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7.未来ファンタジー_ホロパース2121

#小説   #星々と文字の歴史 全11話

<<< 1.統一された世界

<<< 6.秘密の出会い

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僧侶はふたりをボートに乗せると、ブルーに光る鍾乳洞の川を登っていきました。川のほとりにはふわふわといくつもラベンダー色の光が浮いていました。「地下蛍ですよ。固有種でここにしかいません」と僧侶が説明をしてくれた。幻想的な時間が15分ほど過ぎると、到着した先は暗い岩場になっており、一点から光が漏れていた。

「到着しましたよ。気をつけて登ってくださいね」

ふたりは漏れている光を頼りに、岩を登って外に出ました。そこには見たことのない景色が広がっていました。景色に呆気を取られていると、崖の端に先ほどの僧侶と同じ袈裟を着た人が見えました。
二人は目を合わせ、その人に近づいていきました。

サトリ
「トゥガクさまですか?」

僧侶は応えました。
「はい。こんにちは」

ユラ
「その姿は、仮の姿なのですか?」

トゥガク
「はい。地球でこの姿をしていると、たくさんのことに出会えて楽しいですよ」

サトリ
「トゥガクさまはもう2000年以上、地球にきていらっしゃるんですよね?」

トゥガク
「はい。人類のドラマがつい面白くて見にきてしまいます。私たちでは考えられないような変化が起こるので、目が離せないですし、地球独特の生物もいるので興味がつきません。私たちの星で一瞬で変わることも、地球だと1年、10年、100年とかかるのですが、幾重にも重なる小さな変化一つひとつを辿ることはとても楽しいですね」

サトリ
「さっき私たちのモンドーの僧侶にすこしトゥガクさまの話を聞きました」
そしてサトリとユラは聞いたことを話しました。

トゥガク
「実はですね、私たちスター連合のせいでもあるんです。地球が汚れた理由は」

二人は驚き、トゥガクの言葉を待った。

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「ここには『うな重』があるんです。ここのバイオスフィアで育てたんです。久しぶりに人に直接会うので、お話しましょう。夕方にはマナウスに戻れます。うなぎはお二人は平気ですか?」

「はい」と二人は答えた。

トゥガク
「この海洋洞窟、実はマリアナ海溝に通じていましてね。一時期ヒヤリとしたことがあったんですよ。私の主食というか大好物は、うなぎの蒲焼なんです。お二人の故郷、日本の江戸時代に食べてからもう病みつきで!それが2000年代、当時、経済が盛り上がっていた中国でも人気になり、乱獲が始まってしまいました。すると天然もの急速に減りが手に入らなくなったので、ここで生命圏を作り養殖することにしました。もちろん私用です。ところがある時一匹のうなぎが逃げ出して、そのままマリアナ海溝まで流されてしまったんです。途中で適応できずに亡くなってしまったかなと、偵察に向かわせましたらちょうど調査にきていた人間にそのうなぎが見つかりそうになりましてね。明らかに南米の海水と食べ物で育っているので、慌ててインビジブルモードで回収しました。私たちのせいで生態系を壊したり、人間の発見に影響を与えてはいけないルールなので」

サトリ
「シロもやらかすことはあるのですね」

ユラ
「おいサトリ」

トゥガクは優しく微笑みました。

そしてなぜか、この絶景とうなぎを食べながら、二人は物語を聞くことになったのです。

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トゥガク
「私たちスター連合の星々は、それぞれ違う要素を持っているんです。哲学、競走、尊重、自由、ビジョンなど。そのなかで知識の星アルクが『文字』を地中海に落としてしまったのです。トルコとエジプトの間です。それをシュメールの民が拾ったのは、紀元前5550年頃。そこからシュメールの人々は文字と言葉の研究を始めました。うちうちに研究が始まり、それがやがて『知恵』への変換と蓄積がされていき、一族の極秘情報としてそれらを隠していました。しかしそのことを絶対的に秘密にしておく方法やシステムは当時ありません。人の口に戸は立てられない。シュメールの民を訪れる近隣の文明や、外に出る旅人から少しずつその『知恵』は漏れていったのです。そして研究が漏れるとなにが起こったか。支配と抗争です。暴力は暴力で報復がされますが、互いの自滅も引き起こします。そこで『文字』により約束を交わし、ルールを作ったのですが、人間の悪が知に反応を示すと言葉で人を奴隷にする歴史が始まってしまった。人類は感情や欲望のコントロールを覚える前に、文字を覚えてしまったのです。

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緊急で執り行われたスター連盟の摂理層はそれを良しとしました。それも人間、ごく自然にあり得ること、と。そして私たちは人類に文字を託し、その進化を見守ることにしました。

それ以前の人類はシリウスとの混血が主でした。テレパシー能力があり、人と人はもちろん、私たち地球外生命ともコミュニケーションをしていました。通信の中継塔としてエジプトはピラミッド、メキシコはテオティワカン、イースター島はモアイ像という基地局です。地球には大気圏があったのでそれを守りながら地球外と交流するために作りました。高い場所は気象の変化を見渡すことができ、そこにすむ住民と私たちが会える目印にもなりました。あの頃はとても楽しかったようで、多くの星々の民が自由に地球に遊びにきていました。そんな人類を私たちは「ホロパース」と呼んでいました。その頃の人類はその小さな体に、美しい光を宿す生命体であるところや、星の時間を記録している姿は、小さなバッグに星を集めているようだということで愛されていました。

ただ文字が人類史に現れてから、テレパシー能力がどんどん衰えていき、私たちとコミュニケーションができる地球人は減っていきました。そしてシリウスとのハーフもどんどん血が薄れていきました。文字の力で言葉の輪郭がはっきりとし始めると地球人の存在自体、コントラストが強くなっていき、闇が異常なほど濃くなっていきました。

>>>7.宇宙の功罪

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