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料理好きのための21世紀料理教室

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低温調理、エスプーマをはじめアルギン酸のカプセルなどの分子料理のテクニックを解説していきます
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2022年5月の記事一覧

〈謎野菜シリーズ〉アーティチョーク

謎野菜シリーズ。今回はこれから旬を迎えるなんとも不思議な野菜『アーティチョーク』です。 トゲトゲの鎧のような見た目がなんとも印象的。アーティチョークは地中海沿岸を原産地とするアザミの一種で、つぼみを食べます。品種が多く、左側のトゲがある紫がかった品種はイタリア料理でよく使われ、右側の品種はフランス料理で好まれます。歴史的にはフランスよりもイタリアの方が古いようです。 選ぶ場合はつぼみが締まったものがいいようです。茎の部分をさわってフニャフニャになっているものは鮮度が悪いの

Reproレシピ サーモンのムニエル

鮭のムニエルは昔、家庭科の調理実習の定番でした。ムニエルという調理法は鮮度の悪い魚でもおいしくできるので時代背景を考えると適していたのかもしれません。ムニエル(meunier)とは製粉業者のこと。食材に粉をまぶしバターで焼いた料理を指します。 僕がよくつくるのはカスベのムニエル。もちろん、サーモンでもおいしく作ることができます。 動画を見てもらうとわかるのですが、バターを入れるとフライパンの表面温度がみるみる下がります。(Reproを使うとその変化がよくわかります) ム

半熟卵の作り方

Reproレシピシリーズ。 ReproレシピのシリーズはReproが絶対に必要というわけではありません。例えばこちらの半熟卵は97℃で茹でるものですが、実際には必ずしも97℃である必要はないでしょう。ただ、温度について意識的になるきっかけになるレシピかな、と思って動画にしてみました。 この半熟卵には瓢亭風という名前がついています。瓢亭に勤めている人に言わせると「ただの半熟卵ではなくて色々あるんですよ」という意見があるのは承知の上で、白身にはしっかりと火は入り黄身はとろとろ

ホットケーキは140℃で焼きはじめて180℃で焼き終わりとするのがベター

温度調整ができるIH調理器『Repro』を使ったレシピシリーズです。今回はホットケーキ。海外でもこういった温度調整できるIH調理器が発売されていますが、鍋を限定しているものがほとんど。reproはIHで加熱できる鍋であればほぼすべて完璧な温度コントロールができるので、用途によってフッ素樹脂加工のフライパンからストウブのような鋳物の鍋まで色々と使える&IHを使っている人であれば新しく鍋を買う必要がない、というのも売りです。 材料 薄力粉 100g 砂糖  15g ベーキングパ

トマトの湯むきは90℃で上手くできる

温度調整ができるIH調理器『Repro』。そのレシピから今回はトマトの湯むきをご紹介。 元になったのは『千葉市が選ぶ科学論文』で平成25年度に優良賞に選ばれた小学5年生(当時)の子の研究「トマトの湯むきを探る〜成功するコツ教えます〜」です。指導の先生が「誰が行っても成功するトマトの湯むきの方法を探るという視点がおもしろい」とコメントされていますが、なかなかいい着眼点だと思います。 トマトの果実は表皮と果肉で構成されています。加熱すると果肉部分はペクチナーゼ、ヘミセルラーゼ

アミューズ用のミニタルトの作り方

アミューズの話の続きです。 一口のタルトも最近、すごく見かけるメニューです。タルト生地にはバターに粉を混ぜたパートブリゼを使うのがふつうですが、ミニサイズで作る場合、口に入れた時に生地の主張が強くなりすぎ、バランスをとるのがやや難しいところ。そこでバターを入れない配合のタルト生地がよく使われます。 この生地の長所は原価の高いバターが入らないので「コストが安い」こと。作り方はかんたんですべての材料をボウルで混ぜ合わせます。生地を寝かせる必要があるレシピです。 こねすぎると

チーズのサンドイッチ

21世紀料理教室です。2000年代に入ってから料理シーンに起きた変化の一つがアミューズブーシュ=先付の多様化。アミューズブーシュはアミューズ=楽しみ、ブーシュ=口という意味で、お腹を満たすためではなく、食欲を目覚めさせるための料理です。ヨーロッパ圏にはもともと食事の前に食前酒をとる習慣があり、そのときにつまむのがアミューズです。ナッツやオリーブ、チーズ風味のシューやポテトチップスといった塩や油が効いた品を少量食べると、食欲も湧くでしょう。日本でも先付といって食事の始まりにお酒