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社長、今からハローワークじゃ遅いですよ!

ごぶさたしておりました高卒就職問題研究のtransactorlabです。
高卒就職問題解決を求めて研究と発信を続けております。

7月1日、今年度の高卒求人公開の始まりとともに、高卒就職戦線が開始となりました。全国の公開求人の集計では、求人件数約12万5千件、求人数約26万7千人。件数は昨年7月末時点の数字を既に超えています。賃金は昨年から全国平均で7500円程度上昇したようです。人手不足、人材確保競争が一層激しくなっていることがうかがわれます。

就職希望高校生の数はざっくり言って10万人弱ですので求人倍率は7月1日時点で既に2.67倍。9月には3倍を超えるでしょう。

そんな状況を踏まえ、今回は高校の進路指導室にいて思うことと、ちょっとした提案を書きたいと思います。高校生を採りたい会社の社長さんがたや採用担当の皆さんに読んでいただければ幸いです。

遅くとも7月10日までに公開されるか、学校に届いていない求人票は生徒の目にさえ触れない

これはホントです。理由は大方の高校生の就職指導スケジュールがそうなっているからです。

例として私の学校の日程を紹介します。

7月1日求人票公開  先生たちのリスト作成作業開始
7月2日ごろ     生徒閲覧開始  先生たちは日々追加作業
7月16日(連休前金曜日の場合もあり) 応募前職場見学の申込み締切
7月20日まで     応募前職場見学のアポ取り、調整
7月21日       終業式、見学事前指導
7月22日から     夏休み 見学開始
8月第1週      三者面談、志願先決定、応募準備開始
9月4日       応募書類発送
       

9月4日の応募書類発送に間に合わせるためにこういうスケジュールにせざるを得ないのです。志願先決定、応募書類作成の取り掛かりはお盆休み前でないといけませんし、また、その前に応募前職場見学、アポ取りや調整には1週間は必要です。ということは、生徒が求人票をじっくり見ていられる期間というのは実際には7月3日からの1週間ぐらいしかなくなってしまう。つまり、その後に公開されたり、学校に届けたりしても、実はもう遅いのです。そのころには生徒たちの志願先候補は決まってしまっています。

高卒就職の求人倍率が平成末ごろに3倍を超え、以来高止まりしています。そうなってからの初回内定率は95%以上。よほどのことがない限り初回で内定をもらえています。その内定先とは、7月末から8月初旬に見学したいくつかの企業のうちのひとつだということは言うまでもありません。

7月10日ごろまでに学校に届いていない求人票に応募がある可能性は極めて低いのです。

高卒採用は2年計画で 遅く出してもムダではありません

7月1日公開開始に間に合わせるには6月中頃までにハローワークに求人登録をしなければなりません。先生、そんなこと言ったってムリだよ、と聞こえてくるようです。6月には決算とか株主総会とかありますよね。初任給等を含めた採用計画案もその後、ハローワークに行けるのは早くても6月末か7月初め、といった会社さんも多いだろうと思います。

しかしですね、今の時代、そのやりかたでは当年度の3年生は採れません。ムリです。上記のスケジュールが示すように、7月頭に学校に届いていない求人票は、3年生の目に触れることがほとんどないからです。

しかし、全く無駄かというとそうではありません。なぜかと言うと、今の2年生や1年生が見るからです。

1年生や2年生も今年の3年生用の求人票を見る

就職希望の生徒が多くいる高校ではキャリア教育の一環として、2年生や、早いところでは1年生のうちから求人票を見させます。世の中にはどんな職業があって、どんな会社があって、給料や勤務態形や休日数はどんなのがあるのか・・・そういった職業観を育てる材料として実際の求人票を見させます。
だいたいの高校では2学期後半、修学旅行が終わったころに就職指導を本格的にスタートします。そのタイミングで学校に届いている求人票リストを2年生に与えて、3年に進級する前におおまかな候補を絞っておくように指導します。
ということは、10月中にハローワークに出さないといけないですね。まず、何はともあれ、適切な時期に我々教員と生徒の目に触れることが重要だと思います。

会社の事情もおありでしょうけども、今の時代、採用活動にあたっては、このような学校側の事情をご理解いただく必要があると思います。

今季の業績で来年度の採用計画を決める・・・の方式は、おそらく現在の高卒就職市場では機能しないので高卒の採用計画は2年計画がよいと思います。

次のエピソードを読んでくださればご理解いただけるでしょう。

こういうのはホント困るんですよ

実際にあった話です。

2年生が就職先について考え始めた11月末、その年の3年生用の求人票リストを見ていたある男子生徒が
「先生、オレ、この会社に就職したいっす」
と言ってきました。
どんな会社かは伏せますが、なるほど、彼にぴったり、というより、そこしかないよなといった会社。
そして彼は、その会社に貢献できる人間となるべく一生懸命勉強し、危険物やフォークリフト、小型ブルドーザー、玉掛け等、多くの資格取得にも励みました。
年度が明けて5月、私はその会社の採用担当者に「御社を希望している生徒がいるので、視察させて下さい」と連絡をし、実際に足を運びました。大歓迎もしてくれましたし、なるほど、大きくはないけども雰囲気のいい会社。これは彼に関してはもうOKだなと安心しておりました。

しかし、7月1日。その会社の求人票が出ていない。2日。まだ出ない。4日になってもまだ出ていないし、郵送も来ていない。さすがに不安になり、直接電話したところ、こんな返答。

「毎年なんですけど、6月は出荷続き一杯いっぱいなんですよ。これからやっと決算ですわ。募集はたぶんするでしょうけど、ハローワークに行けるのは早くて8月ですかねえ。」

この会社さんは高卒就職の試験解禁日が9月16日だから、ハローワークへの求人登録は8月中でよかろうと考えていたようでした。

彼本人と保護者に対し、この話と共に「たぶん募集する」は、しないこともあり得るということを伝えたところ、2番目の候補に考えていた企業を受けたいとの申し出がありました。

結果、彼は9月16日、その2番目の会社を受験、当日中に内定をもらって帰ってきました。その日のうちに社長さんから直に電話をもらいました。
「見学に来てくれたときに採用を決めていました。こんなにたくさんの資格を取ってる子を見たことがなかったし、何より人物が素晴らしい。こんないい子を送り出してくれて本当にありがとうございました。」

ちょっと心が痛みました。

その彼は4年経った今も、その2番目の会社でバリバリ活躍していますが・・・。

1番目の会社さんの残念なところは、一番大事な時期に求人票が出ない点です。高卒求人票は毎年6月25日前後にリセット、つまり消えます。その時点で新年度用の求人票をハローワークに届け出ていなければ、その年の3年生が応募する可能性はほぼゼロになる。これをご存知なかったようです。

「社長、今すぐハローワークに行くか、必ず求人するって念書を書いて下さい」と直談判すればよかったかなと、少し後悔しています。

ま、なかなか無いケースですけどね。

提案 ハローワークの求人票受付開始を一か月早めたらどうでしょう?

高卒求人の受付開始は6月1日と決まっていますが、これを1カ月早めたらよいのではないか、というのが今回の提案です。

高校生の就職活動の期間は非常にタイトです。インターハイ等、様々な事情により7月より前倒しすることはちょっと考えられません。現行の6月1日求人受付開始、7月1日公開開始のルールは決算期等、企業側の事情と高校の事情、双方を鑑みて設定されたものと推察できますが、かなり時代に合わなくなってきているのではないでしょうか。
6月後半の駆け込み求人登録が多く、ハローワーク職員の方々の負担も相当のものになっていると聞きます。
高卒採用は2年スパンでやらないとうまくいかない時代になってきていますので、それを考えれば、6月1日よりも早くしてもよいのではないでしょうか。

高校側も、6月とか7月にならないと求人するかどうかはっきりしない会社には魅力は感じないですよ。


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