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しんどい人を減らすためのヒントは、オランダにあるのでは?:『世界一幸せな子どもに親がしていること』

職場(もう最終出勤日終わったから元職場?)で入手している雑誌の中で、「オランダの子供は、喧嘩をしたときに相手と話し合う方法について学ぶ」と読み、そこからオランダの教育のことが気になるようになりました。

で、試しに本でも読もうと思って、オランダで子育てするアメリカ人・イギリス人の女性による本『世界一幸せな子どもに親がしていること』を読んだところ、あらゆる面でとても感銘を受けたので(しんどい人の一人として…!)、今日はその内容を一部ご紹介したいと思います。

■競争にさらされない子どもたち

オランダでは大学入学時に、その大学に適したレベルの一般的な卒業証書さえあれば、それでじゅうぶんで、特別優秀な成績は必要とされない。

オランダの小学生は、卒業すると以下のいずれかに進むとのこと。
(図は、本の内容からけそが作成。説明も、本の内容の要約)

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けそが素敵だなと思ったのは、以下の2点。

①「VMBO(職業的中等教育)」に属することを社会的な不名誉だという風潮がないこと。

日本でも、大学の議論の中でL型/G型とかの話が出てきていたけど、大事なのはここだと思う。あくまで各自が自分に合うものを選んでいるのであって、そこで人間的に優れてるとかそうでないとか言えるわけがない、ということ。

いい大学を出てるから自分は優れた人間だ、と考えるような「選民思想」と紐付いてるのは、「出世欲」以外に「絶対的な自信がないこと」じゃないかな?と私は思う。比べないと、自分のことをいいと思えない、価値があると思えないからじゃないかな、と。本によれば、オランダの教育では自信を持つためのコーチングのプログラムもあったりするらしいのだけど、自尊心を健全に満たすことと、人を見下さないことは、セットなんじゃなかろうか。

②入学後も子どもの能力とやる気によって、ほかのグループへ移籍することが可能だということ。

本の中では「失敗の不安」に苛まれている子どもを支援するための訓練プログラムを行っていることについても紹介されているのだけど、「やり直せる」環境があるのって、すごくいいなと思う。

■柔軟で、本質を大切にする学校

フロリスは嫌なことがあると、すぐに本の世界に入り込んでしまう。
だから授業を最後まで聞いていたことがなかった。
しかし、驚いたことに、先生はそんなフロリスにそのまま本を読ませていた。
10代の子どもは朝、なかなか起きず、夜中ずっと起きているので親をイライラさせるかもしれないが、思春期の脳においてメラトニンの放出が遅れているので、10代の多くが夜に早く寝るのは難しいそうだ。
〔中略〕
オランダでは10代の子どもにはもっと睡眠が必要で、彼らの脳は午後の方がよく働くという事実に同意し、中学校の開始時間を午後からにするという動きもある。

ほんとうは論理で説明できないことを「みんながそうしてるから合わせろ」「学校のルールだから合わせろ」と子供に強いるのは、おかしいと思うんですよね…(中学生のとき、夏服の上にカーディガンを着ることがなぜか禁止されていて、冬服の上ならいいとか、ジャージなら羽織ってもいいとか、まるで建設的なルールじゃなくて全く謎だったのを思い出した)。

それを守らせることって、「大人がコントロールしやすい、口ごたえしない子供づくり」でしかないじゃん…。だから上記2つの例を読んだとき、とってもいいなと思った。

他にも、研究でほとんど効果がないことがわかったことから、オランダではほとんどの小学校で宿題が課されなかったりするらしい。

■親も幸せな国

オランダの働きやすさの話(※)にも感銘を受けたのだけど、私が何よりすごいなあと思ったのは、産後のサポート。

オランダでは、出産後に母親をできるだけ健康な状態に戻すことを国益と考えているようで、家庭の収入に関係なく「kraamverzorgster(クラームゾルフ)」と呼ばれる産褥看護師が、赤ちゃんが生まれてからの8~10日間(医療的サポートが必要なときにはそれ以上)産後ケアとサポートのため、すべての家庭に派遣される。
「長男誕生のときに来てくれた産褥看護師は、やり方を私に見せながら赤ちゃんのお世話短期集中講義をしてくれたの。
彼女はそのうえ、買い物、料理、掃除もしてくれて、お客様が来たときには、温かい飲み物やクッキーを振舞ってくれた。産後の3週間、フルタイムのお手伝いさんが家にいたようなもので助かったわ」

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(※)本によれば、オランダの平均的な家庭ではだいたい年3回くらい休暇をとり、1回の休暇で3~4週間休むのが普通とのこと!たかのてるこさんの旅の本の中でも、オランダでは週休3日で働いている人も結構多い、という話が出ていました。
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私としては、こんだけ手厚いサポートをつけて、どうやってそれで社会を回しているのかが気になる!

…いや、いうか日本でも、法人税を適切に徴収したら不可能ではないんじゃ…?主に法人税の減税のために、増税分が充てられてるっぽいしな…。
お母さんがきちんと休めれば、結果的に国の医療費負担は安くなると思うし、心身の健康を損なってしまうと労働力も減になっちゃうはずだし。長い目で見たら国のメリットにもなるじゃん!(そこに住んでる人の生きやすさをどんどん犠牲にしてしまう「国」って、そもそもいるか?とも思いつつ…)

(もちろん、サポートを厚くするとしても、心身を病む人が「生じない」ことを前提のシステムではよくない。疲れてしまった人をちゃんとサポートできる体制もつくっておく、ということは大前提として)

■4歳から始める性教育

オランダでは、4~12歳の子どもを対象にした全国セックス教育週間がある。  
最年少の年齢の子どもには、恋することについての授業があり、最年長の子どもには、体の変化や社会的感情的発達、そして安全なセックスについて教えられる。
これらの授業の狙いは次の通りだ。
◎この話題について、子どもに肯定的なイメージを持たせること。そして恋愛関係や性衝動を扱うスキルを成長させること。
◎子どもが思春期に入る前にセックスについての知識をしっかり身につけさせること。そうすれば危険性も減る。
◎物理的な身体の変化や生殖に関してだけではなく、友情、愛、恋愛関係についても子どもに考えさせるよう教えている。
(※太字はけそによるもの)

早くから性教育を始めるのに、私も賛成!
自分の体は自分のもので、知らない人に勝手にどうこうされてはいけないってわかる子どもが増えたら、少しかもしれないけど、性被害が減ると思う。
(小さいときに性的に嫌なことをされた子どもの話を読んでると、なんとなく嫌だという気持ちはあるんだけど何をされているかよくわからなくてそのままにしていた、という子が多くて、読んでいるだけで悲しい…。わかっていても抵抗するのが大変なのに、わからない子供を狙うのってほんとーーにひどい。そもそもそんな目に遭う人はいなくなってほしいんだけど…。)

あと素敵だなと思ったのは、「子どもに肯定的なイメージを持たせる」「恋愛関係や性衝動を扱うスキルを成長させる」という観点!

最近、ハヤカワ五味さんとか、いろんな方がこれからの性教育についての話をされてるけど、性教育の話もいじめの問題と同じで「臭いものに蓋」しても子どもの性欲がなくなるわけじゃない。「ある」ことを前提にして、誰かが傷つくような方法じゃない、正しい知識を早いうちから教えるべきだと思う。

オランダの子どもたちは、恋愛関係についてどんなことを教わっているのか、もっと知りたくなった。

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2020年7月追記:
オランダ在住ライターの倉田直子さんの記事の中で、実際の授業の様子が紹介されています!
やっぱり性の話題が出ると恥ずかしくて笑っちゃう子も多いんだな、でもこんな風に、どの子の意見も優しく真剣に聞いてくれる先生のいる環境で段階を踏んで学ぶことができたら、性は「悪いこと」「こっそりやること」「話題にするのが恥ずかしいこと」という意識から解放されるだろうな…と思いました。

(倉田さん、情報をご提供いただきありがとうございます!)
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■ややオランダにも詳しくなれる!

・DVD、CD、Bluetooth、Wi-Fiなどはオランダ人の発明だということを、この本を読んで初めて知りました!

・オランダが低いとこの国だとは知っていたけれど、湿っている人口過密国で、基本的に曇っている場所、というのは初めて知りました!

→社会的な制度が整ってる国って、気候的には寒いとか常に天気が悪いとか、住みにくそうなところが多い気がする(暖かいとか天気がいいとか、気候がいい国はそれだけで魅力があるから、工夫をしなくても人が住むからなのか?)


教育制度のことなんかがまとめたくて、タイトルの「親がしていること」についてあんまり触れられなかった…すいません…、けど、とにかくおすすめな本です。オランダについての研究は、引き続き進めたいと思います。


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