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小説「対抗運動」第3章5 奇妙な戦争

舞ちゃん「おいさん、戦争は終ったん?」

おいさん「どうなったら終わりじゃろうかね。大量破壊兵器を廃棄する事が目的で強引に始めたんやったが、肝心の兵器が見つからんけん、途中でフセイン政権打倒へ換えたみたいやからね。国連の合意なしで始めたんやから、目的もアメリカとイギリス政府だけで決めるんじゃろうね。」

舞ちゃん「奇妙な戦争やね。始まる前に国連で議論しよった時も、必ずアメリカは始めるやろと世界中の人が何となく解っとったしね。経済も得体がしれんけど、この戦争も不気味やね。」

おいさん「フセイン政権の打倒が目的なら一応目的は達成されたんじゃろうが、さっさと引き上げる気配はないね。ラムズフェルドはシリアを非難し始めたね。フセイン政権の指導部のうち何人かの逃亡を手助けして保護までしとる、とか、警告を再三無視して軍事物資をイラクへ送ったとか記者会見で言うとるね。」

舞ちゃん「ほかの国にも攻め込むんじゃろうか?」

おいさん「舞ちゃん、経済が奇妙なんは、どんどん拡大することを止められんからなんや。それは投資する人や経営者の意志を超えとるんじゃ。止めようとする経営者は引きずり降ろされるだけじゃ。企業は、どんどん拡大する取引の結果、債務もどんどん拡大していく。じゃから、その債務を返済するためにまた事業を拡大せないかんのじゃ。出来んとこは不渡り出して倒産するだけじゃ。ほじゃけん、それがどんなに無駄で有害なことになるか、ある程度予想がついとっても止まらんのじゃ。おいさんは、この戦争は、奇妙な経済そのものに見えるんじゃが、どうじゃろか。」

舞ちゃん「・・・・・」

おいさん「舞ちゃん、おいさんらの対抗運動はね、この奇妙な経済へ対抗するために始めたんじゃが・・・・。戦争や環境破壊を生み出す元やと見えたからね。けど、どうもこの戦争は、奇妙な経済のむき出しの姿やと思えてきたんや。第2次世界大戦のような大戦争やないけどね、イラク相手にしては不釣合いに大掛かりすぎる。世界中のどこもアメリカ政府の決定を止められん。世界中が引きずられていきよるのにね。企業と同じで、最初は社長が始めたんじゃが・・・・。もうブッシュ大統領の意志を超えとるんじゃないかね。国防長官のラムズフェルドの方が主役に見えるしね。まだ攻撃を開始して3週間余りじゃけど、その前の準備段階と合わせて、一体どれくらいのお金を使こうたんじゃろう。どんどんアメリカの債務は拡大しとるよ。」

舞ちゃん「なんや恐ろしいね。」

おいさん「舞ちゃん、むやみに恐ろしがっとるだけじゃ何にもならんよ。反戦デモと一緒で、こんな不気味なアメリカの自己増殖運動には必ず対抗運動も広がっていくけんね、注意して観察しもって、自分の出来ることをやっていくだけじゃ。ところで、情報公開おにぎり、の話しは皆聞いてくれた?」

舞ちゃん「聞いてくれたよ。今年はトラストで自分とこで食べる分だけ送ってもらうんやなしに、いろんなイベントや集会で使う分も契約したらええやないかという意見が出てきたよ。あと、茨城のアイガモ水田トラストの平野さんのホームページで紹介されとったテンペを使こうてみようという意見も出たよ。広島で開発しとるけん、近いしね。なかなか四国では、納豆はメジャーになれんけんね。同じ大豆を発酵させる食品でも、昔から東南アジアで食べられてきたテンペの方が受け入れられそうや。あっさりしとって、ワインのツマミにもええんやて。」

続く
執筆:飛彈ゴロウ、2003年4月11日

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