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6.未来ファンタジー_ホロパース2121

#短編小説   #秘密の出会い 全11話

<<< 1.統一された世界

<<< 5.文明と幸福

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サトリが目を覚ますと、目の前にはオレンジと赤に光る壁が広がっていた。

「マグマ?死んだのか?」とサトリが考えていると、となりのベッドで寝ているユラが目に入った。

「ユラ!ユラ!」サトリが声をかけると、ユラがしかめ顔で片目をゆっくりうっすらと開けた。

「うるさい」

「なんだようるさいって!」サトリは涙を流して、ユラを抱きしめた。

「気持ち悪い」ユラは笑いながら言った。

「起きましたね。二人とも健康に問題はありません。大丈夫ですよ」

声をかけたのは、モンドーで会った僧侶のシロだった。

サトリ
「僧侶!僕たちは生きているんですか?ここはどこですか?」

僧侶
「ここはですね、いわゆるシロの秘密基地です。世界で一番大きい海洋洞窟に少しだけ手を加えて作りました。イグアスはサーバーを冷やすためにちょうど良かったんですよ、人も内部に近づけませんし、淡水と海水が混ざり合うエリアは生物研究もしやすいです。120年前のテクノロジーだと、どうしても惑星内部でまとまって仕事をした方が効率が良いんですね。それにコアの核融合は別の星よりいつでも綺麗に見えるので、地球観光にくる他星のために残しています。太陽はそれだけなのでですね、太陽系でダントツの観光スポットは地球です」

サトリ
「じゃあここは、マントル?」

僧侶
「いえ、そこまで地球中心部に行きすぎるとあなた方の体が耐えられませんので、ここはマグマ溜まりです。ここはガラパゴス、イザベラ島活火山の下です。イグアスの滝はここへの入り口の一つですね」。

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ユラも起き上がり、二人は僧侶が用意してくれた緑茶を飲みながらその話を聞いていた。

僧侶
「あなた方ホモ・サピエンスが人類史のなかで、火山の爆破により放射能がその脳を進化させたことはご存知かと思います。その影響を知った私たちが、あなた方の記憶を消去するという方法を地球上で開発したのはそこからのヒントでもあります。よければ施設を見学していきませんか?」

意外な申し出に二人は二つ返事で僧侶についていった。

僧侶
「あなた方はシロの存在について考えたことはありますか?」

サトリ
「マナウスに来る前、リングについてすこし調べました。リングを持たない部族がいるようなので、どうやって生きているんだろうと。そこでリングの情報がシロに集まり、世界のインフラを管理しているということは分かりました」

ユラ
「でも非公開ですよね。シロの運営を誰がしているのか、どこでしているのか。コスモルール地球憲章のところは読みましたが、そのルールがなぜ作られたかは、書いているようで書いていない」

僧侶
「さすが成績優秀なお二人ですね。実は『シロ』という特定の機関や集団、人物は存在していないのですよ。なぜなら、人の人生に『正解』が存在していないからです。それは他の星が手放した『闇』が地球に入り込んでしまったからなんですね」

サトリ
「どういうことですか?」

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僧侶
「答えを教えても良いのですが…シロができるまでの歴史をすこし話しますね。まずシロを作るきっかけになったのは、プレアデス星団にお住まいの教養学者トゥガクさまです。地球でいうところの、脳科学者と哲学者と社会心理学者を合わせたようなアクションをしており、地球の美しい自然を愛していました。初めて地球を訪れたのは、アレキサンダー大王のあたり、紀元前350年頃ですね。『地球で戦いのカリスマがうまれた』ということで他の星々の方々と観光に来ていました。そのときヨーロッパの山々、花、フルーツや季節に魅了され、地球を訪れては人が入っていけないような山や海を探検なさり、宇宙個展に写真を出品されていました。その中でもお気に入りの文化は『豆』でしたね。世界中あらゆるところにあって、人々の生活に密接に結びついているのに、発酵食品としての文献がないそうなんですよ。その不思議に取り憑かれたようで、以来地球に滞在する時間の方が長くなっていました。

それが1900年、第一次世界大戦直前の頃。急速に地球が汚れてきていると危惧なされていました。産業革命のあたり1800年はそこまでではないようだったようなのですが、100年かけて徐々に青がくすんでいくことを気に病まれていました。

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そして1960年頃トゥガクさまは地球人に混じり、人間の脳で起こる電気信号の研究をしていました。そこで一人のときに、記憶を消したりする方法ですとか、うつ病を48時間で回復させる方法を見つけたのです。さらには『特定の感情を収集して、それを動力にできる』という発見もしました。これはもしかしたら人類が自分たちで成しえなかった社会の形が作れるかもしれない、と急きょ星に戻りさっそくプレアデスの摂理層に話しました。摂理層とは、星々に宿るパワーの根源を司る民の階層です。パワーはパワーという存在なので、その意味や構造を星の民に伝える役割、僧侶みたいなモノですね。そして友好関係にあるスター連盟のヴェガ、オリオン、リラ、アンドロメダの摂理層たちともコミュニケーションをとりましした。

『地球を青くする方法を見つけたかもしれない。けれど人類にはあまりにも突然の変化を加えることになる。それは宇宙摂理に反しないか』。本来、他星にいる生命体の成長に他星は変化を加えてはならない、というコスモルールがありました。しかし意外にも、他の星々の摂理層はそれを歓迎し、摂理としての認可が降りました。そして当時地球に生まれたスター連盟の子どもたちの能力を開く手伝いからを始め、地球に変化を加えようとしたのです。

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1990年頃ようやく能力が開いた人々が経済活動を始めたのですが、どうやらコスモルールは人類や社会にとってはまだまだ驚くべきもののようで、ニュースでは『強欲、支配的、反逆、国家を脅かすアダルトチルドレン』などのプロパガンダニュースが世界中に流され、なかなか浸透していきませんでした。

そうこうしているうちに2020年に地球で覇権を握る愚闇軍、グアンとよんでいますが、私たちスター連盟の活動に抵抗をしてきました。当時の人類もニュースで観ていましたよ。一見すると分からないのですが例えば大統領選挙、特別自治区の暴動と制圧、国家間の経済制裁や暗殺など。地球レベルのテクノロジーや精神スピードと圧倒的な人口では、なかなか思うように対抗できませんでした。そして運命の2022年。ユーラシア中心部において第三次世界大戦へ臨戦態勢を検知したとき、スター連盟はグアンを統治下に置かざるを得ないと判断し、地球上に配備していたシロを起動させグアンを制圧しました」。

二人があっけに取られているのも構わず、僧侶はまた驚くべき提案をしました。

あなた方は運の持ち主ですね。いまトゥガクさまが地球に滞在しています。会われていきますか?」

>>>7.星々と文字のれきし

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