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「本を出したい」ー夢が始まった日


私には、「いつか自分の本を出す」という夢がある。

そう思うようになったのは、就活がきっかけだ。



もともとは本が好きというより、本屋が好きだった。
本屋では、誰もが知る有名な分厚い本の隣に、見たことも聞いたこともない小さな本が並んでいたりする。架空も現実も色とりどりの人生が、小さな箱に詰まっていることにロマンを感じていたのだ。

「ロマン」は日本語で “潤いや安らぎを与えてくれるものとして求めてやまない世界” 、フランス語では “小説” という意味を持ち、本屋にロマンを感じるとはよく言ったものだ。




迎えた大学3年生の夏。
私は理系専攻であったが、新たな道を志して文系就活を始めた。

周りはほとんど大学院進学。就職する人も、知る限りでは理系就職しかいない。
就活の相談をしていた友達も文系、藁にも縋る想いで登録した就活サイトのメンターも文系出身だった。

性格も環境も違う。理系のスケジュールで就活と両立する苦労は、いくら話しても理解してもらえるものではなかった。段々と、誰にも本心では相談できなくなっていた。


その悩みは一人では抱えきれない大きさにまで膨らみ、同じような人がいないかネットで検索してみた。
しかし出てくるサイトは表面的な事だけを書き連ねて、結局「このサービスに登録してみよう」と広告を載せるものばかり。
呆れて、次に本を探した。
同じ経験をした人が、私のような人のために書いた本はないだろうか。
でも、欲しい本には出会えなかった。


頼れるものが何もなくなり、私は絶望して文字通りに頭を抱えた。
その時、急に「本を出したい」という衝動に駆られた。

私が私のために、私の欲しかった本を書いて、出したい。



パンパンに膨らんでいた悩みが、ほんの少し萎んだ。




当時は「本を出したいって思うなんて、相当追い込まれているな」と嘲笑うもう一人の自分もいたが、就活を終えても想いは変わらなかった。

色とりどりの人生が小さな箱に詰まっている本屋。
その一部に自分がいなければ、自分が、自分と同じような人々が皆、世界から排除されてしまう気がした。
あの状況で本を出したいと思ったのは、逆が成立しない、私だけの真の命題だったのだと思う。


本は作者の手元を離れ、ひとりで飛び立っていくものだと思う。
私が私のために書いた本も、手に取った人の人生と共通点があって救いになったり、逆に一切共通点が無くて面白がってくれたりするかもしれない。
それほど幸せなことは無い。
だから、本を書きたい。





noteを始めたのは、文章を書く練習をしたかったからだ。

いつか、私は私の本をこの大空に飛び立たせる。
決意を胸に頑張っていきますので、応援しれくれると嬉しいです。





※ロマンの日本語の意味は、三省堂『新明解国語辞典第七版』より一部引用。

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