ロタやアストロウイルスは小児がおもに感染します。ノロウイルス以外は特定の食事はなく、感染した人からの感染が主です。

細菌性

  • O-157(腸管出血性大腸菌):牛肉(ハンバーガー、ユッケ)

  • カンピロバクター:鶏肉

  • サルモネラ:鶏肉、生卵、マヨネーズやクリームを使った調理食品、海産物

  • 腸炎ビブリオ:海産物

  • セレウス菌:おにぎり、チャーハン、再加熱食品

  • 黄色ブドウ球菌:あらゆる食品で多いが、手が直接触れている食品がメイン

他にも複数ありますが以上が代表的なものです。
いずれも腸炎自体には大した影響はありませんが、合併症に危険なものがあります
上記食材を摂取後に腸炎の症状がある場合は注意してください。

症状が出るまでの時間(マニアックの部類です)

摂取もしくは接触してからの発症時間にも差があるので提示しておきます。

  • 数時間:黄色ブドウ球菌、セレウス菌、ウェルシュ菌、腸炎ビブリオ

  • 十数時間:ウェルシュ菌、O-157、サルモネラ、腸炎ビブリオ

  • 1日以上:カンピロバクター、O-157、サルモネラ、腸炎ビブリオ

特に、黄色ブドウ球菌とセレウス菌は非常に早い可能性があります
素手で作ったご飯や、チャーハンなどを食べて、すぐなった場合はこれらの微生物が問題になっている可能性があります。


対応、治療について

腸炎のほとんどがウイルス性であり、特効薬が使えるウイルスによる腸炎は少ないです。
よって原則は対症療法といって、脱水なら水分補給をするなどになります。以前にウイルスなどについて書いた記事を出しておきますね!

また、細菌性であっても最初から抗生物質(抗菌薬)を使わないといけないと言うことはありません。
いずれにしても最初は対症療法となります。
ただし、前述したように下痢の回数が多すぎて高度の脱水になることがあります。特に子供や高齢者には注意が必要となります。
下痢をしすぎて体重が減るなんてことは想像されないかもしれませんが、子供・高齢者は水分が減りすぎると体重が減ることは不思議ではありません。
なので日頃から体重を把握しておく、飲んでも吐く場合は点滴をしてもらうなどの対応は知っていてください。

昔は下痢止めの薬は良くない、菌やウイルスを出すための生理的な反応だ!という論が根付いていました。
今は血の混じった便がないなどの、ある条件を満たすなら使用はでき、経過も良くなる報告があります。

細菌性の場合、特にO-157などは腸炎自体に問題があまりなくても、合併症があるため注意が必要です。腎臓が悪くなったりする可能性もあるため、牛肉の食事歴+腸炎症状(大腸型)は病院受診を考慮してください。

ただし、歩行が可能なのであれば救急車が必須ではありません。下痢が頻回であっても救急車とタクシー、自家用車での送りでも状況は変わりはありません。
救急車利用の適性は考慮してください。


まとめ

胃腸炎はほとんどが腸炎症状で、それにも大腸型と小腸型に分かれています。
小腸型は大量水様下痢、大腸型は頻回だけど少量下痢でお腹が痛くたまに血の混じった便がでます。
ほとんどがウイルス性で、口から感染しますが、まれに細菌性もあります。いずれも対症療法で、ひどい場合には入院したり抗菌薬を使用します。
受診の目安は、脱水がひどい、小児や高齢者で体重が減っているなどがあげられます。

いかがでしたでしょうか?
なったことない人からしたら、腸炎はよくわからないものですが、一度なるとめちゃくちゃきついのがわかるでしょう。
そうなったときも、上記知識があれば落ち着いて対応ができると思います。

お疲れ様でした!!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?