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Twitterで考察! サウナブームの構造

ここ数年、多くのメディアで取り上げられ、話題となった「サウナ」。

決して突然現れた文化ではなく、以前から多くの人に愛されてきたはずのものであるにも関わらず、にわかに「サウナ」と耳にする機会が増えたような気がします。
  
著名人がサウナを推奨したり、サウナに詳しい専門家が現れたり、サウナに関する記事をたくさん見かけるようになったり、サウナの色々なグッズが販売していたり。そして、いつの間にか友人や同僚がサウナに足しげく通うようになっていたり。noteでもハッシュタグ「#サウナ」のついたnote記事が3938件(2020年11月5日現在)投稿されているようです。
  
サウナに通う人のことを指す「サウナー」や、サウナに通うことを指す「サ活」をはじめ、サウナを出た後に食べる「サ飯」、サウナに行くために遠方まで足を運ぶ「サ旅」など、新しい言葉も生まれています。

旧来の文化であるにも関わらず、近年にわかにトレンド化した「サウナ」。果たして、この「サウナ」のトレンドとしての現在地は一体どこなのでしょうか。Twitterのクチコミの観測を通じ、考察したいと思います。

「銭湯」を抜き、加速する「サウナ」

果たして、「サウナ」は以前よりも人々の間で語られるようになったのでしょうか。

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「サウナ」「銭湯」のオーガニックツイート(※1)を分析/集計期間:2017年9月~2020年8月(※2)

2018から2020年まで3年間の「サウナ」のツイート数を追ってみると、
2018→2019年:1.0倍(前年対比)
2019→2020年:1.7倍(前年対比)
と、加速度的に増えてきていることがわかります。

そして、ほとんどの場合において「サウナ」は「銭湯」の中の一要素であるにも関わらず、2020年には「銭湯」のツイート数を超え、「サウナ」が語られるようになってきているのは見逃せない兆候です。

そして、3年間のツイート数の分布を重ね合わせてみると、2020年に発生しているトゲ状の山(短期で発生している話題)の一つひとつが過去よりも大きく、高頻度で発生していることが読み取れます。

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「サウナ」のオーガニックツイート(※1)を集計/集計期間:2017年9月~2020年8月

「サ活」「サ飯」「サ旅」が示すサウナの自分ゴト化の推進

過去3年の観測において、「サウナ」だけでなくサウナに通う活動を指す「サ活」も約47倍伸びていることが確認できました。

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「サ活」のオーガニックツイート(※1)を集計/集計期間:2017年9月~2020年8月(※2)

また、3年間の「サ活」ツイート数の分布が以下のグラフになります。

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「サ活」のオーガニックツイート(※1)を集計/集計期間:2017年9月~2020年8月(※2)

2017年9月からの観測において、2018年2月頃に初めて「サ活」のクチコミの発生が確認されました。その後、サウナ情報ポータルサイト「サウナイキタイ」では2018年4月に新機能の「サ活」をリリース。2018年10月に実施された「サ活」のキャンペーンなどを経て、「サ活」は少しずつ活用されるようになり、この一年で目覚ましく浸透したことがわかります。

では、「サ活」の中身に踏み込んだ内容の言葉については、果たしてどうなっているのでしょうか。サウナの後に食べる食事を表す「サ飯」や、サウナの旅を表す「サ旅」の直近3年間のツイート数の推移を調べてみたのが以下のグラフです。

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「サ飯」「サ旅」のオーガニックツイート(※1)を集計/集計期間:2017年9月~2020年8月(※2)

3年間で「サ飯」は15.5倍に、「サ活」は14.0倍に増加していることがわかりました。特に直近1年間のツイート数の伸びは大きく、「サウナ」や「サ活」と同様の傾向になっていることが確認できました。

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「サウナ」より抽象度が低く具体性の高い「サ活」、そして「サ飯」や「サ旅」が揃って経年でツイート数を増やしていることは、「ドラマが面白い」や「好きな有名人がサウナ好きらしい」というような表層の話題だけでなく、行動レベルまで深く浸透を進めている証拠であると推察されます。

サウナはもはや男だけのものではない!「サウナ女子」の台頭

男性専用のサウナ施設も多く、男性イメージの強いサウナですが、女性専用サウナや女性が通いやすいオシャレなサウナも増えてきているように思います。Twitterにおいては女性がサウナについて発言している様子も散見されます。

特定のモノやコトが好きな女子のことを複合名詞で〇〇女子とよく言いますが、「サウナ女子」のツイート数を直近3年間で調べたのが以下のグラフです。

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「サウナ女子」のオーガニックツイート(※1)を集計/集計期間:2017年9月~2020年8月(※2)

2018年から2019年にかけてはほぼ横ばいとなりましたが、2018年から2020年にかけて2.1倍に増えていることがわかりました。男性だけでなく、女性にもファンが増えていることも、サウナ文化の拡大に寄与していると推察されます。

奥深いサウナの魅力の生み出す「サウナサイクル」

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なぜサウナがこれほどまでに急激な文化的浸透を深めているのか。それを考える上で理解しておくべき、基本的な「サウナの楽しみ方」が上図です。サウナの魅力の奥深さにつながっているのはシャワーを浴びた後の工程である「サウナサイクル」にあると考えられます。

STEP1 サウナ室
シャワーを浴びた後入る「サウナ室」からサウナサイクルは始まります。
まずはじっくりと汗をかきます。湯舟に一度浸かってから入る場合も多いです。

STEP2 水風呂
サウナを出た後は、汗をかけ湯やシャワーで流し、水風呂に入ります。

STEP3 休憩
水風呂を出た後は、体を拭いて椅子やリクライニングで休憩します。
屋外で休憩するスタイルの「外気浴」も人気で、外気浴のできるサウナを探して行くサウナーもいるようです。

そして、このSTEP1~3を一つのサイクルとして、喜びと安らぎにつながると言われています。3回ほど繰り返すことでサウナ特有の心地よさである「ととのう」という状態に至ることがありますが、「ととのう」かどうかについては体調や個人差があると言われています。ちなみにこの心地よさは、高温のサウナと低温の水風呂を交互に入る「温冷交代浴」の効果から生まれているそうです。

サウナサイクルひとつとっても、シンプルなように見えて、知れば知るほどに世界が広がっていき、語りたくなる要素が増えていきます。このサウナーの語りたくなる要素の多さが、サウナブームを支えているに違いありません。

サウナの主役は「水風呂」説

過去3年間、「サウナ」とともに語られた言葉である関連語のうち、もっとも多かったのはサウナサイクルのSTEP2を担う「水風呂」でした。

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「サウナ」とともにツイートされた関連語をランキング形式で表示/集計期間:2017年9月~2020年8月(※2)

最初、サウナ未経験者の多くが「冷たすぎて入る意味がわからない」水風呂ですが、水風呂こそがむしろサウナの醍醐味であると考えているサウナーも多いそうです。

水風呂は水質や広さ、深さ、水温のような個性を持っており、サウナの楽しみ方を広げています。良質な天然水の水風呂で「飲める」ことを売りにしている所もあり、そういった独自の個性を持ったサウナもまた、サウナの話題の盛り上げに寄与していそうです。

加速する「ロウリュ」「アウフグース」「熱波師」

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「ロウリュ」とは、フィンランド語で「蒸気」を表し、サウナストーンに水をかけ、蒸気を発生させることを指します。水にアロマを入れることで、香りとともにアロマが持つリラクゼーション効果を得ることができます。この方法で入るサウナ入浴法そのものや、「ロウリュはじめます」のような合図とともにスタッフが行う一連の演出をロウリュと呼ぶ場合も多いようです。

そして、スタッフが発生した蒸気を撹拌し、入浴者に風を送ることを「アウフグース」といいます。アウフグースで生まれる風のことを「熱波」、この熱波を送る送り手となるスタッフのことを「熱波師」と呼びます。

このようなサウナの楽しみ方に一歩踏み込んだ話題についても、日々多くの人がクチコミをしています。

「ロウリュ」「アウフグース」「熱波師」のツイート数の推移について調べてみたのが以下のグラフです。

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「ロウリュ」「アウフグース」「熱波師」のオーガニックツイート(※1)を集計/集計期間:2017年9月~2020年8月(※2)

「ロウリュ」のツイート数は3年間を通じて最も多く、2018年から2020年にかけて1.4倍の伸びを見せました。一方、相対的にツイート数は少ないものの、アウフグースは4.6倍、熱波師は3.9倍と大きな伸びを見せており、話題の深化が着実に進んでいると考えられます。

逆風の中でも語られる「サウナフェス」「アウトドアサウナ」

2015年に初めて開催され、それ以降毎年恒例のサウナイベント化した「SAUNA FES JAPAN(サウナフェスジャパン)」をはじめ、各地でサウナフェスが開催されるようになっています。

今年開催されるはずだった「サウナフェスジャパン2020」は、過去最大規模での開催を予定していたそうですが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止となりました。

「サウナフェス」のツイート数は2018年から2019年にかけて3.4倍に増えたのに対し、2019年から2020年にかけても3.2倍とほぼ同様の伸びを見せていることから、サウナをテーマにしたイベントゴトへの期待感が高まっていることを表していると考えられます。

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「サウナフェス」「アウトドアサウナ」のオーガニックツイート(※1)を集計/集計期間:2017年9月~2020年8月(※2)

一方、屋外で楽しむサウナを表す「アウトドアサウナ」は、2018年から2020年にかけて7.2倍の伸びを見せており、屋外でサウナを楽しむこと自体も浸透を進めていることを表しています。この「アウトドアサウナ」の浸透は、状況が変わり「サウナフェス」の開催が叶った際、盛り上がりを加速するエンジンになりえるかもしれません。

Twitterの観測から見えたサウナブームの構造

ここまで、「サウナ」のトレンドとしての現在地を明らかにすべく、Twitterのクチコミを観測してきました。

ツイート数としては「サウナ」が「銭湯」を超えたことを確認し、サウナ行動を示す「サ活」「サ飯」「サ旅」の伸びからサウナの自分ゴト化が進んでいることが推察されました。また、従来男性を中心とした文化であったサウナですが、「サウナ女子」の参画がサウナを盛り上げている一因となっていることが確認できました。

そして、一連の「サウナ」行動を分解するとその奥深さが分かり、その中でも「水風呂」がもっともサウナととも共に語られ続けているという興味深い結果を得ることができました。サウナについて少し掘り下げた話題である「ロウリュ」「アウフグース」「熱波師」においても、大きな上昇傾向が見られました。

「サウナ」は一見シンプルな行いのように見えて、掘り下げていくほどに多様なハマる要素を持っており、体験したい・する人が増えることで広がっていった様子が見受けられます。もしかすると、従来とは違った視点からその魅力を捉えなおすことで自分ゴト化し、応援する人が現れることで、「サウナ」のような盛り上がりにつながるものは、意外と皆さんのそばにもあるのかもしれません。

【参考】サウナー御用達ドリンク「オロポ」の作り方

サウナーがサウナを出た後によく飲むドリンクに、「オロポ」というがあります。サウナでもご自宅でも手軽に作れますので、気になった方はぜひ試してみてください。

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●準備するもの
・オロナミンC
・ポカリスエット

●作り方
・1:1の割合でオロナミンCとポカリスエットを混ぜる

ちなみに「オロポ」の直近3年間のツイート数は以下のようになります。「オロポ」もまたサウナブームを支えている要因の一つに違いありません。

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「オロポ」のオーガニックツイート(※1)を分析/集計期間:2017年9月~2020年8月(※2)

※1 オーガニックツイートは、リツイートなどによって拡散されたツイートを除き、一次発信されたツイートのみを指します
※2 本記事において「2018年」は2017年9月~2018年8月、「2019年」は2018年9月~2019年8月、「2020年」は2019年9月~2020年8月を指します
※本記事のデータは全て、ソーシャルリスニングツール「ブームリサーチ」を活用して算出しています

鈴木 崇太(すずき そうた)
ソーシャル文化研究所 文化観測士。制作会社にてプロモーション・イベントのディレクションを経験後、 2011年にトライバルへ入社。SNSを基軸とした企業のコミュニケーション設計に従事する。SNSと街の観察に基づく「生活者の気持ちに寄り添った」企画の設計を得意とし、2018年には「ポッキー&プリッツの日」のプロモーション施策であるTikTokキャンペーン「#ポッキー何本分体操」を手がけた。
Twitter @suzukinosonzai

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