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【フィンランド研修レポート|サウナ編①】Sompa Saunaに見る自律型コミュニティの形

こんにちは、トレイルヘッズの永島です。

2022年9月、実に3年ぶりに社員一同でフィンランドを訪れました。

フィンランドは、実はトレイルヘッズのカルチャーやサービスに大きな影響を与えている国です。メンバーはそれぞれテーマを持って各地を訪れ、新たな発見を持ち帰りました。その中には我々が掲げる「働く、暮らす、遊ぶ」のあり方を見つめ直すきっかけになるものも多くありました。

これからフィンランド編Note記事として、我々がフィンランドで何を見て、何を学んできたのか、皆様に少しでもおすそ分けできればと思います。

第1回目の今回は、"フィンランドにおける、サウナと人との繋がり”という視点からの記事です。

Sompa Saunaに見る自律型コミュニティの形

東京都檜原村で、自ら火をおこすサウナ「HINOKO SAUNA」を運営するトレイルヘッズのメンバーにとって、やはりローカルサウナを体験せずには帰れない!
旅程を縫ってメンバー一同で向かったのが、ヘルシンキ市内の少し外れにあるSompa Sauna(ソンパサウナ)。

Sompa Saunaの入口には、運営費のドネーション用にQRコードが掲示されている。

Sompa Saunaとは

ヘルシンキ市内の海沿いにたたずむSompa Saunaは完全民間運営の公共サウナ。運営は完全無人で、ドネーションこそできるものの基本的に利用料金もかからない。現在は3棟のサウナ小屋でできていて、更衣室はおろかロッカーも簡易的なものしかない。そんなアウトロー感漂うこのサウナは市民の自主的な取り組みによって設立・運営されています。


左手の水色のサウナ棟は120度を超える上級者向け。奥の赤いサウナ棟は100度前後で、常に人で賑わう。

市民の手による設立

公式サイト(https://www.sompasauna.fi/story/)にも詳しい記載があるのですが、Sompa Saunaには面白い設立の経緯があるらしい。それはある数名の有志が廃棄されたストーブを見つけたのを発端に、2011年に市民の手によって自主的に作られたというもの。

当初は違法建築だったため、取り壊されたりもし、その他にもさまざまな困難から移設や再建築を繰り返したらしいのだとか。でもその度に市民の努力で復活を遂げ、今もなお育てられているという。まさにフィンランド市民活動の、不屈の精神が垣間見えるというところ!

自発的な利用準備

3棟あるサウナは、すべて薪を利用したストーブ。なのでもちろん、誰かが火を入れて温めなければ使えない。

じゃあ、サウナの温まりを待つ間、みんな何をして待っているんだろう?面白いことに、フィンランド人にとってはサウナは自然動作、とでも言わんばかりに、各自薪割りや水汲み、時には煙突の掃除などを行って、皆お互いのためにせっせと準備に勤しむんです。

例えば薪は基本的にボランティアで持ち込まれた、釘付きの廃材や端材などを用いているので、自分達で鋸を使って切ったり、斧で割って小さくしないと使えない。

各自薪や端材を割ってストーブに入れる。

水場も敷地内にはないので、わざわざ歩いて5分ほどのところにある、工場の浄水を取りに行く。(これはお金を払って利用させてもらっているらしい。)
なんのための水かって?もちろんロウリュ用の水!
ポリタンクに大量に詰めて、各サウナに設置するんです。

ポリタンクに水を汲み、サウナ小屋まで運ぶ。

サウナ内で求められる自主性

薪ストーブのサウナは温まったら終わり、ってわけじゃないですよね。冷める前に定期的に薪を入れないといけない。だから、誰かが定期的に小屋の外に出てから薪をとってきて、高温のストーブの中に投げ入れる必要があります。

僕もローカルの厳しいおばさんに、薪運びを5往復くらいさせられるはめに。しかもストーブがとにかく暑い。とても近づけないので、薪をくべるというより投げ入れる感覚。裸で極寒の外と灼熱のストーブを往復させられているうちに、それまでは"誰かが温めてくれたサウナ"、という感覚だったのが、徐々に"自分ごとのサウナ"になっていく感覚は不思議だったなあ。

あとはロウリュをたくさん行うのがフィンランド人のお決まり。ストーブ横に座った人はロウリュをし続ける役割を与えられる。水が少なくなったらまた誰かが外から水をとってくる。

誰が仕切るともなく、みんなが当たり前のように薪や水の補充をおこっているんだから驚きですね。

Sompa Saunaで一番暑いサウナ小屋の中にて。

サウナのほかには?

サウナの外にはよくチューニングされたギターやピアノが。サウナから上がった人たちが演奏する光景をみるのも珍しくないです。誰かが自然に楽器を弾き始め、サウナに入る人たちは風に当たりながら聴いたり、かたやそんなに注意を向けなかったり。ここには色々なことを自主的に行う文化がありますが、逆に何かを強制する文化もそこまでありません。

サウナが並ぶ広場に、楽器の置かれた小屋がたたずむ。

そんな中ある日、僕は水着をSompa Saunaに忘れて帰ってしまいました。しかし翌日戻ってみると、忘れ物ボックスにちゃんと入っていたんです。みんながサウナに入り終わった後、誰かが忘れ物やゴミの収集も自主的に行っているんですね。


忘れ物回収ボックスも市民の自作。
ゴミ箱もポップな作りになっている。

自主的な行動が繋ぐ人の輪

Sompa Saunaは、間違いなく変わったサウナだと思います。その設立の経緯から、利用者の姿勢に至るまで、市民の自主的な関わりなくしては成り立たないのだから。

そしてここに集う人々は、一緒にサウナを温め、薪を用意し、薪をくべ、ロウリュをする。時には一緒にギターを囲み、使い終わったら綺麗にする。この一連の共同作業を通じて、お互いに繋がるんです。その様子をみていると、Sompa Saunaは単なる公共サウナではなく、コミュニティの中心になっているなと、僕は感じました。

自主的にメンテナンスする人の姿勢をみて、自分も道具を手にしてメンテナンスをする。それは自分のためであり、一緒にサウナに入る誰かのため。気になるところがあったら自分で手入れをし、周囲の人に使い方を促す。そしてその上で自分達が楽しむための、楽器などのツールをお互い大事に使いあっています。

こういう共助的なシステムが目に見える形になっているSompa Saunaは、運営・利用者の垣根を超えた施設運営としてはとても勉強になる事例でした。そして何より完全無人・民間運営かつ無料という性質を持ちながらも、大きな問題も起きることなく、市民に愛されながら使われています。

みなさんもヘルシンキにいったら是非Sompa Saunaへ。そして、是非地元の人と一緒に薪を割って、サウナを温めて、話してみて、バルト海に浸かってみてください。一瞬でフィンランドのことが大好きになりますよ!


Writing: Keita Nagashima (TRAIL HEADS)
Photo:TRAIL HEADS



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