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コロナカノナカノアレコレ


あけましておめでとうございます。
穏やかで健やかな2023年になりますようにお祈り申し上げます。

 
グレゴリオ暦がBCとADを区切るように、あるいは一般的にはそれに代えてBCEとCEを用いるように、コロナに関してもbefore / afterに近い感覚があります。ただし、そのbeforeはコロナ禍が始まる前、afterは過ぎ去った後ではなく、コロナ禍の始まり以降を指しているのではないでしょうか。その座標軸に緩くwithが現在地点として存在しているのが昨今で、何を語るにもコロナ禍が基準になりがちです。「コロナ禍の中」という表現もよく使われています。音声になると「コロナカノナカ」。まだ少し違和感があります。今回はコロナ禍の中のあれこれについてです。
 
Cinemas
映画館に行かなくなったのは、映画を観た後の時間も含めて楽しんでいたからなのですが、友人と過ごすその時間がいかに大切だったかに気づきました。他の食事や外出、旅行は感染対策に気をつけながら復活して久しい今でも、その友人と過ごす時間だけは解き放たれた状態でできるまでとっておきたくて。その反動か自宅で映画をひとりで観る機会が以前にも増して多くなりました。『モーリタニアン 黒塗りの記録』『ファーザー』『アトランティスのこころ』『ブレイン・ゲーム』『ゴーン・ガール』『ホテル・アルテミス』『八日目の蝉』『ザ・ファブル』『ドライブ・マイ・カー』などなど。大好物で高頻度のWes Anderson監督作品とHarvey Keitel出演作品をはずしています。この中にSir. Anthony Hopkins作品が2本ありますが、『ファーザー』の感動はたとえようがないほど深く、せつないものでした。
 
Books
コロナ以降、朝型生活がエスカレートした結果、朝読書ができなくなりました。出版翻訳の仕事では(私は)画面に原文と訳文を立ち上げ、辞書引きからリサーチまで右手にマジックマウス、時々左手でトラックパッド、極力ショートカットで行います。文字入力は普通にキーボードですが、指の調子が悪いときには音声入力も使います(そばに人がいないとき限定)。いずれにしても目は常にディスプレイを見続けるわけです。酷使といっても過言ではない。それなのにやめられないのが、夜、ベッドに入ってからのiPhone×Kindleでの読書です。仕事で目が疲れているので、おそろしく読書スピードが落ちてしまい、遅々として進まないのですが、それでも至福の時間。現在読んでいるのは『60歳からはやりたい放題』(和田秀樹 著 扶桑社 刊)「好きなことだけやればいい!」というキャッチコピーに見事につかまりました。
 
Art exhibitions
コロナ禍以降、最もつらかったのが、楽しみにしていた美術展の予定が変わってしまったことでした。興味のある美術展に関しては「そのうち」と思わずに「行く」と決めて行動しています。「木村伊兵衛と画家たちの見たパリ 色とりどり」(目黒区美術館)、「アーツ・アンド・クラフツとデザイン ウィリアム・モリスからフランク・ロイド・ライトまで」(府中市美術館)、『鉄道と美術の150年』(東京ステーションギャラリー)など。
東京ステーションギャラリーは帰省先からの新幹線の車中でチケットを求めて寄ったこともあり、リセットのいい時間にもなりました。
 
Music
コロナ禍が始まった頃と最近ではライブやコンサートの緊張感が全然違います。同時配信なども試みたのですが、臨場感に勝るものはなく参戦。疲れるからと省エネで軽い拍手しかしなかったのに、いざ拍手しかできないとなると手がジンジンするまで拍手したり、一緒に歌えないけど動くのはありなんだ、とか、新ルールや新発見に少しずつ慣れてきた感じだったのですが、昨年、FIFAワールドカップの客席の自由な様子を見たときには、これまでのがまんにむなしさを感じたのも事実……。
 
こうして考えるといろいろなことで「なんとなく」が減った気がします。どちらでもいいことや、案外がまんというほどでもないことが淘汰されて、その分、大切にしたいこと、譲れないこと、優先順位などが明確になったように思います。この数年の間に存在して当然と思っていたものがなくなる寂しい思いを少なからず味わいました。さらに、「会いたい人には会えるときに会わなくては」と思っていても叶わなかったケースも多々ありました。コロナさえなければ開催できた集まりが実現できずにいるうちに、恩師と友人を亡くしました。永遠というのは存在しないとわかっていても、やはり諦めきれない面もあります。
 
コロナ禍の中のあれこれを綴ってきましたが、最後にカーネギーメロン大学ランディ・パウシュ(終身)教授の「最後の授業」のリンクを。
ユーモアにあふれ、引きこまれます。
https://www.youtube.com/watch?v=nrFMRuB2lbA
 
                                 Nobuko Yazawa


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